<水曜日のダウンタウン>ネットでダメ出しされても何一つ直さない説?

テレビ

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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4月15日(水)の『水曜日のダウンタウン』(TBS)は、どれも、興味を引く見てみたくなる説であった。

▼泥酔ロケの撮り順を逆撮りしてもなんとか成立する?

▼説教食らってる最中に後ろから笑かし検証

▼コウメ太夫にネタのダメ出しされた後輩、誰一人何一つ直さない説

すこし、業界ネタに傾きすぎていることが心配と言えば、心配である。この番組は、笑えることのみを純粋に追求している、今の時代希有な番組で、僕は尊敬している。だが、今回は、残念ながら三説とも、中途半端であった。

経験上ロケがすべて成功することは数少ない。「いわゆる撮れ高が悪い」というやつである。

こういうときに対処する方法はいくつかある。まずカンタンなのは、お蔵入りさせることである。だが、ロケに多額の予算を使っていて出来ないこともある。さらに、放送スケジュールぎりぎりで撮って居るので代替のVTRがないこともある。ヤラセの誘惑の魔の手が忍び寄ってくるのもこんな時だ。

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ロケディレクターは下請けの人も多く、つねにクビとなり合わせで仕事をしているから、こういう悪魔のささやきにはヨワイ。スタジオ収録の期日を、ましなVTRが出来るまで、先にのばすことも考えられる。が、この番組のダウンタウンのような超売れっ子をMCに使っている時は、それも不可能に近い。では、どうするのか。

▼泥酔ロケの撮り順を逆撮りしてもなんとか成立する?

これは、編集のし直しということがまず考えられる。だがフリの部分(酔ったシーンから逆に撮っていく)の取れ高が悪かったため(フリでおもしろいところを全部見せざるを得なかった)順につないだ本編を見せても、おもしろくならないのが分かってしまったのだろう。順つなぎは全く別の芸人でやる方法をとった。

VTRの尺を短くしてしまうことも考えられるが、それは他の2本に自信のあるときしかできない。

▼説教食らってる最中に後ろから笑かし検証

ダチョウ倶楽部の上島竜兵がでて来て笑かすところはおもしろかったが、それ以降は低調である。是は芸人を使ったバージョンをもっと撮り足すべきだった。このロケなら、2時間もあって、スタッフを総動員すれば撮れる。撮れば撮るほどおもしろくなる数が物を言うネタなのに。新型コロナのせいもあるのだろうか。

▼コウメ太夫にネタのダメ出しされた後輩、誰一人何一つ直さない説

今回一番ぼくが見たかったネタ。もちろん、直さないのがおもしろいわけで、おそらく後輩は直さないので、それで笑える。それ以外の見当も付かないバージョンが撮れたらみっけもンのネタである。だが、バラシで余計な部分を付けてしまった。松本人志が言っていたようにコウメ太夫は、まじめになぜ直さないかと迫ればよいだけで、最後におどけて後輩芸人に対しては絶対にいけない。そうしておけばVTRの終わりに使えるシーンが撮れたかも知れないのに。これは演出家がロケディレクターにきちんと説明しなかったのが原因。

今回が中途半端なVTRばかりだったのは、松本人志と浜田雅功のリアクション薄かったことも証明している。VTRが、つまらないときは、高いギャラを払っている演者には「VTR一本減らします、その分、スタジオを何とか盛り上げて下さい」とたのんでもよい、と僕は思っている。そういうありがたい信頼をスタッフと結べる演者はちゃんと居るからである。だから僕は客入れが好きである。軸のある演者なら客前で笑いの取れないうちに板(舞台)を降りることはない。

ところで、ネットでダメ出しされた『水曜日のダウンタウン』は、何一つ直さない説を見たいものである。

 

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