<入管法改正・水道民営化>ハゲタカに日本を食い尽くさせる安倍内閣-植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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現代版の奴隷貿易制度確立の意味を持つ出入国管理法(入管法)改定案が、11月27日の衆院法務委員会で自公および日本維新の会などの賛成多数により可決した。審議時間も確保されないまま、立憲民主党など野党の反対を押し切り、採決が強行された。与党は、27日夜の衆院本会議で同法案を可決し、参院に送付した。与党は改定法を12月上旬に可決成立させる方針である。

制度の主目的は賃金が低く、国内で求職者が少ない職種の人手不足を解消するため、賃金を低いままに維持し、あるいは、さらに賃金を引き下げて外国人にこれらの仕事を担わせるためのものである。しかし、外国人といえども国内で労働に従事する以上、本来は国内の労働法規制の対象になる。最低賃金は保証されねばならず、人権は尊重され、長時間残業は法律の規制に基づかなければならない。

ところが、これまでの現実においては、外国人労働者の労働が違法状態に置かれる、あるいは、人権が蹂躙されているケースが広範に広がっている。

こうした現実に対する対応策も取らずに、外国人労働力の活用を大幅に拡大させることは、単に大資本の要請に従うものでしかない。国内で求職者が少ない仕事は、きつさ、汚さ、危険さに対して賃金等の処遇が著しく低いからである。これらの仕事の過酷さに見合う処遇が示されれば、求職者は増加し、人手不足が解消される性格のものだ。

国内で過酷な労働であるのに処遇が著しく悪いために求職者が少ないから、外国人を導入して、その「嫌な仕事」を低賃金で外国人にやらせるというのは現代版の「奴隷貿易制度」の確立でしかない。

また、外国人を多数受け入れれば、膨大な社会的費用が発生する。社会保険諸制度の収支が悪化すると予想される。治安の悪化を懸念する声も強い。外国人労働力を輸入して利益を得る資本に、外国人労働力導入拡大に伴う費用=コストを負担させる仕組みを確立しなければ、利益は資本が享受し、一般市民が負担だけを押し付けられることになる。

また、これらの過酷な仕事に従事している労働者は、本来は市場原理によって、労働の過酷さに見合う高い賃金、高い処遇を得られるはずであるのに、外国人労働力の輸入によって、本来得られる処遇を得る機会を失う。これも国内労働者に発生する不利益である。

他方、これまでの技能実習制度の実態においては、外国人の権利が侵害され、企業による不法行為、人権侵害が野放しにされてきた。この面での対応を取らずに、外国人労働力の輸入を激増させることは、この問題をさらに拡大させることになる。

日本が外国人を受け入れるなら、外国人に対する不法行為の排除、人権の擁護を確実に実現できる体制を整えて実施するべきだ。そして、何よりも重要なことは、その判断を行うのは日本の主権者であることだ。

外国人に対しても日本の社会保険制度を適用することになれば、例えば、日本の公的保険医療制度利用によって利益を得るために日本に流入する外国人が激増する可能性もある。このことは、日本国民の費用負担の増大、あるいは、日本の公的保険医療制度の給付水準の劣化をもたらすことになる。

さまざまな影響が広がることは確実であり、これらの諸点に関する十分な論議を行ったうえで制度を確定するべきことは言うまでもない。

ところが、安倍内閣は首相の外遊日程があるから採決を強行するとの「本末転倒」の対応を示している。今国会には、日欧EPA承認案、水道法改定案、漁業法改定案など、極めて重大な法案が提出されているが、これらの重大な法案が、十分な議論も行われずに、与党の数の力で押し通される状況にある。すべてに共通するのは、大資本の目先の利益だけが追求されているということだ。

水は主権者の命の源である。施設が老朽化したなら、公的な責任の下で施設を更新すればよい。インフラ整備は見合い資産が残存するから債券発行による財源調達が合理的である。公的管理下に置くと事業運営が放漫になるとの批判があるなら、公的事業に対する市民による監視体制を強化すればよいだけのことなのだ。

日本が推進する水道民営化では、民間事業者による経営内容に守秘義務がかけられ、公的管理下で事業を実施するよりも、はるかに透明性が低下することが予想されている。海外の事例でも、水道民営化が法外な料金の引き上げをもたらし、市民に著しい不利益を与えることが立証されている。

水道法改定を推進する勢力は、いわゆるハゲタカ資本への利益供与を目的に行動しているのである。日本政治のこの現実を放置するなら、日本は完全にハゲタカ資本によって食い尽くされることになるだろう。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。