「今だけ・金だけ・自分だけ」強欲人間が諸悪の根源 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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「コストダウン 叫ぶあんたが コスト高」

これが1999年第一生命サラリーマン川柳第1位の作品だ。重大事件の刑事被告人でありながら、違法な手段で海外に逃亡したカルロス・ゴーン被告を念頭に置いた一句であるのだろう。

日本経済の最大の経済問題は格差拡大だ。格差拡大によって底辺にしわ寄せが来ている。最前線にいる労働者の処遇が悪化の一途を辿っている。

「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」は江戸時代の旗本・神尾春央(かんおはるひで)の言葉として、本多利明の著作「西域物語」に書かれているもの。260年の時空を経て、いま類似した政策が遂行されている。末端の労働者を絞るだけ絞り、上に立つ者が私腹を肥やす。この図式が問われている。

2012年12月の第2次安倍内閣発足から7年の時間が経過した。この間の日本経済のパフォーマンスは史上最悪と言ってよい。経済成長率平均値(前期比年率四半期成長率の単純平均値)は+1.3%で、民主党政権時代の+1.7%を大幅に下回る。超低成長が持続している。

このなかで企業利益は激増した。法人企業当期純利益は2012年度から2017年度の5年間に2.3倍になった。安倍首相は雇用が改善したという。たしかに雇用の数は増えたが、一人当たり実質賃金は5%も減った。経済全体が史上最悪の状況下で企業利益が倍増しているのだ。そのしわ寄せが一手に労働者に覆い被せられている。労働者の生存権さえ奪われつつある。

安倍内閣は「働き方改革」という名の「働かせ方改悪」を推進している。

*長時間残業の合法化

*正規・非正規の格差容認

*残業代ゼロ労働制度の拡大

*解雇の自由化

*外国人労働力の輸入拡大

などが推進されている。大資本は労働者を最低のコストで使い捨てにできる制度を求めている。これを全面的にサポートするのが安倍内閣の「働き方改革」である。若者が未来に夢と希望を持つことができない状況が生み出されている。出生者数の激減はこのことを端的に示している。日本社会から夢と希望が消えている。これが現代日本最大の経済問題だ。

末端の労働者の最低賃金は1時間当たり790円。年間に2000時間汗水流して働いて得られる収入が158万円だ。ここから各種社会保険料が徴収される。かすかすになった可処分所得を直撃するのが消費税だ。消費金額の10%を懲罰としてむしり取る。この状況を生み出す企業トップが数億円、数十億円の報酬を独り占めにする。高額報酬の前に、末端労働者の処遇を引き上げるべきだ。

生産活動の結果として得られる果実の分配を公正にすることが求められている。「インカム・シェアリング」の発想が大事だ。ここから導かれる政策目標が最低賃金全国一律1500円の実現だ。この実現で日本社会が変わる。「政策連合」で、まず消費税率5%と原発稼働即時ゼロを掲げるが、私たちが支持する政策は、消費税廃止であり、最低賃金全国一律1500円の実現だ。

この政策公約を明示する勢力を大きく育てることが重要だ。生産活動の結果として得られる果実を公正に分配する。これがインカム・シェアリングの考え方である。

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