「消えた年金」「漏れた年金」いよいよ今度は「出さない年金」

社会・メディア

山口道宏[ジャーナリスト/星槎大学教授/日本ペンクラブ会員]

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成果をあげることなく「外交だ」「外交だ」「外交だ」と海外へ出かけ、あちこちでお金をバラまき続ける安倍政治だ。

昨秋には、こんな話題も。「(我が国の)年金資金と北方領土返還をバーターする気だった」(ロシア交渉)というもので、安倍政治の貢物外交は国内外で有名だから、そうした「噂」もさもありなんか。

我が国が在日米軍関係費の「思いやり予算」で年間2000億円(基地周辺対策費、施設借料など含めると7000億円という驚愕の数字も)を無償提供していることは広く知られる。さらに安倍政治はトランプ大統領の娘の来日時に「女性活躍」の名目で57億円を「あげちゃう」ほど気前がいい。こうして関係国にいい顔をするのは安倍政治の真骨頂だが、こちらはすべてが血税だ。

年金受給者4000万人の「命の金」を、国は支払額の減額、支払い開始時期の先延ばしなど着手の一方で、年金保険料200兆円を貯め込んでいることは周知の事実。にもかかわらず、その「積立金」を管理する「GPIF」(年金積立金管理運用独立法人)がなす株取引の運用では、2018年10月から12月のわずか2ケ月で損失額はなんと15兆円!! と発覚した。国民の浄財が国民の知らぬ間に外国株に入れ込んでいた。これは見えない国家犯罪ではないか!!

【参考】<棄てられた年金>国が「年金」を原資に株式投資で10兆円の損失

さすがの会計検査院も重い腰を上げ、そのリスクを指摘するとともに「基本ポートフォリオ」(運用資産の割合)の策定過程を公開されたい、と注文を付けている。たとえ満額でも老齢基礎年金は78万100円だから月額にすればわずかに6.5万円だ。年金の切り下げから多くの「下流老人」「老後貧困」が生まれる裏側で、公金である預かり金の「使い放題」「やりたい放題」が国策の下で堂々となされている。

さて、再びの年金行政の不祥事だ。今度は「厚生年金156万人の加入漏れ」(厚生年金加入資格があるも国民年金のままの状態)が判明した。「消えた年金」(2007年・5000万件)「漏れた年金」(2015年・200万件)の後始末も済んでいないというのに。

さらに、「在職老齢年金の廃止」を企てる政府・与党は、いよいよ国民の年金を「出さない」という魂胆だ。もともと年金だけでは足りないから高齢になり減額になっても働くというのに、その年金の一部支給をもなくすという。理由は「就労の後押し」というが、本音は「人手解消のため(働け)」「年金支出の抑制」。だから、「働き方改革」も怪しい。国はこんな支給先送りの手口で、予定する年金を受け取れないまま、ひとが死ぬのを待つかのようだ。年金の主体者は誰か!! 政治家や官僚は、ひとの「命の金」をもてあそぶな。これもまた、国家犯罪の続編だ。

 

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