<山奥ニートってなんだ?>「『山奥ニート』やってます。」が面白い

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

***

2020年5月に上梓された「『山奥ニート』やってます。」(石井あらた・光文社)が、面白い。

著者は熊野古道のそばの山奥にある人口5人、平均年齢80歳以上の限界集落でシェアハウスに住んでいる。シェアハウスは廃校になった小学校と近くの古民家である。なぜ、著者はここに住むことになったのか。具体的なことは(大変興味深いので)読んで頂くとして、外形だけを書いておく。

著者は学校の先生になろうと思って、教育大学に進んだ。世の中に対して多くの疑問がある子どもだったが、それは、胸の内に納めて、聞き回ることをしない「いい子」だった。

だがある時、壊れた。

それは教育実習でのことであった。指導教員のやりかたに、どうしても従い難かった。そして、留年、大学を中退する。ニートになった。ニートとは言うまでもなく、「働きたくない」「休みたい」「疲れる」「眠い」そんな人々である。

[参考]『パクリの技法』ジブリに許されて女子高生社長に許されないパクリの違い

出会いがあって、もう何も捨てるものはないと気づいた著者は、ある人物が設置した山奥にある「ニートのためのシェアハウス」に住むことになった。ところが、この責任者が突然亡くなり、著者はシェアハウスの跡を継がなくてはいけなくなった。だが、著者はニートでいたい。さあ、どうなるか?

いまでは、このシェアハウスに15人のニートやひきこもり達が住んでいる。どうしてここに至ったのか。ふだんは、怒らない著者が激怒したシーンが描かれる。私は読んでいて涙が出た。著者がなぜ怒ったのか、真に内面的な理由を文字にしていないが、私はこう思う。

著者は「他人のことを考えて、自分を後回しにしてやってあげたのに、それを感じていない仲間がいたから」怒った。だが、ニートはそんな理由で怒ってはいけない。ニートにあるまじきことである。それに気づいた時、著者の怒りは、自分に対する怒りとして沸点に達して、自分を抑えられなくなったのだ。

本書の帯の煽り文には『嫌なことせず1万8000円(月額)で、暮らす方法』とある。しかし、これは本書の訴えたいことを表現していないことを指摘しておく。HOW TO本ではない。

 

【あわせて読みたい】