<現役弁護士が観る「最後の証人」>倉科カナの座ったままの「異議あり!」は残念…だけど次回が楽しみ


水戸重之[弁護士/吉本興業(株)監査役/湘南ベルマーレ取締役]

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上川隆也と倉科カナの弁護士コンビが殺人事件に挑む―。

柚月裕子の同名の小説(2010年)を原作とする法廷ドラマ「最後の証人」が、1月24日(土)にテレビ朝日で放送された。上川は、TBS「女はそれを許さない」に続いての弁護士役。古くは96年のNHK朝の連ドラ「ひまわり」で松嶋菜々子とコンビを組んだ司法修習生役が懐かしい。

元検察官の弁護士(いわゆる「ヤメ検」)の佐方貞人(上川隆也)は、新米弁護士の小坂千尋(倉科カナ)とともに、弁護を依頼された地方都市に向かう。依頼者は殺人事件の被告人・島津邦明(大杉漣)。島津は地元の有力者だった。

被害者は、彼と不倫関係にあった浜田美津子(紺野まひる)で、事件も密会のホテルの一室で起きた。ところが島津は無実を主張。佐方は事件の背後に何かあると直感して、弁護を引き受ける。担当検事は佐方のかつての同僚の庄司真生(松下由樹)。有罪は動かないようにみえた。有効打を出せない佐方に、いらだつ被告人・島津。ついに最終弁論の場となるが、最後の最後に美津子の夫・高瀬が証言台に立つ。

美津子は7年前に小学生の息子を自転車事故で亡くしていた。事故は、現在の不倫相手、島津の信号無視が原因であったが、島津は権力で事件をもみ消していたのだ。末期がんで余命短いことを知った美津子は、自分の命と引き換えの復讐を計画する。

島津に近づき不倫関係を結び、夫とも不仲を装い偽装離婚までして、ホテルでの密会を重ねる。そして事件の日、結婚を迫って断られ逆上したとみせかけてステーキナイフを島津に向ける。ホテルから逃げる島津。一人残った美津子は自ら心臓を一突きして果てる。すべてが悲しいシナリオどおり。島津を殺すのではなく、自分への殺人犯に仕立てて何もかも失わせるという復讐のカタチだった。

しかし、佐方は密会を隠すために、島津が閉めたはずのカーテンが開いていたことに疑問を持つ。カーテンは、窓下の川辺にいる夫の高瀬(石黒賢)に永遠の別れを告げるために美津子が開けたのだった。

島津は無罪、佐方の弁護は成功に終わる、しかし佐方は、島津に向かって「あなたは過去の交通事故事件で再捜査されることになる」と告げる。怒って詰め寄る島津に、佐方は、まっとうに裁かれるべきだ、と言う。

佐方の好敵手となる検事の庄司(松下由樹)は父親を通り魔に刺殺されるも犯人は心神耗弱で無罪になるという過去があった。佐方もまた、同僚検事の司法修習生への強姦事件が検察の組織防衛のためにもみ消されたことに憤り、検事を辞めたのだった。まっすぐな正義と、屈折した正義のぶつかり合い。

新米弁護士・千尋役の倉科カナはNHK朝ドラ「ウェルかめ」主演後しばらくは目立ったドラマがなかったが、最近ではNHK「ダークスーツ」、フジテレビ「ファーストクラス」、同「残念な夫。」と着実に重要な役を手にしている。筆者は、朝ドラ出演前の「NHK土曜スタジオパーク」でサブMCを務めていたときの倉科をスタジオで見かけたが、美少女ぶりは際立っていた。

ただ、千尋が手を挙げて「異議あり!」と言うシーン(何度かあった)で、座ったままだったのは少々残念。裁判官と話すときは起立するのが昔からの実務の慣習だからだ。筆者も座ったまま裁判官に応えたら、裁判官から苛立ったように「立って」と促された経験がある。

「罪はまっとうに裁かれるべき」という佐方の信条は、つまりは「量刑の思想」にも通じる。「犯した罪の重さ/軽さに応じた重さ/軽さの刑を、社会的制裁を」。世論やメディアが忘れがちなバランスの追及がそこにはある。

元検事であり弁護士でもある佐方貞人の正義のバランスがどこにあるのか。次回作が楽しみである。

 

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水戸重之

水戸重之(みと・しげゆき)弁護士として、映画、音楽、放送、芸能界、スポーツ関連の仕事を25年にわたって続けている。吉本興業(株)監査役、湘南ベルマーレ取締役。早稲田、慶応、筑波の各大学で教壇に立つ。日本人メジャーリーガーの日本側代理人を務める(石井一久、高津臣吾、齋籐隆、福留康介、黒田博樹、川上憲伸、青木宣親、田澤純一他)