<元海上自衛隊トップ・海将が解説>安保法案可決「新3要件」は法律上担保されている


伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]

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「新3要件は法律上担保されている」ということをテーマに書いてみたいと思います。

「新3要件」、特に第2、第3の要件が我が国の武力行使において大きな歯止めになっていることは、これまで筆者が説明してきたとおりです。(http://mediagong.jp/?author=229

9月16日「地方公聴会」において、筆者は公述人として意見陳述させてもらえる栄誉をいただきましたが、法案に反対でも、

「『新3要件』は日本の武力行使の歯止めになっている」

と同意される方は多数いらっしゃいました。但しその方々の懸念は、

「新3要件そのものが法律に書かれていない」

というものでした。しかしそれは本当でしょうか?

筆者は「事態対処法と自衛隊法にきちっと明記されている」と思います。事態対処法とは平成15年から施行されている国民保護法の一つです。

我が国の平和と独立、国及び国民の安全を確保するため、その基本理念や手続き等を定めたものです。今回この法律にこれまでの「武力攻撃事態」に加え、新たに「存立危機事態」が設けられました。

まず、第2要件の「他に適当な手段がない」です。事態対処法ではこれまでも政府が事態を認定するため、「対処基本方針」を定めることになっています。

今回はこの基本方針に、従来の「当該認定の前提となった事実」に加えて、「我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由」も盛り込むことが明記されました。

では第3要件の「必要最小限度の実力行使」はどうでしょうか? これは従来から旧3要件を踏まえて自衛隊法88条に、

「武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、且つ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えてはならないものとする。」

とあり、これは新設された「存立危機事態」にも適用されます。また、事態対処法第3条にも

「存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

との条文が追加されました。

すなわち筆者がこれまで述べてきたとおり、皆さんが危惧される「存立危機事態」においても、

他国領域外における相手国軍艦等の『排除』だけが我が国に認められる武力行使である」と法文上も明記されているのです。つまり「これは違う」

という議論は、「従来からの防衛法制そのものを否定」しているのであり、それこそ法的安定性を欠く議論と言わざるを得ないのです。

 

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伊藤俊幸

伊藤俊幸(いとう・としゆき)元海上自衛隊トップ・海将。 昭和33年生まれ。防衛大(機械工学)卒業。筑波大学修士課程修了。海幕防衛部防衛課(平成6)、潜水艦あらしお副長兼航海長(平成8)、潜水艦はやしお艦長(平成9)、外務事務官(平成11)、第2潜水隊司令(平成14)、海幕監理部総務課広報室長(平成15)、海幕指揮通信・情報部情報課長(平成18)、情報本部 運用支援担当情報官(平成21)、海幕指揮通信・情報部長(平成22)、海上自衛隊 第2術科学校長(平成23)、統合幕僚学校長(平成25)を経て。平成26年、呉地方総監。平成27年退職。