<森友学園問題>「アベ友事案」参考人招致で野党に妥協の余地なし – 植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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いま日本の政治における最大の焦点は「アベ友事案」=国有地不正払下げ疑惑事案である。国有地の譲渡は適正な対価を持って行わなければならない。

ところが、当該国有地事案においては、鑑定評価額が低く算定され、その上で、埋設物処理費用が過大に見積もられ、法外に低い価格で払い下げが行われている。財政法に違反する疑いの濃い事案である。

また、森友学園は建設費の補助金を申請するに際して、過大な建設費用を書類に記載し、補助金を詐取した疑いがある。届けられている経歴についても、詐称の疑いが生じている。教育内容、学校運営においても、法令違反の疑いが生じている。

財務省は国有財産の処分にかかる重要な経緯を記載した行政文書について、当該事案発生から1年も経過していないにもかかわらず、行政文書を破棄したとしている。

国有資産が不当に低い価格で払い下げられた疑いが強い事案であり、真相を究明するには、当事者を参考人として招致するのが適正である。ところが、安倍政権が参考人招致を拒否している。野党は、参考人招致を実現するために、全力を注ぐべきだ。真相を解明するには関係者の供述を得ることが不可欠であり、安倍自民党があらぬ疑いを晴らしたいと考えるなら、参考人招致は、まさに渡りに船のはずである。

それなのに、安倍首相が参考人招致を拒絶するのはおかしい。籠池泰典氏が参考人として国会に招致され、事実を話されると困るから参考人招致を拒絶しているとしか考えようがない。そうであるなら、なおさら、籠池氏の参考人招致を必ず実現しなければならないということになる。

また、2015年9月5日に、安倍昭恵氏が森友学園が運営する塚本幼稚園を訪問し、講演を行った際、安倍昭恵氏の秘書として配属されている公務員が同行していたことが判明している。政府は、この公務員が私的な立場で同行したと伝えていたが、そうではなく、「公務」として同行していたと、説明を変更した。公務員が公務で同伴して行われた安倍昭恵氏の塚本幼稚園での講演は、完全に私的な行動とは言えなくなった。

この講演の際に、安倍昭恵氏は新設される瑞穂の國記念小學院の名誉校長として紹介を受けている。そして、その点について、講演中も否定していない。籠池泰典氏は民間人であるが、公金詐取の疑いも表面化しており、国会が参考人招致して事実関係を聞くことは当然のことである。

野党は主権者の声を背中に受けて、不退転の決意で進むべきだ。世論調査の好きなメディアは、なぜこの問題で世論調査を繰り返さないのか。

2009年から2010年にかけて創作された、西松事件、陸山会事件という、わが国刑事事案史上、最悪、最低な卑劣な冤罪事案においては、メディアが毎日のように世論調査結果なるものを流布して小沢一郎氏に対する攻撃を展開した。その百分の一でも、世論調査を行うべきだろう。

政権に不都合な事案が表面化すると、必ずと言っていいほど、北朝鮮がミサイルなどを飛ばす。NHKはこれにかこつけて、アベ友事案に関する報道時間を一気に削減しているが、日本の主権者国民は、この、問題に関しては、メディアの隠蔽工作に呑み込まれてはならない。

野党は強硬に参考人招致を求めるべきである。その行動の正当性は、主権者国民の支持にある。

財務省は財政危機を訴えて消費税大増税を強行推進してきた。その財務省が、国民資産である国有地の売却に際して、極めて杜撰(ずさん)な方法で巨額値引き販売をしたのである。有害物質の除去については、すでに1億3000万円以上の国費を投入して2015年に処理が終了している。

この工事費用を国が1億3000万円以上も支払っているが、この支払いが適正であったのかどうかについても疑惑が存在する。有害物質の処理はすでに完了しているなかで、地中深くにゴミが存在したとしても、不動産売却に際して巨額値引きの根拠にはならないはずである。

この手続きに重大な瑕疵(かし)がある。その瑕疵によって国に巨大な損失を与えた可能性があり、当時の国の関係者の行動も違法なものであった疑いが存在する。

メディアがこの問題を適正に報道しないなら、野党は結束して「審議拒否」を含む強い姿勢を示すべきだ。国会審議が滞っている理由が、安倍政権与党の参考人招致拒否にあることが主権者に伝われば、参考人招致を求める世論はさらに沸騰するはずである。

このような問題でこそ、徹底抗戦の姿勢を示すべきなのだ。

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