<特撮コンテンツはビッグビジネス>「ハリウッド版ウルトラマン」は日本人の手で

映画・舞台・音楽
岩崎未都里[ブロガー]
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特撮ドラマ「ウルトラマン」(1966・TBS)は親子二世代に愛される息の長い作品であることを、前回の記事で力説(?)しましたが、ウルトラマンと同じ1966年にアメリカで放映開始された特撮ドラマ「スタートレック」も実は、とても状況が似ています。
放映当時の子供から大人まで「トレッキー」と呼ばれる熱狂的なファンによって、放映終了後も全米の大都市でコンベンションが定期的に開かれ続けていることは有名です。
その熱狂っぷりの伝説には事欠きません。例えば、1976年に「トレッキー」による約40万通の請願投書が行われた結果、「コンスティチューション」という仮名が付けられていた「スペースシャトル1号機」の正式名称が、「スタートレック」の宇宙船の名前「エンタープライズ」へ変更されたほどです。
「スタートレック」のキャラクターと言えば、筆者にとっては主役よりも印象深い「尖った耳のバルカン人」である「Mr.スポック」役のレナード・ニモイ氏。もちろん「Mr.スポック」に魅せられたのは筆者だけではありません。「Mr.スポック」ことレナード・ニモイは、スタートレックのファン大会を廻るだけで、原作出演料以上のギャラを得ていたそうです。
このあたりのネタは、「スタートレック」のパロディである架空のSF特撮ドラマ映画「ギャラクシー・クエスト(1999)」で、とてもうまく描かれています。「ギャラクシー・クエスト」は、「スタートレック」人気だけでその後ずっと食いつないでいる出演者たちを描く特撮コメディ映画です。
当初「トレッキー」を皮肉ってるのかと思ってましたが、実は特撮ドラマへの愛情に溢れた映画でした。「スタートレック」は未だに新作が製作され、スピンオフドラマも数え切れないほど存在しています。もはや「架空の宇宙世紀」が存在するかのようです。こちらも「ウルトラマン」と同じく凄いビッグビジネスになっているわけです。
しかしながら、「ビッグビジネス」というと、安直かもしれませんが、ハリウッド映画化され、今年公開された「GODZILLA(ハリウッド版ゴジラ)」を思い出します。このハリウッド版「GODZILLA」ですが、

「俺が子供の頃みたゴジラじゃない違う怪獣が出てきた」
「なかなかゴジラ全体像が観れずジラされるが、完成度はとても高い」

・・・など賛否両論で物議を醸してます。因みに今回のハリウッド版「GODZILLA」は、1998年に公開されたローランド・エメリッヒ監督版「GODZILLA」のはリブートと言えます。
「ゴジラ・シリーズ」の大ファンとして有名なヤン・デ・ボン監督や、日本特撮大ファンのティム・バートン監督が降板した後、「インディペンデンスデイ(1996)」の撮影直後に新作映画を企画中、半ば強引に監督を引き受けさせられたローランド・エメリッヒ監督が描いた「1998年版・GODZILLA」。
後日、エメリッヒ監督は次のように述べています。

「製作したくなかった。東宝に断られるように、いい加減な脚本とデザインを提出した。(ゴジラが歩かずに走るなど)断られると思ったら、ゴーサインが出てしまった。」

監督自身からこのように語られる同作品は、完全に「巨大トカゲの怪物映画」でした。そのおかげ(?)で、見事に「第19回ゴールデンラズベリー賞・最低リメイク賞」を受賞しています。「最低リメイク賞」とは「この作品の為だけ」に作られた賞です。
両作品とも興行成績は良い結果に終わったのですが、「本当のゴジラを理解していない」など納得しないファンが多いのは事実で、特にエメリッヒ監督作品は、日本のみならず世界で失敗の刻印を押された「ゴジラの黒歴史」になっています。逆に、こういった議論の盛り上がりを見ると、日本の特撮コンテンツの奥の深さとファン層の厚さを改めて思い知らされます。
ところで、現在、東京六本木にある森アーツセンターギャラリーで開催中の「ティム・バートンの世界」(2014.11.1~2015.1.4)のために来日したティム・バートン監督。10月31日のオープニングイベントでは、自身が「ウルトラマン」ファンを猛アピール。「ピグモン」と「ダダ」などに囲まれ大はしゃぎ。バートン監督は「ダダ」と抱擁し、手の甲へキスまでする始末。
筆者はその様子を見ていて、

「バートン監督は『GODZILLA』の監督降板で悔いがあるのか? ハリウッド版『ウルトラマン』製作を企画し、監督を狙ってるのではないか?」

などとと、勝手な予想をしてしまいました。またしてもハリウッドに日本特撮作品を奪われてしまうのではないか、と勝手な心配をしてしまいます。
そこで、筆者は思うのです。日本の大事な特撮コンテンツという資産を海外に奪われてしまうぐらいなら、いっそ大予算の世界同時上映「ウルトラマン」は制作してはどうでしょうか?と。
「ウルトラマン」こそは、「俺が子供の頃みたウルトラマンじゃない」とは言わせない作品を日本人の手で、世界に向けて作るわけです。ハリウッド版「GODZILLA」と同規模の「100億超え予算」をかけ、世界へ向けた「ULTRA MAN」。これを「オール日本人スタッフ」と「日本人特有の特撮・技術力を駆使」して製作するのです。
「ウルトラマン」のデザインを担当された彫刻家の成田亮さんは、ウルトラマンの顔を「弥勒菩薩や能面をイメージ」して造詣されたそうです。そのせいか、仏教国であるタイなどでは、既に「ウルトラマン」が大人気です。タイ・インドネシア・インドなどのアジア圏では、ある程度興行収入は想定されるので、決して悪い勝負ではないように思います。欧米へも、ティム・バートン監督の例でもわかるように、決してその影響力は小さくありません。クールジャパンな時流に乗って、『ULTAMAN〜ZEN〜』など「いかにも欧米人が好きそうなジャパニーズ・テイスト」のサブタイトルを付けたりすることもできるでしょう。
庵野秀明氏のようなウルトラマンを愛する才能豊かな日本人監督と日本特撮技術が総力を集め、ハリウッド版「GODZILLA」と同規模の「100億超予算」をかけた「日本人によるULTRA MAN」をぜひ、世界に向けて発信して欲しいものです。
アジア・中東の富裕層の皆様。どなたか160億ほど予算出資していただけませんかね?
 
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