<ラグビーワールドカップ>ジャパン大躍進!もっと賞賛すべき3名の外国人選手

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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ラグビー・ワールドカップ(WC)、日本代表ブレイブ・ブロッサムズはベスト8で感動的な闘いを終えました。

多くの選手たちが有名になりました。『最高のキャプテン』リーチ・マイケル、『フェラーリ&ポルシェ』松島幸太朗&福岡堅樹、『クールな司令塔』田村優、『ドレッドヘアの怪物』堀江翔太、『笑わぬ男』稲垣啓太、『松本人志似YEABOII(イヤボイ)連発』中島イシレリなどはもはや常識。『ナニワのおじいちゃん』トンプソン・ルークや田中史朗などのベテランに姫野和樹、流大、具智元、中村亮土などの気鋭も人気者です。

『ONE TEAM』ですから誰が人気でも良いのですが、年間100試合以上テレビ観戦する筆者としては、歴戦後のテレビ出演もなく、その貢献度の割に知られることのない外国人プレイヤー3人に、あえて光を当てたいと考えます。すごいんです、この3人。

決勝トーナメント進出に立ちはだかるスコットランドとの大一番。後半2分、日本陣10ヤードからスコットランドは怒濤の攻め。天才司令塔ラッセルが12番ジョンソンへパス。その刹那、ジョンソンへトップスピードで飛び込んだのが日本のラファエレ・ティモシー(サモア国籍)です。たまらずジョンソンは5メートル離れた13番ハリスへパス。するとラファエレは瞬間の躊躇もなくジョンソンを放り出して次の標的へ。ハリスにボールが渡るとラファエレが襲いかかり下半身へ激しく食い込みます。ここへ福岡堅樹も上半身へダブルタックル。たまらずハリスの手からこぼれたボールをすくい取った福岡は得意の瞬間加速、敵のディフェンスを置き去りにしてトライ!

ニュース映像では福岡がボールを取ったところからくり返されるこのトライ、実はその数秒前に『パスを出した選手と受けた選手の両方』を一人で仕留めたラファエレ選手の献身と驚異のスピードがありました。このひたむきさこそ日本代表の強さを象徴しています。

今回の日本代表全5試合、そのすべてに完全フル出場した選手はたった2人しかいません。松島幸太朗とこのラファエレ・ティモシーです。そのプレイを視るたびに、つくづく『ラファエレは美しい』と感嘆します。精悍な面貌、理想的なバックス体型、その勇姿はダビデの如し。そして巧緻にして華麗な技を得点へつなげます。

*初戦ロシア戦前半11分、ラファエレの魔法のようなオフロードパスに観衆がどよめきます。そこから松島につながり大会最初のトライ。
*強豪アイルランド戦後半18分、中村のパスを奇跡のワンタッチパスで福岡につないで逆転トライ。
*サモア戦では自らの強さでディフェンスを切り裂き、先制トライ。
*スコットランド戦前半終了間際、敵防御ラインの裏に絶妙なボールを転がし福岡のトライを引き出します。

攻撃だけではありません。特筆すべきは前述したような『勇気と献身』のディフェンスです。日本ピンチ!というシーンで画面の外から驚異のスピードで飛び込んでタックルを決め、すぐさま立ち上がるや涼しげに次のポジションへ走るのがラファエレです。

[参考]TBS『あさチャン!』台風中継が凡庸以下だったわけ

あらためて全試合を見返せば、ジェイミー・ジョセフHCが松島とともにラファエレを1秒たりともピッチから外せなかった理由がよく分かります。そして13番ラファエレの『美しさ』に思わず目頭がうるうるしてしまうこと請け合いです。

そして今回のWCでまさに圧巻の『縁の下の力持ち』だったのが7番ピーター・ラブスカフニ(南アフリカ国籍)と5番ジェームス・ムーア(オーストラリア国籍)のコンビです。この二人、ホテルはいつも同室だそうです。二人ともフォワードで試合中はヘッドキャップをかぶっていますがイケメンです。ハリウッドスターのような名前でモデル経験もあるというムーアはスクラムの真ん中にいる5番ロック、日本人にはとても発音しにくいラブスカフニはフランカーで7番、スクラムでは外側にいます。二人はひたすら全力でスクラムを押し、タックルで120キロの巨漢を止め、倒し、密集の中で格闘をくり返しながら、トライの栄光はフィニッシャーに託すという自己犠牲の塊です。その働きは目立たずとも、その凄さを二つの数字が明快に物語っています。

ひとつはラブスカフニが松島、ラファエレのバックスと並んで『ほぼ全試合フル出場』(脳震とうチェック10分退出)し、ムーアも4試合にフル、1試合のみ51分出場という日本代表プレイ時間トップ5に入るという驚異の体力と精神力です。なにせ彼らはフォワードなのです。

そしてもうひとつの輝かしい数字は、今回のWC全チーム全選手中でタックル回数第1位がラブスカフニ68回、第2位がムーア67回とワン・ツゥ・フィニッシュだったことです。(注・準々決勝終了時点)チームのために、全力で突進してくる110キロ、120キロの相手に向かってタックルをくり返し、格闘し、走り、見方が倒れればその密集に飛び込んでボールを守る・・・。
これを80分くり返して、ケガせず、チームに尽くし続けた強靱な体力と気力と勇気には頭が下がります。

二人とも日本代表に入ったのは今年になってからのニューカマー。ラブスカフニは人格と判断力に優れ、今回も2試合のゲームキャプテンを任されています。一方のムーアはとにかくタックルで相手を倒すことに無類の喜びを持つという、甘い顔に似合わぬ若きタックルの鬼です。ともに黒いヘッドキャップの二人に注目して試合を見直せば、彼らのひたむきさと、人種・国籍などという意識を軽々と越えてしまうラグビーの奥深さに感動されるに違いありません。

日本代表31名の選手は全員日本のラグビーリーグに所属しています。来年1月からは各チームに分かれて闘います。リーチ・マイケルとラブスカフニは東芝とクボタで闘いますし、ラファエレと松島は神戸製鋼とサントリーに分かれてスピードを競います。ムーアは宗像サニックスブルースという下位チームで頑張ります。

ところでいま日本のラグビーにはとんでもないことがおきていることにお気づきでしょうか。今回のワールドカップで注目の各国TOP選手たちが日本のラグビーリーグにやってくるのです。なんと宿敵南アフリカからは、世界最強のフッカーと言われるマルコム・マークスをはじめ、WC先発メンバー7人が日本でプレイします。ニュージーランド・オールブラックスからはキャプテンのオーラン・リードを含む4名、オーストラリアからも5名がやってきます。

今回のWC組に限らず、神戸製鋼のダン・カーターのような南半球の名選手たちがすでに日本のリーグに参加しています。そして彼らはけっして手を抜いたプレイはしないのです。

来年1月から始まるラグビーのリーグ戦、日本はいながらにして世界の一流選手のパフォーマンスを堪能できる、ラグビーファン至高の国になっています。もし、1月まで待てないとおっしゃるなら大学ラグビーがすぐに始まります。帝京の牙城を明治、天理が崩し、早稲田を加えた4大学が鎬を削っています。4年後のWCを目指す若きタレントたちの闘いでもあります。

ラグビーは、体力、気力、技術、勇気、規律、経験、戦略、戦術、知性、人格、忍耐、献身などのすべての力が問われるチームスポーツの雄。今回のWCでせっかくなじみになったラグビーです、その最高峰を楽しまない手はありません。

 

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