又吉直樹の「棒読み」がすごく気になる貫地谷しほりとのCM

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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又吉直樹と女優の貫地谷しほりが夫婦役を演じるヤマダ電機のCMを見るといつも引っかかる。引っかかると言うことはCMとして成功していることだろう。一体、どこが引っかるのか。まず、そのCMを書き起こしてみる。

<おそらく休日。貫地谷・又吉の結婚間もない夫婦は、洗濯機を見るためにヤマダ電機へ向かう>

又吉「ひとつじゃないんや・・・」

貫地谷「ん?」

又吉「行く理由ってひとつじゃないよね」

貫地谷「洗濯機、見に行くんじゃないの」

又吉「キッチンも新しくしたいって言ってたよ」「それに犬も飼いたいって」

貫地谷「うん・・・言った」

又吉「理由はひとつじゃない」

貫地谷「(又吉を見て笑う)ふふふ。カッコつけてんな」

又吉のあまりの棒読み。NGがでるくらいの棒読み。おまけに貫地谷の自然体の芝居が抜群に上手いので又吉の棒読みがさらに際立つ。決め打ちは貫地谷の最後のセリフ。貫地谷「ふふふ。カッコつけてんな」このセリフがあるので、本CMは成り立っていると思うが、貫地谷のセリフの投げ出し方がまたベストの演技で上手い。だから、またまた、又吉の下手さが目立つ。

CMディレクターの指示や又吉自身の解釈があって、彼のセリフが棒読みになっているのだろうか。とにかく、ものすごく気になるのである。ふつう何度も繰り返されるCMで下手さを表出するのは役者にとって損だと思うのだが。それとも又吉は芥川賞作家としての起用なのか。

[参考]テレビの報道番組をエンターテインメントにしてしまった罪

そもそも「棒読み」とは何か。辞書的解釈は以下のようになるだろう。

「演劇などの台詞を感情や抑揚を意識せずに台本の文字に従って発すること」

では、棒読みになる理由はなにか。

*台本が理解できていない

*実は台本に関心が無い

*そもそも演技が下手

*実はやりたくないことの表現

*技巧をこらして読むのがはずかしい。

*棒読みが表現として最適だと判断した。

又吉はどれだろう。今のところ筆者には判断が付かない。

かつて、B&Bの島田洋七さんにナレーションをやってもらったことがある。この時も棒読み。これは単純に下手だったからだと思う。萩本欽一さんがドラマに出た。セリフがプカプカ浮いてしまう。芝居が下手なわけではないので、他の仲代達矢さんなどの芝居のタッチに会わないからだと思う。

映画『男はつらいよ』寅さんの御前さま役の笠智衆さんは、セリフが棒読みだと言われる。でも抑揚がないだけで、これでいいのだと感じる。小津安二郎の『東京物語』の笠智衆さんの演技は見事である。

木村拓哉も、高倉健も、三船敏郎も、棒読みと言ったら棒読みである。だが、これらの役者は役柄に自分を合わせるのではなく、役柄を自分のキャラクターに引き寄せて演じるタイプの役者さんで、他の役者が棒読みに合わせることで成り立っている。

しかし、ドキュメンタリーで、文字情報による証言を感情を込めて吹き替えるのは、身震いするほどイヤだ。棒読みにして欲しいということではない、平板に読んで欲しいだけだ。官僚は大臣を馬鹿にして、無知をいいことに自分たちの都合のよい政策を吹き込み、それを原稿にして答弁させる。あれは真に棒読みになっているからすぐ分かる。

と、ここまで考えて又吉の棒読みCMに戻ると、台本を書く立場に立つことが多い又吉はきっと技巧をこらすセリフを言うことが恥ずかしかったのだろう。ピース時代の又吉を思い返すと、漫才でもコントでもそんなに芝居が上手ではなかったのでそれも加味してされて、あの棒読みになってしまったのではないか。

それから、関西弁ネイティブの人に標準語を言わせたからかも知れない。

 

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