<問題を指摘することは営業妨害>バラエティのタレントの愚かさを「笑ってあげないこと」は、彼らから食い扶持を奪うに等しい


高橋維新[弁護士]

 

「重盛さと美のバカはかわいそうで笑えない」と母が言っていた。

だが、この母もよゐこ・濱口優のバカは腹を抱えて笑っていたので、重盛は笑えないというのは単なる感傷でしかない。2人ともプロでバカをやっているのだから、笑ってあげるのが正しい。

彼らが「笑ってくれ」と胸襟を開いて自分のバカをひけらかしているのに、それを笑ってあげないのは、彼らから食い扶持を奪うに等しい。ちょうど「小人プロレス」が「不謹慎」と排撃され、ミゼットレスラーたちが仕事を奪われたとの同じ構造である。

とはいえ、逆の見方をすれば、彼らはプロなのだから、お客さんを笑わせなければダメなのである。お客さんに笑ってもらうべき場面で「かわいそう」と思わせてしまったらプロ失格なのである。そういう意味では、やはり第一次的に悪いのは母ではなく、重盛である。

重盛は、初めて受験した「めちゃイケ」のテスト企画で見事ビリになったのだが、画面上で泣いてしまった。重盛が小さな女性であることと相俟って、視聴者に「この子を笑うのはかわいそうである」という感情を呼び起こしてしまった。

重盛は、泣いては駄目だった。「めちゃイケ」も、これをそのまんま放映しない方が良かった。重盛を愛しているなら、編集してカットしてやるべきだった。

ただ、重盛のバカを笑うことに関しては、重盛のプロ意識だけではどうしようもない問題がある。

重盛の間違いを見ていると、アルファベットや漢字の書き間違いが非常に多い。彼女が書く「間違い」の字には、見たことのないようなパーツをよく見る。間違いの種類も、その種の書き間違いが主であり、ワンパターンである。

筆者は専門家でないし、重盛がこれまでどのような人生を送ってきたかを知っているわけではないので、あくまで印象でしかないが、彼女はどうにも識字障害であるという印象を受ける(実際のところは、彼女の成育歴を見なければ判断はできない。また、最終的な「診断」が下せるのは医師のみである)。

この印象については、母と意見が一致した。

識字障害というのは、字を読むこと(読字)、字を書くこと(書字)あるいはその両方に困難を生じる障害のことである。程度は人によって様々である。脳のうち、文字の読み書きに使う部位が、普通の人よりうまく働かないのである。「障害」なので、基本的に治ることはない。

よく勘違いされるが、別に知能が低いわけではない。つまり、バカではない。字の読み書きが苦手なだけである。同じ内容を音にして耳から聞けば、普通に理解することができる。エジソンやアインシュタインなんかも識字障害だったのではと言われているくらいである。決してバカではないのである。

ただ、文字の読み書きが苦手なので、国語や英語の授業で教科書を読ませると間違いやつっかえが頻繁に生じる。漢字テストや英単語テストでもうまいこと点がとれない。だから、バカ扱いされやすい。

どう対処するか。周りが理解して配慮するしかない。治ることはないが、訓練で読み書きの能力が改善される例もあるようである。文字を色分けして読みやすくしたり、文字で書かれているものを音声で読み上げるソフトを用いるといった対処法も現在は発明されているようである。

もうひとつの対処法は、笑ってもらうということである。識字障害によって生じるおもしろい読み間違いや書き間違いを、笑ってもらうという道である。チビやデブやブスと一緒で、自分の欠点を笑ってもらうのである。

識字障害という欠点を、逆転の発想で「長所」とすることになるため、欠点を欠点として受け止めたうえで配慮するという一つ目の対処法よりは、大分ポジティブである。

こちらの道をとる場合、自分の欠点を笑ってもらう必要があるので、かわいそうと思われてはいけない。不謹慎と思われてもいけない。

かわいそうだと思われてはいけないから、自分のバカをバカにされても泣いてはいけない。ムッとしてもいけない。ヘラヘラするかキレて開き直るかにならないといけない。

不謹慎だと思われてもいけないから、自分が識字障害であるということをはっきりさせてはいけない。診断を受けてはいけない。「障害」という名前が付いた瞬間に、日本人は身構えてしまう。「障害」者を笑うことをためらってしまう。彼らを笑うことを「不謹慎」と排撃してしまう。これは、彼らも望まない道である。だから、重盛は、「原因はよく分からないけどなんとなくバカ」というふわふわした状態のまま、テレビに出続けることである。

テレビを見ていると、「ちゃんとした診察を受ければ、何らかの障害や傷病の診断を受けそうだ」という人は他にもいる。ジミーちゃんとか、ウドとか、鈴木奈々とかもそうである。でも彼らはその「欠点」を笑ってもらう道を選んだのである。ならば、笑ってやればよい。それを不謹慎だと排撃することはない。

まあこうやって、傷病や障害の可能性を指摘しまうことすら、彼らにとっては営業妨害なのだが。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。