<ナイナイ「オールナイトニッポン」終了、岡村隆史が一人の番組へ>仮説・岡村がのびのびとやるために必要な矢部浩之


高橋維新[弁護士]

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前回、筆者はナインティナインのオールナイトニッポンが終了するということで記事を書いた(http://mediagong.jp/?p=2364)。これは、同番組2014年8月21日放送回(第1008回)の終盤に、突如ナイナイの2人の口から番組の終了が発表されたことを受けて執筆したものである。

その次の1009回で詳しい経緯や今後について発表があったが、なんのことはない、番組自体は「岡村隆史のオールナイトニッポン」として続くということであった。要は、矢部一人が番組から抜けるという形がとられたのである。

なぜ矢部が抜けるのか。その理由は1009回で矢部の口から語られたが、全くもって要領を得なかった。ここに要約して書けるだけの内容のあることを、矢部はしゃべらなかった。リスナーに説明をするという触れ込みでしゃべったのに、よく分からなかったのである。

そもそも説明というのは人に何かを分かってもらうためにするものなので、それが分からないということは通常ありえない。あるとすれば、(弁護士の勘として)説明する本人も分かっていないか、本当のことをしゃべっていないかのどちらかである。

矢部は20年以上続いたラジオ番組から相方を残して一人だけ抜けるのである。自分だけその理由が分かっていないということはないだろう。ということは、本当の(もっと分かりやすい理由が)何かあるということである。本人たちも、番組内で「ナイナイ不仲説とか週刊誌に書かれるんじゃないか」などと心配していたが、矢部の説明が分からないのだからそういう噂が出てもおかしくはないだろう。

前回の記事でも書いたが、あの番組は岡村で成り立っている番組である。ナイナイどちらかを切れと言われたら、岡村を選ぶ人はいないだろう。矢部のやっていることは、岡村の話の聞き手、たまにツッコミ、番組全体の進行の管理と、あとは曲紹介や提供読みみたいな雑用である。

こういうことを書くと、「やっぱり矢部は何もやってないし、何もできない」という人がいる。筆者の知っている放送作家にも、「矢部はダメだ。矢部は何もしない。矢部があんなんだから岡村がパッカーンになったんだ。岡村は本当は矢部を捨てて役者の道に行きたいんだけど、自分が矢部を捨てると矢部が生きていけなくなってしまうから悩んでいるんだ」と言って憚らない人がいる。

筆者の高校でも「矢部は現場で手を叩いて笑っているだけだ」と言っていた人がいたし、天然素材でも何もできないから虫以下の扱いだったという話も聞く。

とはいえ、筆者はそこまでひどくはないと思っている。確かに、コンビのボケの方ばかりに実力があって、ツッコミは大したことをしていないというコンビはかなりいる。古くはうなずきトリオ(ビートきよし・松本竜介・島田洋八)がそうだろう(そもそも「うなずきトリオ」というのが、この3人が漫才で相方の話にうなずいているだけだということから命名されたものである)。時代が下ると「ワンナイ」の3人(蛍原徹・川田広樹・平畠啓史)なんかが代表的か。

ところが矢部はこの人たちと違い、ピンの仕事を持っている。ピンの冠番組も持っている。けして岡村におんぶにだっこでここまで来たわけではない。では、矢部の強みとは何なのだろうか。

ツッコミという立場でもテレビ業界で生き残っている人は、みな明確な強みを持っている。浜田雅功は芝居(特にキレる芝居)ができる。加藤浩次はツッコミなのにボケができる(あと芝居もできる)。山里亮太や若林正恭には日本語のセンスがある。

ところが矢部は、まず、ボケない。大喜利で司会者の側に回ることはあっても、回答者の側に回ることはない。ボケるべき場でも、まともにボケない。浜田や加藤みたいに芝居ができるわけでもない。上田や山里や若林みたいに日本語のセンスがあるわけでもない。

じゃあ岡村が想像以上に矢部に仕事が回るようにかばってきたのかというと、そんなこともない。例えば蛍原は、ものすごく宮迫博之に庇われているのがテレビを見ているだけでも伝わってくる(宮迫が芸人として仕事をする場合はほとんどホトちゃんとセットである)が、ナイナイからはそういう様子は見えない。

結局、本業のツッコミがピカ一なのだという結論をとるしかない。しかし矢部のツッコミで良かったものを思い出せと言われても、ピンとこない。やっぱり、なんで生き残ってこれたのかはよく分からない。

そこで立てた仮説が、「岡村がのびのびとやるには矢部を近くに置いておく必要がある」というものである。岡村がオンリーワンである以上、岡村の力を最も引き出せる矢部にも、お鉢が回ってくることになる、ということである。

元々この仮説は、矢部が100kmマラソンに回されて岡村が孤立した2011年の27時間テレビを見る中で形成されたものである。筆者には、岡村がどうも普段より力を発揮できていない感じがしたのである。もっともそれは27時間だったからかもしれないし、生放送だったからかもしれないし、パッカーンからの復帰から間もなかったからかもしれない。なので、この仮説はまだ真偽を検証しきれていない。

今後、岡村一人のオールナイトニッポンが回数を重ねれば、この仮説の真偽も、矢部の価値もだんだんと分かってくるだろう。(高橋維新[弁護士])

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。