官邸「発闇営業ネタ」電波ジャックにご用心 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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通常国会が6月26日に閉幕し、参議院議員通常選挙が7月4日公示、21日投票の日程で実施されることが確定した。安倍内閣は2019年10月の消費税率10%への増税を強行する方針を明示し、参院選に挑む。

安倍自公に対峙する野党勢力は32の1人区で候補者を一本化する調整を終えている。同時に、消費税増税について、消費税増税を阻止することを共通公約に明示した。

参院選の最大争点は消費税増税の是非ということになる。このことをすべての日本の主権者に浸透させる必要がある。消費税増税阻止で足並みを揃えた野党各党は、参院選を通じて、消費税増税阻止の意思を明示することを主権者に徹底的に呼びかけるべきだ。

第2次安倍内閣が発足して6年半の時間が経過した。この間の経済政策運営を安倍内閣はアベノミクスと称しているが、アベノミクスの成果は惨憺たるものである。この実績を明示して、今後の経済政策運営について、主権者の意思を問うことが重要だ。この6年半の実績として挙げられることは、

1.実質GDP成長率平均値が+1.3%であったこと

2.法人企業利益はほぼ倍増したこと

3.一人当たり実質賃金は約5%減少したこと

である。経済全体の運営は「不可」である。民主党政権時代の成長率平均値は+1.7%だった。民主党時代も日本経済は低迷していた。しかし、安倍内閣下の日本経済の実績はこれを大きく下回る。

他方、大企業を中心に企業収益は倍増した。これと対照的なのが労働者の実質賃金で、約5%も減少したのだ。経済が超低迷するなかで企業利益が倍増したことは、労働者への分配所得が著しく圧迫されたことを意味する。企業にとってアベノミクスは天使の政策だが、一般市民にとってアベノミクスは悪魔の政策だ。この悪魔の政策に拍車をかけるのが消費税増税である。消費税増税によってもっとも深刻な打撃を受けるのが、所得が少ない階層、所得を得ていない階層である。

厚生年金を多額受領できる世帯でも、老後資金が2000万円不足することが明らかにされた。国民年金だけの世帯では老後資金は4500万円不足し、年金を受給できない世帯では老後資金が9800万円不足する。

こんな地獄絵図のような日本社会を容認するのか。これを問うのが今回の参議院議員通常選挙である。消費税増税強行を掲げて安倍内閣与党は参院選に勝利できると考えているのか。今回の参院選は日本政治を刷新する最大のチャンスになる。このチャンスを確実に掴まなければならない。目の前にあるチャンスをものにするには、しっかりと両手で掴むことが必要だ。

安倍内閣は選挙に負けないために何をしてくるか。まず考えられることは、徹底的な情報統制である。徹底的な情報統制とは、主要メディアに政治問題を取り扱わせないことだ。テレビの報道番組は、本来、すでに政治問題の特集で放送時間の大半が占拠されていなければおかしい。国政選挙が目前に迫っているのだから当然のことだ。老後資金の不足、そして、10月の消費税増税の是非について、徹底的な考察、論議が必要なのだ。

ところが、主要メディアは、政治問題を一切取り扱わない。時間を割いているのは、実刑が確定した人物が逃走した話と、吉本興業などの芸能プロダクションに所属する芸人が反社会勢力のパーティーに直営業=闇営業を行っていたことだ。

これらの素材は、官邸筋から提供される。テレビメディアが政治問題を取り扱うのを阻止するために、ネタを提供するのだ。大事なことは、消費税増税問題を徹底的に論じること。そして、参議院議員通常選挙に主権者が全員参加することだ。消費税が争点になり、投票率が90%を超えれば、間違いなく安倍自公与党は大敗する。これを確実に実現しなければならない。

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