「ポカリスエット」の母娘CMが優れている2つの理由と1つの欠点

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事
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スポーツドリンク「ポカリスエット」(大塚製薬)のCMが面白い。優れている。
「洗たくもの編」は以下の様なものである。

乾してあるシーツをバックに並んでいる若い母と1年生くらいの娘が、カメラに向かって話しかける。

母「母です」

娘「子です」

母「えぇ…」

娘「冬は洗濯物が」

母「よく乾きます」

娘「お母さんも」

母(失笑)「よく乾きます…」

母「あっ ポカリのまなきゃ!」

(間)

娘「ポカリのまなきゃ」

二人が画面の外に走り去っていく。
(ナレーション)冬のカラカラにポカリスエット♪

このCMのどこが優れているか?
まず、2ショットのまま同じサイズで、ずうーっと引きで撮っていることである。CMプランナーとしてはこれは、父親が妻と娘を撮っているという設定でスポンサーにプレゼンして、「ああ、それはいいね」という同意を得たのだと思うが、実は、この作品は、父が撮っているんだということを感じさせなくなってしまっていることが優れている。
なぜ、それを感じないか?
素人が撮ると、「より」「引き」してしまうものだからである。FIX(固定)が、撮影の基本で、FIX(固定)がどれほどの情報を持ってくれるかをわからせてくれる。
もうひとつ優れているのは二人の女優である。こういうのはTake1(第一回目の本番)が、一番いいものだが、Take1を使っているのだろうか。もし、これが一発OKの映像だとしたら、この2人の女優は素晴らしい力を持っている。
女優は母役・吉田羊(よしだよう)、娘役・鈴木梨央(すずきりお)。1974年生まれと、2005年生まれ、41歳と10歳の母娘である。
もちろんこのCMには欠点もある。
このCMの欠点は、最後のナレーションと商品を飲むカット「冬のカラカラにポカリスエット♪」である。最近のCMはみなそうだが、スポンサーがそういうのか、クリエイターが自信がないのか、最後に余計なワンカットをつける。
これがない方が、商品のことを訴えてくるということに気づいていないのは残念なことだ。
 
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