<「マイナス思考芸人」の嘘くさいエピソード>つまらなさを隠して視聴者を騙す「アメトーーク」の未公開映像集


高橋維新[弁護士]

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2015年8月13日放映のテレビ朝日「アメトーーク」は「ベストトークセレクション」ということで、過去に放映された回のおもしろい部分を集め、そこに未公開の映像を混ぜた作りだった。

パッと見どこまでが既公開でどこからが未公開かは分からないようになっていたが、まあ、それはそれでいいだろう。

この手の総集編的な回では、「ここから未公開」などという字幕やナレーションを足して、どこからか未公開映像かを分かりやすくする編集も間々みられる。これをやると、未公開部分で視聴者の注意を引き、視聴率を上げることができるかもしれないが、既公開部分の視聴率が逆に減ってしまうと考えられるので、もろ刃の剣である。

「アメトーーク」のように、トークの流れがあって、未公開部分と既公開部分を切りにくい番組では、むしろ両者を分けずに一体として放送してしまった方がよい場合も相対的に多いと思われる。なので、別に今回の全体の編集には文句はない。

筆者としては既公開の部分も「なんか見たことあるな」程度の記憶しかなかったため、ほとんど新鮮な気持ちで見ていた。

セレクトされた回は、「マイナス思考芸人」「薄毛芸人」「若い女の子大好き芸人」「お酒飲み過ぎちゃう芸人」などの「何か(特に出演した芸人)をバカにする回」が主であった(http://mediagong.jp/?p=8317)。

「何かを褒める回」は、褒める対象(過去には漫画「キングダム」やゲーム「スーパーマリオシリーズ」をテーマに扱った回があった)の映像を権利関係上もう一度使い回すことができなかったゆえに今回取り扱われなかった可能性もある。しかし、筆者としては「何かをバカにする回」の方が全体的におもしろい箇所が多かったからこのような編成になったと考えている。

さて、番組全体を通して言うべきことはこの程度なので、これ以上本稿の分量を増やすとしたら個々のトークの良し悪しを問題にするしかない。

今回は、全体的におもしろかったのだが、唯一気になったのは、「マイナス思考芸人」の回で村本大輔(ウーマンラッシュアワー)がしていた話である。

箇条書きで要約すると、以下のような話である。

  • 村本は、新幹線でグリーン車に座っている。
  • 村本は、グリーン車は医者や政治家みたいな奴ばっかりが乗ると考えているので、自分みたいなものが乗っていいものかと思ってしまう。←「マイナス思考」の部分
  • そこで、乗る前は読みもしない日本経済新聞を必ず買うようにしている。
  • 電話がかかってきたときも、本名を名乗らず、「はい、財前です」と出る。

何が問題かというと、「嘘くさい」のである。この「マイナス思考芸人」の回に出るに当たって一生懸命自分で「ネタ」になる作り話を考えたような匂いが漂っている。

一度そういう考えになってしまうと、そもそも村本がマイナス思考芸人なのかというところにまで疑いが及び、彼のトーク全てを色眼鏡で見てしまう。番組側もそう判断したからこそ、本放送ではカットしたのではないだろうか。

これを「今回はなんと未公開映像集です」などと言って既公開のものよりおもしろいかのように喧伝することがあるのは、このつまらなさを糊塗して視聴者を騙すためである。

嘘くさい話とそうでない話の違いは、まだ筆者に体系化して言語化することができないが、「真実の話」と「嘘だけど嘘くさくない話」というのは、ディテールがしっかりしており、ディテールの部分で笑いをとってくる。そして、おもしろい話のディテールというのは大抵予想外である。

村本の話のおもしろいポイントは、「日本経済新聞」と「財前」というワードなのだが、いずれも、なんというか、どちらかというと話のディテールというよりはメインの部分であり、「マイナス思考の人間がグリーン車に乗った時あるある」という大喜利のお題で真っ先に思い付くようなことなのである。

嘘くさい話の特徴というのは、いずれ筆者の中で体系化できたら改めて書いてみたい。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。