<絶不調フジテレビの起死回生なるか>月9『デート~恋とはどんなものかしら~』をこう考える。

テレビ

黒田麻衣子[国語教師(専門・平安文学)]× 岩崎未都里[学芸員・美術教諭]

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メディアゴン執筆陣の中でも、1、2のテレビドラマ好きである黒田麻衣子さんと岩崎未都里さん。30代半ば〜アラフォー世代という「妙齢」な2人が、恋愛ドラマについて、妙齢だからこそ語りを対談形式で御届けします。(メディアゴン編集部)・・・前回(「東京ラブストーリー」をSNS時代にリメイクしたらどうなる?

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1月19日(月)から始まる今クールの「月9」は、フジテレビ『デート~恋とはどんなものかしら~』。結婚を相手との「契約」ととらえるような、徹底的に効率を重視する超合理主義者の依子(杏)が、結婚相談所で出会った相手は経歴詐称の巧(長谷川博己)と織りなすロマンチック・ラブコメディだそうだ。 このドラマの存在を知る何ヶ月も前に、メディアゴン執筆陣の黒田麻衣子(徳島テレビ祭スタッフ)と 岩崎未都里(ブロガー)は、こんな会話をしていた。

岩崎:条件掲げるもの同士で結婚しちゃうとか、おもしろくないですか? なんかもう、そこに自分の結婚願望が行き着いてる、みたいな。

黒田:条件同士で結婚させてドラマにするの?

岩崎:それがね、おもしろおかしく結構うまく行きましたっていう話にしちゃうの。けっこう、もう、好きなことをさしてくれる。

黒田:えー、それは夢がないじゃん!ドラマをつくっても。

岩崎:だから、最初は条件だったけど、実際に結婚してみればけっこう、「なんだー、結婚してから始まるってこともあるんだー」っていうのがあってもいいじゃん。結婚してから恋愛するっていうのが昔のお見合いですよね? そういう感じ。私の両親はそうでした。お見合い結婚してから恋愛が始まったんですよ。

黒田:まあ、恋愛はね、社会学的に言うと妄想だっていうふうに言われてますからね。

岩崎:まあ、幻覚ですもんね、そもそも。まあ、けど、それ言ったら、恋愛ドラマは作れなくなっちゃう・・・

黒田:そう、だから恋愛ドラマはやっぱり、大妄想しないといけないんだよ。「恋愛ドラマ」って言って私が「いちばん良かったもの」って言って出てくるのは、やっぱり『ビューティフルライフ』なのよね。なんで良かったかって言ったら、ラストシーンがすっごいよかったのね。あれは、女の子が死んじゃうけど、最後がハッピーエンドな気持ちで終われたのよ。

岩崎:同じキムタクドラマでも、『空から降る一億の星』とはぜんぜん違ったねっていう。

黒田:そうそうそう。

岩崎:『空から~』はちょっと、脚本の北川さんが、野島さん脚本に憧れたのかなっていうラストだったよね。悲劇で終わる、みたいな。その点、(脚本は『空から~』と同じ北川悦吏子さんだけど)『ビューティフルライフ』のエンディングは女の子の夢ですよね。男性はどう思ってるかわかんないけど。

黒田:夢っていうか、幸せな気持ちで終われたんですよ。

岩崎:女性はね、でも、男性から見たらどうなんだろう? 男性は見ないのかな?

黒田:そんなことないですよ。私の周りの男性はけっこう見てましたよ。『ロンバケ(ロングバケーション)』『ラブジェネ(ラブジェネレーション)』『ビューティフルライフ』は男性も見てますよ。で、『ロンバケ』って、今の高校生・大学生たちが、生まれる前にできてるんですね。だから、今の子達は、知らない世代のハズなんだけど、けっこう知ってるの、『ロンバケ』って。けっこう見てるんですよ。

岩崎:あ、それって、私たちが「『東京ラブストーリー』見てないでしょ」って先輩や先生から言われたのと似てる気がします。

黒田:いや、だって、今の若い子たちって、平成生まれだよ? 平成元年生まれが、もう、26歳なんだから。リアルタイムで観てるわけがない。再放送で見てるんだよ。

岩崎:それでも響くんだ?

黒田:そう! で、「あれは先生、名作だった」って大学生とかが言うんです。みんな。「あれは先生、よかったよ」って。「キムタクって昔、あんなカッコよかったんだ?」って。で、まあ『ロンバケ』はもういいとして、自分たちが見てて幸せになれるドラマってなんだったっけってずっと考えてて、パッと思い浮かぶのは、『ビューティフルライフ』だなって思ったの。結局、恋愛ドラマって、ハッピーエンドで終わることはあっても、ドラマとして成立させるためには山在り谷在りなわけだから、けっこう、真ん中ぐらいの中盤のところって、不幸せな時期が続くんですよね。うまく行かなくてすれ違って、とか、三角関係とか。そうすると、トータルで「幸せなドラマだったな」みたいな感覚がないんですね。でも『ビューティフルライフ』は、もう女の子が最初から死ぬことがわかってるわけじゃないですか?

岩崎:添い遂げる、だからね。三角関係じゃないからね。

黒田:そうなんですよ。悲劇に向かって走って行っているはずなのに、ずーっとね、幸せなの。ずーっと幸せだから、トータルで「幸せ」だったの。三角関係を使ってないから。あれはね、お兄ちゃんだったりとか、お母さんだったりとかが、「あなたみたいな人がうちの子をそそのかさないでください」みたいな、そっちの方の障害であって、女の子の方も「私死んじゃうから。これ以上あなたと居るとお互い辛くなるから。悲しい思いさせたくないから」っていう、そういうすれ違いなの。

岩崎:あのドラマは、ラストまでずーっとお互いをわかり合おうとしてたお話だよね。

黒田:だから『ビューティフルライフ』には、他の恋愛ドラマと違って悪い人が出てこないんですよ。『1リットルの涙』もそうなんですよ。

岩崎:その場合、それは、やっぱり、どちらかが死なないと成立しないのかな? 死なないでやるには、どうしたらいい?

黒田:死なないでやるのは難しいですよね。人が死ぬことで、幸せをつくるのって、ちょっと違うと思うんですけど、でも、けっきょく、幸せだったな、って感じる恋愛ドラマってなんだった?ってやっぱり、『1リットルの涙』とか『ビューティフルライフ』とかになるんですよ。死に向かって走っていってるんだけど、だからそこに盛り上がりがあって、純愛がそこに在ってしまうんだよね。純愛が成立しちゃうんだよ。でも、ふつうの恋愛ドラマだったら、紆余曲折がないとドラマとして成立しないじゃん。だから、そこに三角関係とかできて、悪い人が出て来たりするわけだよ。

岩崎:悪い人ねー。私、『29歳のクリスマス』って今見ても好きなドラマなんだけど、あれは、悪いモノは仕事なんですよ。病気の代わりに、今度は仕事。仕事を優先するがゆえに、お別れするけれども、でもあれも、ハッピーエンドなのよ。なので私はあのドラマがけっこう好きなの。セリフとかも、当時はすごく新鮮だったけど、今また見ても、まったくおんなじ響きがするんで。

今クールの「月9」は、仕事に生きる超合理主義女性が主人公のラブコメディ-。フジ「月9」の他にも、TBSでは、ドロドロ三角関係の匂いがぷんぷんする『美しき罠~残花繚乱~』が、日テレでは奇才・遊川和彦が手がける究極のラブストーリー『〇〇妻』が、テレビ朝日では大石静による『セカンド・ラブ』が始まった。それぞれの局による珠玉のラブストーリー。 さて、どんな結末が待っていることやら。   【あわせて読みたい】