アリババ集団が資金提供した映画「ミッション:インポッシブル」は、中国を仮想敵には出来ないが面白い

映画・舞台・音楽

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(Mission: Impossible – Rogue Nation)を観た。
「Rogue Nation」というのは、「ならず者国家」とでもいうような意味だ。国の管理下になってその法に従わない集団もこう呼ばれることがある。だから、トム・クルーズの所属するIMF(Impossible Mission Force)もCIAには従わない「ならず者集団」ではある。
結論から言うとこのシリーズ5作目になるスパイ大作戦「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」は、大変面白い作品だ。
東側諸国が崩壊して以来、スパイ映画は作りにくくなったと言われる。仮想敵がつくりにくくなったからである。「ありそうなリアリティ」を持つ陰謀論を組み立てなければならないのがスパイ映画だ。そうなると、現在敵に出来るのはイスラムであろうが、IS等では敵側が必要な資金をどこから調達するのかなど、余計な問題が出てくる。
中国ではどうか。こちらは資金もあるが、映画というノンフィクションの世界で描いても民族問題に発展する恐れがある。しかも、映画の資金をアリババ集団(阿里巴巴集団:中国の情報技術関連企業グループ)が出している。理由もなく資金を持っている仮想敵では、仮面ライダーのショッカーのようになってしまい真実味がなくなる。
しかしながら、そういった問題・課題をこの映画の脚本は見事に解決していた。どう解決しているかは、この映画の肝でもあるので書けないので、ぜひ観て欲しい。
さて、スパイ映画の見所と言えば、アクションと美女だ。今回のアクションはまあ「そこそこ」。一方、美女の方はと言えば、これを演じるレベッカ・ファーガソン(Rebecca Ferguson)は、大変大柄な美女であり、魅力的だ。
アクションを特訓したそうだが、映画上はトム・クルーズより強い。日本人の男が隣に立ったらアリみたいに見えるだろう。
ウィーン国立歌劇場でプッチーニの「トゥーランドット」(中国が舞台)が上演される中、英国首相暗殺計画が遂行されるというストーリー。これはアルフレッド・ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」(原題:The Man Who Knew Too Much 1956年公開)のパクリであるろう。しかし、このシンバルでの銃撃はあまりに有名なので、パクリと言うよりオマージュと言えるかもしれない。
ちなみにトムクルーズの所属するIMFはImpossible Mission Forceの略であるが国際通貨基金(International Monetary Fund)の略でもあるのが面白い。
さて、どうなる? JBの方は。ちなみにJBはジャック・バウアーの略ではありません 。
 
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