<高浜原発の安全審査が合格>年間2200億円のコスト負担減・関電株価は2013年10月以来の高値


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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今月12月12日付の日本経済新聞(朝刊1面)にて、「原発安全審査、高浜、年内に合格内定」と題する記事が報じられた。関西電力・高浜原子力発電所について次のように書いている。

「再稼働に向けて原子力規制委員会による原発の安全審査の合格内定を年内に得られる見通しになった」

東日本大震災による東京電力・福島第一原発事故の発生以降、日本国内の全ての原発が停止したままだ。それに伴う火力燃料費の負担増で、関電は今年3月期まで3期連続の最終赤字。

関電は、昨年春に料金を値上げした。値上げ幅は、家庭向けで9.75%、産業向けで17.26%。これは、大飯原発や高浜原発の再稼働を前提としているのだが、いずれも稼働できない状態が続いているため、その後も赤字が続いている。

この状態が今後も続くと、再び料金を値上げしなければならなくなるだろう。関電が再値上げをする可能性に関する報道は後を絶たない。そうした報道が何度もなされてきていること自体、原発停止継続による関電の経営状況は深刻だ。

冒頭の日経新聞報道にあるように、原子力規制委員会の安全審査について年内に合格が内定したとしても、実際に高浜原発が再稼働するのは、諸手続などの期間を勘案すると、最も早くて年度明けの4月であろう。高浜原発再稼働だけでは黒字転換は望めないし、大飯原発再稼働も未知数だ。再値上げが完全に回避できるかどうかはまだわからない。

とは言え、日経新聞報道の旨は関西の経済・社会にとっても、本当に久々の朗報だ。株式市場も好感し、関電の株価は2013年10月以来の高値を付けた。株価が高値を付けるということは、株主が利益を得ることはもちろん、投資対象である事業者の経営状況が良好であること、或いは好転することへの投資家の好感を示す。

おカネを出そうという人に好感を持たれることは大事なことだ。それによって経済が回ることに繋がる。経済が回れば社会も潤う。こんな当たり前のことが、原発問題の前では忘れ去られてしまいがちだ。

“原発稼働=危険、原発停止=安全”という奇妙な風説が蔓延しているからであろう。

しかし、実際はそうではない。福島第一原発事故は、原子炉が停止している時に大津波に襲われたことで起こった事故であり、稼働中の事故ではない。重要なことは、稼働(発電)しているか停止しているかではない。核燃料の管理なのだ。この辺りのことは、今後とも政府はこれまで以上に丁寧に説明していくべきだ。

ところで、高浜原発が来年(2015年)4月に再稼働した場合、関電の経済・社会にとってどのような効果があるのか、試算してみた。高浜原発が稼働することによって、原発停止の代替としなっている火力燃料費などの重いコスト負担をどのくらい軽減できるか、ということだ。

詳細は省くが、関電の公表資料・データを基にすると、2015年度は年間2200億円のコスト負担減、2016年度以降は年間平均1800億円~2000億円のコスト負担減と概ね試算された。これは、いわば『再稼働効果』であり、海外資源国への流出を止めて国内で循環させることのできる『国富』そのもの。

他の原発についても、早期の発電再開が切に望まれる。規制委による審査と同時並行での再稼働を進めていくべきだ。一つの事故のために全てのプラントを停止させているというのは何とも変なことであり、米国や旧ソ連が経験した原発事故後の処理でも、事故プラント以外の原発は稼働していた。

リスクとコストを合理的に勘案した原発運営に即刻転換していく必要がある。原発停止による1年当たり3兆7000億円、1日当たり100億円、1時間当たり4億円の“国富ダダ漏れ”を早く止血すべきだ。それこそが政治の役割である。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。