<決定版・欽ちゃんインタビュー>萩本欽一の財産⑨テレビには、子供用の芸を何%か混ぜる


高橋秀樹[放送作家]

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その⑧はこちら

「よる9時台というと、僕(大将こと萩本欽一)らの頃は大人の時間帯で、ドラマが中心。バラエティをやる土壌がなかった。今は月9なんて言うけど、これもドラマだけど、このドラマはどちらかというと、背伸びした子供が見るようにできてるドラマだよね」

「まず、よる9時台に、バラエティを企画しても大きなスポンサーはバラエティは“汚い”からといって買ってくれない。欽ドンはフジテレビだからやれた面もある。フジテレビは大きなスポンサーの1社提供ではなくてスポットCMだったからね。このバラエティ不毛の時間帯に乗り出すに当たって、僕は子供用の笑いを意識することにした。子供でもわかる笑い。そうしないと大きな数字『視聴率』はとれないと思った」

「子供用って、どんなのですか」

と聞く。

「基本的に動きの笑いじゃなくて、言葉の笑い、現象の笑い」

「僕らが浅草で体にたたき込まれた笑いは、動きの笑いです。しかも『コケる』とか、『頭を叩く』とか言う、だれでもわかる、大きな笑いじゃない。もっと微妙なニュアンスを出す笑い。それは子供には伝わらない」

「子供に伝わるのは言葉の笑いだなあ」

僕が例を挙げてみる。

「『欽ドン!良い子悪い子普通の子』だと、こんな例がありました」

「ワルオが『“欽ドン”て、何の略だって聞かれて』『欽ちゃんのドン詰まり』。ワルオが『足が、足が…』て、足を押さえてなにか重大なことが起きたような様子で出てきて『足が……短い』ワルオが、校内写真展に出した父欽ちゃんの写真のタイトルを聞かれて『単なる、おっさん』」

「そう、そういうやつをさじ加減で混ぜておくんだ」

『欽ドン!』のプロデューサーだった常田久仁子さんにこんな話を聞いたことがある。

「欽ちゃんが持ってきてくれたネタを見たことがあるの、そしたらね女の私と男の竹島(ディレクター)が、笑うところが全然違うのよ。こりゃあ男も女も子供もみんな笑えて、いけるかなあッて思ったのよ」

となると、知りたいのは大人の笑いの方だ、

「じゃあ、大将〈欽ちゃん〉。浅草で見せていた、大人用の動きの笑いというのはどんなものですか」

「それはねえ、セリフと動作を決して合わせないんだよ」

「合わせちゃったら、学芸会の芝居だ」

「セリフは、動きの上にそっと乗せてるだけ」

何のことだか今ひとつ要領がつかめない。

「だから、僕はドラマが出来ないんだけどねえ」

そう言いながら、大将は立ち上がった。

「たとえばさ、『違うんじゃないですか』っていう、セリフだとするよ」

(その⑩につづく)

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。