<決定版・欽ちゃんインタビュー>萩本欽一の財産⑦知識を吸収してもそこから脱出できなければダメ

高橋秀樹[放送作家]
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「萩本欽一インタビュー」その⑥はこちら

「頭の人っていうのはどういう人だ?」

と大将(萩本欽一)が僕に聞く。聞かれた時は間を置かず、すぐになにか答えなければならない、という訓練を大将から受けているので。
僕はすぐに、

「知識がある人」

と答える。

「それから?」

いろいろ考えてしまい、言いよどむ。ダメだダメだ。芸人なら許されない言いよどみだ。

「頭のいい人ってのはね、それからその仕入れた知識を吸収できる人だ」
「でもな、吸収できちゃうからダメなんだ」

どういうことなのかさっぱりわからない。

「知識は吸収しちゃうとな、そこで止まっちゃうんだよ、がんじがらめになって脱出できなくなっちゃう。それが頭のいい人だ」
「ただ、もっと、頭のいい人がいる。それは吸収した知識から脱出できるひと、孫さんとか三木谷さん」

大将の主戦場あるテレビ界には、脱出できる人はいたのだろうか。話を聞いている限りでは何人かの脱出できたディレクターがいたらしい。しかし、テレビ局には東大をでた知識を吸収して止まってしまうタイプの「頭のいい人」ばかりたくさんいる。だからダメなんだと大将は言う。大将の頃はそうだったのだろう。僕の頃は頭のいいだけの人も少なくなったし、バカのほうがたくさんいた。
脱出できる人の顔は数人しか思い浮かばない。それはテレビが給料が高いのだけが魅力で、それ以外の人を惹きつけるものが減って、テレビに人材が集まらなくなってきたからだろう。
大将が話しだす。

「知識を吸収できる頭の良い人は“いいもの”と“悪いもの”を区別することができるんだ」
「でもそこまで。こんなことがあった」
「昔、大リーグのヒーローインタビューでNHKのアナウンサーが選手に、『今のお気持ちをお聞かせ下さい』って言ったんだ。これ、いい聞き方だと思ったのね僕。最初に考えた人はすごい。的確な上に曖昧で、選手がなんでも好きなことを応えられる質問だ。そしたら、しばらく経ってオリンピックでも『今のお気持ちをお聞かせ下さい』って言ってる。いい聞き方だって、ちゃんと区別しちゃったからおなじ質問がでたんでしょうね。終いには大井競馬の勝利騎手インタビューでも『今のお気持ちをお聞かせ下さい』って言ってる。もう飽きたよ」
「いいものを判断して区別できるから、吸収しちゃったから、そうなるとそればっかり、それじゃつまんない。もっとむちゃくちゃな、今日はないを食べて球場に来ましたかって聞けば、面白いかもって考えてよ。変えてよ。って言いたくなる」
「優れている人のね、上から、1番から5番目の人、この人達は、吸収して、いいもの悪いものを区別して、それで終わりではいけないって知ってる人」
「6番から10番の人は、吸収して、いいもの悪いものを区別出来ない時は、バクチが出来る人」

「大将は1番から5番ですね」

と、つい、自動的なお追従をしてしまう僕。

「いや、僕は6番から下」

と、何のてらいもなく言う大将。

「僕は、東大行ってないし」

こういうのを学歴コンプレックスと通常言うのだと思うけれど、大将はそうではない。大将は本気で東大をでた人を尊敬しているように僕には感じられるのだった。
(その⑧につづく)
 
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