<怒れる女たちの名演合戦>高畑充希と松岡茉優が注目のフジテレビ「問題のあるレストラン」


水戸重之[弁護士/吉本興業(株)監査役/湘南ベルマーレ取締役]

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「怒れるすべての女性たちへ」

そんな謳い文句で始まった、フジテレビ木曜劇場「問題のあるレストラン」(木曜22時)が面白くなってきた。

セクハラ・パワハラがまかりとおる男社会の飲食企業で理不尽な目に遭った主人公・たま子(真木よう子)が、問題を抱えた女性たちとレストラン「ビストロ フー」を開店し、隣にあるレストランの男たちに勝負を挑む。「東京ラブストーリー」や「最高の離婚」の坂元裕二が脚本を担当。

タイトルは、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を思わせる。いっそ、「問題の多い料理人」にすればよかったのに、どこからかクレームがつくのを心配したのかな。「問題のあるレストラン」とは平凡すぎるタイトルである。だが、女優陣の演技は平凡ではない。

まず、主演の真木よう子のコメディエンヌぶりが見ものだ。クールビューティーが魅力な彼女ではあるが、運命の女神の前髪を逃すまい、とでもいうように、元気印で前向きな女店主の役を掴んだ。

注目は、高畑充希(みつき)と松岡茉優。

高畑充希の名を一躍知らしめたのは、NHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」での西門希子役だ。超保守的な家風に育ち自己をもたない少女から、快活な義姉・め以子(杏)の影響で自我に目覚め、客寄せのために街頭で唄まで披露するようになり、やがてラジオ局のアナウンサーにまで成長する役を、変幻自在に演じた。

その歌声は、CMの「酔わな、酔わないウメッシュ♪」でも聞くことができた。

その高畑演じる藍里は、「オンナノコ」をウリにする「女に嫌われる女」。男たちの間を軽やかに生き抜いているようにみえるが、やがて、まじめな同僚に気があると誤解される。

第5話の高畑の演技は圧巻であった。付き合い始めたと勘違いした同僚につきまとわれて行き場を失い、たま子のアパートに転がり込む。そんな状況でも、藍里はまだ、レストランの経営難に悩む女性陣を前に、強気の持論を展開する。「みんな水着を着て接客すればいい」と言う。

「え・・? 何でみなさん、水着着ないんですか? 私、いつも、心に水着着てますよ。」

あっけにとられるレストランの女性陣。

「お尻とか触られても全然何にも言わないですよ。 <おしり触られても何にも感じない教習所>、卒業したんで。<やらせろー、とかいわれても笑ってごまかせる教習所>も出ました。 免許証、お財布にパンパン入ってます。」

藍里がまくしたてる。誰にも止められない。

「どうしてしずかちゃんはいつも、ダメな男と偉そうな金持ちの男と暴力振るう男とばかり仲よくしているかわかりますか? どうしていつもお風呂場のぞかれてもすぐに機嫌直すかわかりますか? どうして女友達がいないかわかりますか? 彼女も免許証、いっぱい持ってるんだと思います。」

坂元裕二の台本と高畑充希の才能がコラボしたキセキの場面。話し続けながら心の中で泣いている藍里を、じっと見つめるたま子。こんなときの真木よう子の視線は最強だ。

たま子が藍里を遮って言う。

「触らせちゃダメ。あなたの身体は、髪も胸もおしりも全部あなただけのものなんだから。ここにも、ここにも、ここにも、心が詰まってるんだよ。」

何でそんなに上から目線なんですか、と毒づいて、たま子のアパートを飛び出す藍里。

その後、勘違いした同僚から、バレンタインデーに大げさな演出の愛の告白を受ける。思わず「・・・気持ち悪いです。気持ち悪さ・・しかないです」と言ってしまい、男から顔面を殴られる。以前の藍里であれば、うまく乗り切れたかもしれない。たま子の言葉で何かが変わった藍里は、殴られる方を選んだのだ。

もう一人の注目株・松岡茉優は、隣のライバル店の社長の娘・雨木千佳役。父に反発し、純粋に料理の道を究めようとする。対人恐怖症でパーカーのフードをかぶって顔を見せない回が続いていたが、徐々に仲間たちのおかげで心を開いていく。やがて、隣の店のシェフの門司誠人(東出昌大)に言われた一言で料理人魂に火がつき、東京に残ってシェフとしてやっていく決意をする。

「爆笑問題」の太田光は、「桐島、部活やめるってよ」の松岡茉優を観て、「一人だけバケモノみたいに上手い子が出てましたよ。やけに上手いの。上手すぎて、浮いちゃってるの」とラジオで興奮気味に絶賛した。

その後も「あまちゃん」、「齋藤さん2」、「GTO」でアイドル、優等生、ヤンキーママまで幅広く演じ、「めざせ!2020年のオリンピアン」、「うつけもん」、「オサレもん」といったバラエティのMCまで務め、まだ20歳ながら「実力派」の地位を確立している。

第7話は、そんな松岡がついにフードを、いや、ベールをぬいで、本領を見せ始めた回だった。が、彼女の実力はこんなものではない。残りの回で、先に飛び出した高畑充希を追い越し、昨年日本アカデミー賞最優秀主演女優賞・助演女優賞のダブル受賞をした真木よう子を食ってしまうような爆発が見られるか。大いに期待したい。

ほかにも、今年の日本アカデミー賞主演女優賞(最優秀こそ逃したが)の二階堂ふみが控えている。はたして、真木、高畑、松岡を刺し返すのか。

脚本が「食材」だとすれば、役者の演技は「料理」。この多彩なドラマ料理人の集まるレストランは、さしずめ「名演の多い料理店」である。

 

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水戸重之

水戸重之(みと・しげゆき)弁護士として、映画、音楽、放送、芸能界、スポーツ関連の仕事を25年にわたって続けている。吉本興業(株)監査役、湘南ベルマーレ取締役。早稲田、慶応、筑波の各大学で教壇に立つ。日本人メジャーリーガーの日本側代理人を務める(石井一久、高津臣吾、齋籐隆、福留康介、黒田博樹、川上憲伸、青木宣親、田澤純一他)