<放送作家になる方法>放送作家を最終目標にしないこと〜職業比0.0007%の仕事


高橋秀樹[放送作家]
2014年3月14日

 

日本に放送作家は920人しかいない。(放送作家協会登録者)20歳から59歳までの人口がおよそ6600万人だから日本の就業可能人口の0.0014%ということになる。

ただし920人のうち、この仕事で食えている人は私の実感で言うと5割である。つまり、日本の職業のわずか0.0007%が放送作家だということになる。ほぼ10万人に1人、きわめて珍しい職業である。早稲田大学、慶応義塾大学、明治大学の在学生数が合わせてほぼ10万人なので、その中から1人放送作家が誕生することになる、といえば放送作家の珍しさがわかってもらえるだろうか。

これは別に放送作家になるのは難しいということを言いたくて、挙げた数字ではない。別になるのは難しいことはないからである。

まず、どこかのテレビ番組にAD(アシスタントディレクター、つまり下働きです)としてもぐりこんで、売れっ子の放送作家の知己を得て、なりたい旨を述べれば、「食えるかどうか責任は持たないけど、ちょっと資料調べでもやってみるか」といわれるのはそう難しいことではないだろう。問題はそこから先である。

放送作家というのは名刺を作ってそこに放送作家と印刷したからといって、放送作家になれたわけではない。就職すればサラリーマンという身分を獲得できるのとはまるで違う。放送作家は周りにいるディレクターや演者が「あの人は放送作家だ」と認めてくれて初めて放送作家になれるのである。

機会があれば誰か放送作家の名刺を見てみるとよい。そこに放送作家とは刷り込んである人はいないだろう。他人から認められて初めてなれる職業なのに放送作家と名乗るのは恥ずかしいからだ。いつ認めてもらえなくなるかもしれない不安定な職業でもあるからだ。ある意味では運任せの職業だからだ。

放送作家として認められ続けるには、仕事が途切れずある必要がある。仕事が途切れないためにはヒット番組をコンスタントに生み出さなければならない。あるいはテレビから引く手あまたの有力なタレントとがっちりタッグを組まなければならない。後者のタイプとしてはダウンタウンの高須光聖や、SMAPの鈴木おさむがいる。

ところで、放送作家と一口に言っても、そこにはさまざまな分類がある。宮藤官九郎や三谷幸喜といった脚本家、コント作家、アニメ作家、クイズ作家、情報番組の構成作家。これらはみな放送作家であるが、若者が普通放送作家になりたいといったときにイメージするのは、バラエティ番組の作家だろう。ただしここには大きな落とし穴がある。

なぜなら、本質的にはバラエティ番組の放送作家というのは、何でも屋だからである。脚本も、コントも、クイズの問題も、笑えるコーナー企画も、ナレーションも、司会者の進行コメントも皆こなせなければいけない。

何でも屋になると、おそらく目標を見失う。自分が何をしているかわからなくなる。「身過ぎ世過ぎの金を放送の仕事で得ている人」に成り下がる。で、こうした惰性が、放送作家としての破滅を招く。この年齢が35歳といわれている。放送作家35歳定年説である。これはこうした根拠があるからいわれているもので、ある意味正しい。

放送作家になりたい若者に言っておく。笑いをやりたいのか、優れた歌番組をやりたいのか、こうした目標は簡単にはかなわないから、目標を決めてから放送作家になることである。目標があれば仕事が惰性にはならない。

あるいは、

「放送作家を最終目標にしないこと」

である。