<国会議事堂が泣いている>自民党議員が参院議長を怒鳴りつける 恥ずかしさ

政治経済

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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いま日本で一番エライ人は誰でしょう? 三権分立の日本では、公職上のポジションなら三権の長でしょう。行政では安倍晋三内閣総理大臣、司法では大谷真人最高裁判所長官、立法では大島理森衆議院議長と伊達忠一参議院議長です。

事もあろうに、その三権の長に面前で暴言を繰り返した国会議員がいます。大家敏志・自民党参議院国会運営委員会理事・51歳 福岡選出 麻生派、です。

12月7日、参議院本会議、自由党の森ゆうこ議員は異例の動議で時間制限された15分を越えて演説を続けていました。伊達忠一議長の再三の注意にもかかわらず森氏が演説を続けたことに激高した大塚理事は、議長席横で野党理事と小競り合いの中、議長席に座る伊達議長に目を剥きいきり立ちました。

『判断しろ!速く!』
『判断しろ!』
『判断しろ!』

と少なくとも3回、伊達参院議長を怒鳴りつけ、三権の長に向かって命令しました。これほどの非礼なら伊達議長は厳しく毅然とした対応をしなければなりません。ところが大家議員は野党議員を小突いたことは謝罪しても、伊達議長への暴言はスルー。後日、麻生副総理はこの大家議員を擁護したというのですから、もう呆然です。

しかし、問題はこの大家議員だけではありません。一議員に面罵されても伊達議長はこの大塚議員を注意するでもなく、森ゆうこ議員には再三の注意をします。

『森くん、簡単に願います』から、『発言を禁止せざるを得ない』とトーンを上げ、『発言を止めなさい!』とさらに声高になり、『連れて行けって!』そしてとうとう、『やめさせて連れて行けっちゅうの!』と言い出します。所定時間を越えて演説を続ける議員に注意を与えるのは当然としても、国権の最高機関、唯一の立法機関、言論の府で、議長が議員を『連れて行けっちゅうの!』と言い出すとは。この三権の長には権威も見識も品位もありません。

そう言えば、この伊達忠一参院議長は就任時になぜこの人が議長かと問題になり、自民党内からも「議長を誰にでもできるポストにするのなら、参院の存在感が低下する」とまで言われた方でした。なるほど人望うすく、議員は議場でやり放題、まさに本会議場は学級崩壊状態です。委員会審議もデタラメなのに大島衆院議長ほどの憂慮を示すことすらなく、参議院は恥ずかしいほどにぼろぼろでした。

参議院だけではありません。安倍総理は会合でニタニタと笑いを浮かべながら、『時差ボケがきつい中、明日はヤヤコシイ質問に答えてきます』と国会を茶化します。総理がいかに国会を軽く見ているかの証左でしょう。

その国会審議で、総理は技能実習制度で来日した外国人69人の死亡例データについて、

『私は初めて聞いたのでお答えしようがない』

と突き放しました。69の死には責任の一端が総理にあるかもしれないのに、亡くなった方への思いやりのかけらも見えない発言でした。国会に示された失踪技能実習生に関する調査データの扱いもひどいものです。3年間で69人の非業の死は数だけが問題なのではありません。なぜ自殺したのか、なぜ溺死者が多いのか、なぜ作業事故は起きたのか・・・。データは外国人実習生が日本で命を落とすことになった理由を知る手がかりです。しかし無視です。

【参考】<いい加減だらけで今年も暮れる>働き方改革、公選法、入管法、桜田大臣、片山大臣・・・

死者数だけではありません。多くの実習生が多額の借金を背負ってまで来日し、失踪実習生の70%近くが最低賃金以下で働かされ、中には時給100円~300円、過労死ライン越えの長時間労働、事故でケガしたら治療費自己負担で帰国命令、原発のない国の実習生が汚染土処理を強要された例もあります。

彼らには事業所を変える自由もなく、日本側悪徳ブローカーの搾取を受け続けた者も少なくありません。これなら「失踪者」ではなく日本の加害者からの「避難民」です。日本が外国人実習生にあたかも奴隷労働のような非道を強いていて、政府がその事実を示すデータを持ちながら放置しているとしたら、そんな日本の政府が恥ずかしくなりませんか。

さらにデータシートコピーを野党に渡さず、野党議員に1枚1枚手書きさせるイジメ行為もあまりにも姑息、国会での出来事として恥ずかしい限りです。国会論議の途中、安倍総理がわりとお好きなフジテレビ系FNN世論調査で、改正入管難民法を今国会で成立させることについて、賛成は約10%、反対は約80%でした。しかし今回も、安倍政権から圧倒的多数の世論は無視され、国会も無視され、法案は強引な国会運営により政権の予定通りに成立しました。
法案成立後、安倍総理は記者会見で説明しました。

『年内に政府基本方針や分野別運用方針、共生のための総合的対応策をお示しするとともに、(施行前に)政省令事項を含む法制度の全体像を国会に報告し制度の全容をお示しします』

安倍総理自らが、強行採決した改正入管難民法には、政府基本方針も分野別運用方針も共生のための総合的対応策も政省令事項を含む法制度の全体像も記されておらず、制度の全容もわからない法案であったことを平然と公言しています。来年、国会に報告されても、それは報告されるだけであって、法案は国会のチェックを受けずに、ということは国民の知らぬところで政府の好き勝手に決められ、すでに成立しているのです。これでは立法府無視、安倍行政府が事実上の立法機関になっています。

かつて安倍総理は美しい国を作るとおっしゃっていたような気がします。しかし安倍総理は日本を美しい国にする前に、平気で恥ずかしいことをする国にしてしまいました。少なくとも、もはや国会の機能は半ば崩壊し、多数を笠に着た独裁、身勝手、嘘、姑息、不見識・・・。大罪を犯した財務省の大臣は今も副総理兼財務大臣で偉そうに放言し放題。約束反故で大ちょんぼの経産大臣の減給の中身はたった11万円。外務大臣は「次の質問どうぞ」連発で世間を無視。桜田、片山・・・。そう言えば森友・加計もまだまだ。

憲政の歴史を刻んだ国会議事堂の姿は、あまりの荒れ果てように泣し、呆として立ちすくんでいるようです。

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