<佐世保女子高生殺害事件・容疑者少女の診断>マスコミで活躍する無責任な「心の専門家」を名乗る人々

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家]

2014年8月22日

 
2014年7月26日に長崎県佐世保市で発生した佐世保女子高生殺害事件で、新聞などのメディアは心の専門家を名乗る人々を動員して、容疑者少女のレッテル貼りをして見せた。
これら、専門家の発言は無責任極まりない。
マスメディアコメントの先達である精神科医の町沢静夫氏は「性的サディズム」。プロファイリングなどもやる斯界のスター、東京工業大学の医学博士で犯罪精神医学の影山任佐氏は「発達障害」。このところ急速に名を売ってきたラカン派の精神分析家、医師の片田珠美氏は「性同一性障害」。
3人がそれぞれ違う判断なのは、こういった心の世界での診断が如何に難しいかを示していて皮肉なことである。
これら「心の専門家」は、なぜ、直接会うことが診断の基本であるのに、会いもせずに診断名を口にするのだろう。
成育歴、つまり、どんな子供だったかを聞くことが診断に当たっての大事なポイントであることは、この世界を少しでも学べば、学生でも知っている。それを無視して、報道情報だけからここまでのことが言えるのは、不思議を通り越して、不信感を抱くほどである。
診断名は一人歩きして、これらの当事者を苦しめることになることは自明である。「発達障害」や「性同一性障害」であったからといって、こうした事件を起こすものではないのはもちろんである。その短絡的誤解を避けるコメントさえ載せないメディアはこちらも無責任極まりない。
動機は読者や、視聴者の最大の興味だろう。ならば安直に“心の専門家”を起用するのはジャーナリストの恥ではないのか。
 
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