綾瀬はるか『義母と娘のブルース』とサンドウィッチマン『ただ今、コント中。』

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

***

綾瀬はるかとサンドウィッチマンンの共通点は好感度ランキングで、男女それぞれの一位をとっていることだ(ランキングサイトRANK1調べ)

後に述べる録画してある番組を見ようとしてテレビを付けたら、たまたま再放送していたTBSのドラマ『義母と娘のブルース』に、目が釘付けになってしまった。

「これはコントじゃないか」

コントじゃないかとは、筆者のようなコント作家にとっては褒め言葉である。貶しているのではない。状況設定、キャラクター設定、場所設定ともに、面白いコントになる要点をすべて備えて居る。しかも、芝居の出来る役者が、本業として全力でやっている。綾瀬はるかの演じるシングルマザーで義母の岩木亜希子(33)役は、能面のような表情で、事務的で格式ばった口調で話す。恐らくありえないに近い人物造形だが、そのありえなさを綾瀬の演技力で越えている。森下佳子の脚本は桜沢鈴の原作まんがを役者が演じるために、きちんと変換し昇華している。うじゃじゃけた、コントまがいの、あるいは、まんがの再現ドラマかと思うような作品もある中で見事なものである。たとえばこんなシーンがある。

傾いた麦田ベーカリーの跡取り息子、章(佐藤健)が、店を建て直してくれた綾瀬はるかに、意を決してプロポーズする。

章はモノを知らないおバカの設定である。「プロポーズを聞くのに先入観を持って聞いてはいけない」という趣旨のことを綾瀬に言おうとして、先入観と言う言葉を間違えてしまう。セリフを写し取ると以下のようになると思う。(ドラマを知らない人のために役者名で表記する)

夜8時過ぎの公園、遠くに街の明かりが見える。ベンチにきちんと膝を揃えて座っている綾瀬はるか。おちつかなげに立っているジャンパー姿の佐藤健。

健「プロポーズとか聞くとき、そういうとき、いけないのは、そうに…」

はるか「(パっと、健の言葉をとって)先入観のことですね」

健「そう。そう」

これだけで、はっきりと、健が「先入観」と、間違えた言葉が「挿入感」と分かるのである。笑う。これが、どうして成り立ったのか。

[参考]

脚本家の書いたセリフがそうだったことが、まず考えられる。しかし、セリフを書くときに、多くの脚本家は括弧書きで(パっと、健の言葉をとって)のように動きを指定することをためらう。そこは、役者の工夫の領分だからだ。役者に失礼だからだ。

役者自身のやりとりの工夫。リハで考えたこともあろう。演出家の指示もあろう。最終的にOKを出したのはディレクターである。筆者は、ドラマをあまり見ないので、人気の『義母と娘のブルース』を、見ていなかった、しかし、ワンシーンだけで、何となく設定が分かるのは、このドラマの力である。

さて、冒頭に述べた「録画してあった番組」とはフジテレビの2020年12月29日(火曜日)放送、フジテレビの『ただ今、コント中。』である。

コント番組不遇の時代が長く続いいていたが(私見ではタモリの日本テレビ『今夜は最高!』終了(1989年)以来、それは、続いていた)ようやくコント番組の復活が見られるようになってきた今日この頃、サンドウィッチマンのやる番組に注目した。前回8月放送の時も評論を書いて、「スタッフを萎縮させる」などのお叱りをいただいた。文章にすると固定化するからそれも分かる。筆者の評論など、全く無視して、若い人は我が道を行って下さいとの希望もあった。ただひとつ思うのは「コントはオワコン」などと言われたくないということだ。落語は好事家のための伝統芸能になってしまったが、コントが、終わったコンテンツ(オワコン)になるのは、まだ早いだろう。

(1)J.Y. Park店長(富澤たけし)に、おばたのお兄さんも加わって、松井玲奈のバイト志望者を面接する。よく似ているJ.Y. Parkが2人になって強力。松井を案内してくる店員のかまいたち濱家は、なぜ面接会場に入れるのか、個人情報の保護が叫ばれる今、私的なことも聞かれる面接会場に余計な人は入れないのは常識だ。と堅いことを言ったが、面白ければ店員の濱家が中にはいる理由だけ考えてあげれば良い。J.Y. Park役へのツッコミがどうして欲しければ、濱家が覗いていうことも考えられる。これを考えるのはスタッフの仕事。

(2)中継される動物園。惜しい。アナウンサーが中継しているので、そのとおりに、動かなければいけなくなってしまう動物たち。なぜ、動物はムチャぶりのそのとおりに動かなければならないのか。昔はやったこの手のコントでは、その動物園の動物が人間が演じているニセモノなので、バレないように動物らしくしなければならないという設定を入れたものだ。

(3)ゲーム実況の富澤。(2)と構造は同じであるが、設定が新しい分、こちらがずっと上。

ところで、コントの要諦は演者が全力で、真剣に、役に憑依されたように演じることだ。一生懸命ふざけるという方法もあるが、それは年取ってからやれば良い。

(4)テロの戦士は実は全員が味方だった。変わり身が見どころの芝居が必要なコント。同じことの繰り返しなのでエスカレートが必要だ。僕は「3回目は変えろ」と習った。

(5)芸能人の保釈。おもしろい。実はバラされてしまう芸人の隠された不祥事がもっと有名だといい。大物演者向きコント

(6)ヤマンバグループ(ゆきぽよ、3時のヒロイン福田、かなで、かまいたち山内)の仲間になりたい浜辺美波。今回のコントで最もおもしろかった。浜辺美波初め、出演者全員が役に憑依しているからだ。山内のメイクからも本気度が分かる。こういうコントに僕はやられる。

(7)ガラケーの妖精。おなじみのこびとのガラケー妖精を演じる伊達と富澤、さすがのコンビネーションである。「いつもここから」のネタを演じたサンドウィッチマンに吹き出す、濱家のリアクションも適量。

(8)ダテちゃんマン。決めた段取り通りにやり過ぎたかな?段取りからずれていきたいなあ。ベルトコンベヤを伊達に内緒で[打ち合わせずみの内緒にしないと危ないよ)速くするとか。

(9)たまに芸能人が来るラーメン屋。筆者が、ネットに書いた評が読まれていた。皮肉でも何ともなく、少しでも笑いになっていたら嬉しいです。

 

【あわせて読みたい】