アベノミクス完全失敗を伝えないNHK「御用放送」-植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]
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NHK「日曜討論」が都議選が告示されて選挙戦に突入したことを受けて、安倍政権を宣伝するプロパガンダ番組を編成した。番組タイトルは「“戦後3番目の景気回復”日本経済をどう見るか 」
番組編成の狙いは「戦後3番目」をアピールすることである。「戦後3番目」とは、「今の景気回復はバブル期を抜いて戦後3番目の長さ」という意味だそうだが、景気回復の時間的な長さを比べても何の意味もない。日本経済は戦後最悪の長期低迷に苦しんでいるのである。
経済成長を示す経済指標は実質経済成長率だが、2012年第4四半期にスタートした第2次安倍政権および第3次安倍政権下の実質GDP成長率平均値は+1.3%に過ぎない。
直前の民主党政権時代の日本経済の低迷振りがよく知られているが、民主党政権下の2009年第4四半期から2012年第3四半期の実質GDP成長率平均値は+1.8%である。
つまり、2012年12月に発足した第2次安倍政権および第3次安倍政権下の日本の実質GDP成長率平均値は、あの、極めて低迷していた民主党政権下の実質GDP成長率をはるかに下回る最悪のものなのである。
直近5四半期連続で実質GDP成長率がプラスになったと安倍政権は自慢するが、直近3四半期の国内需要成長率は-0.1% -0.0% +0.1%(いずれも季節調整後前期比)であり、国内需要はまったく増加していない。
安倍首相は国会で、○○のひとつ覚えのように、「失業率が下がった」「有効求人倍率が上がった」と叫ぶが、単に働く人数が増えただけのことだ。国民生活にとって、何よりも大事なことは、所得が増えているのかどうかということだ。
労働者の実質賃金の推移を見ると、第2次安倍政権発足後も、労働者の実質賃金指数は低下の一途をたどってきた。安倍政権下での日本経済は、まったく良くなっていない。経済政策は完全に失敗に終わっているのである。
実質賃金指数の推移を見ると、2016年の実質賃金指数は小幅プラスに転じた。安倍首相はこれを自慢することがあるが、とんでもない話である。2016年の実質賃金指数が小幅プラスに転じた理由は、アベノミクスの失敗に原因がある。アベノミクスは「インフレ誘導」の旗を掲げた。
日銀副総裁に就任した岩田規久男氏などは、2013年4月に副総裁に就任する際、「2年後にインフレ率2%を達成できなければ、辞職して責任を取る」と国会で明言したが、インフレ率2%達成に失敗して、4年経っても、まだ副総裁の椅子にしがみついている。
そのインフレ率が2016年に大幅マイナスに転落した。完全に「デフレに回帰」したのである。「デフレに回帰」すると、名目賃金がまったく増えなくても、実質賃金の伸び率がプラスに転じる。物価下落分だけ、実質所得が増えるからだ。
2016年に実質賃金がプラスに転じたのは、安倍政権がアベノミクスで掲げたインフレ誘導に失敗し、デフレに回帰したために生じた現象なのである。
これを安倍首相が自慢するのは、安倍首相が完全に経済分析音痴であることを意味している。安倍政権の経済政策は最低であり、日本経済のパフォーマンスも最低である。インフレ率は再びプラスに転じて、2017年入り後、実質賃金指数前年比はマイナス基調で推移している。
日本経済は戦後最悪の状況を続けているというのが、客観的に正しい指摘であり、NHK放送はまさに、選挙応援の大本営報道でしかない。

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