「27時間テレビ」でビートたけしが見せた正統な「ベタネタ」と明石家さんまの見事なリアクション


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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還暦の筆者より先輩なのに、筆者よりもバカなこと(褒めことばである)をやっている人がいる。それは後輩にとって何と安心な事か、幸せなことか。

そういう関係が後輩・明石家さんまと先輩・ビートたけしである。さんまは60歳、たけしが8歳年上の68歳である。

7月25日〜26 日に放送されたフジテレビ「27時間テレビ」。今年も筆者のお楽しみは「さんま・中居の今夜も眠れない」の中で披露されるビートたけしのネタである。ネタはいつもベタネタ。「出落ち」と「落っこち」と「爆発」である。今年もこの文法にのっとったネタだった。

まず現れたのは、たけし演じる河内家権三丸。新聞詠み(しんもんよみ)が和船に乗ってプールに登場。河内音頭を気持ちよく詠う。

太鼓を叩いているガダルカナル・タカは、さすがたけし軍団で最も信頼を置かれている男である。間違ったらシャレにならない和太鼓のリズムをきちんと刻み続ける。途中でタカがカウベルをポコッとならすと、たけし歌を外されてこけて船壊れ「水落ち」。

このベタギャグに対するさんまのリアクション。

「あんだけ詠って、落ち1秒やで」

見事に、たけしのネタの意図をすべて拾っている。司会の岡村隆史(ナインティナイン)が「結構、歌が長かったですね。」と言っていたが、長く詠うからこそ、落ちの1秒が効いている。・・・と、さんまは答えたのである。

ビートたけしはこういう「ベタネタ」が大好きだが、こういうベタネタをちゃんとやれる芸人は今、ほとんどいない。ベタを面白く見せられるのは腕を持っているからである。さらに、たけしは顔を化粧で作るのが大好きである。これは出落ちである。

出た瞬間で笑いは終わりと言うことである。こういう出落ちで先に続ける場合は出た瞬間より、その後が面白くならねばならない。それが出来ないのに顔を作る芸人は間違っているのである。

たけしの2回目の登場はやはり和船の上。今度は恐山の口寄せ巫女・北野イタ子。同船しているのは、岡村隆史の瞽女(ごぜ)の三味線弾き・岡村イタローである。

岡村はこの設定が盲目の三味線弾きである瞽女(ごぜ)だと理解していたのだろうか。イタ子のイタローつまり橋幸夫のレコド大賞新人賞受賞曲「潮来笠」(いたこがさ)の歌詞(作詞・佐伯孝夫、作曲・吉田正)である「潮来の伊太郎」から来ていることがどれだけの人に分かったか。

たけしはそういう所を一切気にしない。元は浅草の演芸場育ちなのである。イタ子とイタローは、むかしさんまと中居と関係があった「女の生き霊」に扮して恨み辛みを述べるという奥の深いネタである。

そのうち、大波が起こり船が揺れだし(生き霊が船幽霊となって取り憑いたのである)その揺れで、岡村が水落ち。岡村の水落ちは自分から飛び込んでいっている様子が映ってしまっていたので残念であった。これは絶対に自分から飛び込んではいけない。落ちなければいけないのである。

対して次に落ちるたけしは見事である。船首に向かって斜めに落ち後頭部を船縁に強打して、水落ち。痛いのを我慢しながら取れたかつらを被りひとこと。

「こんばんは、キダタローです。」

これに対するさんまのリアクション。

「そんなん、あかんねん」

「ベテラン芸人が我慢する顔、見たか?」

「もう、ええねえん」

含蓄の深いリアクションだ。笑いを取るために絶対痛そうな顔を見せないベテラン芸人。たけしが出てくると笑わなければならない決まりの単なる笑いの記号ではないと主張している。それが「もう、ええねえん」とは、さんまが自分にかけた言葉かも知れない。

3回目の登場は、伝説の花火師・金髪パンチパーマの火薬田ドン。おなじみ三尺玉にの導火線に火をつけるとその噴射力で(この噴射力見た目をもう少し強くしてあげればよかったのに)船が二つに割れ、火薬田は水平線の先に消えて行き、そこで花火大爆発。火薬田はほうほうの態で泳ぎ戻る。最後はギャグがもうひとつ、全身真っ黒焦げなどが欲しかった。

これに対するさんまのリアクション。

「ドン 打ち上げすぎやで。どんだけカネ使っとんねん。ドン」

中居正広が、番組内のコーナーで予算が3本の指に入るほどかかっていると告げると、さんまは、

「ええの。年に一回これやらなあかん」

「フジテレビ、絶対やめたらあかん」

と、最後は低迷フジテレビがよみがえる大事なコツを伝授したのであった。

ところで、たけしは今回、これらのネタをプール上で見せているが、本来は舞台のネタだ。本水、本火。そんなバカな舞台は入場料を3万円も取れば、あり得るだろうか。

 

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