新聞を3ヶ月取れば「コシヒカリ15キロ7500円分」がプレゼントされる不思議なからくり

社会・メディア

リチャード・ディック・ホークスビーク[古書肆]
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名前はガイジンだが、ずっと日本に住んでいる。母は日本人であるが亡くなった。28年前に独立したが、独立した時、電話はなかった。給料は10万円ほどだったが、電話債券というのを買って固定電話をアパートに入れるには7万円もかかったと記憶する。固定電話は贅沢品だった。
その代わり新聞は取った。新聞は独立したら必ず購読するものという意識があったからである。3紙もとった。朝日、日経、スポニチである。
スポニチは芸能面と競輪面を読む。日経は株の勉強をしていた。会社の新製品情報がすきだった。朝日は…その理由は後にして今朝の出来事を書く。
自転車で八百屋に万願寺唐辛子を買いに行こうとして外に出たら、新聞の拡販員につかまった。「読売新聞です、今、朝日にシェアを奪われてて」と早口で言う。いつもはそんなものは無視して行ってしまうのだが、今朝はあと、秋月梨を買う用事しかなかったので、立ち止まって話を聞いてしまった。

拡販員「今ね、プレゼントしてるんですよ、ビール飲みませんか」

筆者「飲まない」

拡販員「じゃあねえ、米はどうですか。特A級の棚田米(「たなでんまい」と発音した)コシヒカリ、5キロ。5キロじゃ少ないか。3ヶ月取ってもらえば15キロサービス」

これには、少し心が動く。しかし、スーパーマーケットと米が大好きな筆者は知っている。今はもう9月、もうすぐ新米が出回る。そうなれば、この「たなでん米」は、古米と名前を変える。
心が動いているのを見透かされたか、拡販員はたたみかける。

「他の新聞が配っている米、あれまずいの。ウチは特Aコシヒカリ」

なぜまずいと知っているのだろう。

「旦那さん、取ってるの朝日」

なぜ知っているんだろう、そういえば配達員だけに分かるマークがポストに着いているという話も聞く。でも日経デジタルも購読していることは知らないだろう。知っていたら大問題だけど。

「何年取ってるの? 20年以上? 新聞はね、ずっと取ってる人には何もサービスしてくれないよ」

それはその通りだと思う、長く取っている人は安定顧客なのだから、1年ごとに100円ずつ安くするとか、そういうのが正常な商習慣だろう。

「一回、読売に換えれば、朝日が慌てて挽回しようとして、プレゼントくれるよ」

学生の頃、一ヶ月毎に新聞を換え、洗濯石けんは買ったことがないと言っている奴がいたことを思い出す。そろそろ飽きてきたので、話を止めようと思い、自分の考えを述べた。

「朝日をずっと取り続けているのには、理由があるんです。朝日新聞は監視しておかないといけない。そうしないと珊瑚に落書きして自作自演したり、古くは北朝鮮を地上の楽園だと宣伝して、多くの在日や日本人妻などを北に帰国させたり、最近は、従軍慰安婦問題で捏造記事を書いたりするから、毎朝、朝日新聞を読んで、しっかり見張らなければならないんです」

拡販員がポカンとしている。拡販員にこんな話をしてもしょうがないかと思いつつ別の事も頭に浮かぶ。

「朝日は左傾していると言われるが、日経は実業界の御用新聞で、右傾しているからそれでバランスをとっている」

拡販員が「特A コシヒカリ」と繰り返す。しょうがないので決めの断り文句を言って八百屋に行こう。

「お宅(読売)の主筆、あの人が嫌いなんです」

ところで、一応、コストは計算してみた。

  • 「特Aコシヒカリ・5キロ」2500円:三ヶ月まとめて7500円
  • 「読売新聞・朝夕刊セット」4037円:三ヶ月まとめて12111円

つまり、差し引きで「読売新聞・三ヶ月朝夕刊」が4611円で読める計算です。どうせ取るなら安いに越したことはないのか。
新聞は取ったこともないという若い人も多くいるいま、でも、僕は新聞なんてどれも同じとは思いたくない活字信奉者である。
 
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