<とんねるずのみなさんのおかげした>おもしろさが見えない「食わず嫌い」と「男気ジャンケン」はさっさとやめるべき


高橋維新[弁護士]

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2015年9月24日放映のフジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげした」を見た。秋の改変期ということもあり、今回は2時間半スペシャルであった。

内容は、「食わず嫌い」と「男気ジャンケン」という従前からある企画の2本立てである。以下、それぞれについて述べてみたい。

まず「食わず嫌い」であるが、一応簡単に説明しておくと、ゲストを2組用意して、嫌いな食べ物の当てっこをするという企画である。この説明だけだと全然おもしろさが伝わらないだろうが、実際そんなにおもしろくないのでしょうがない。

この企画においては、嫌いな食べ物の当てっこはあまりメインの部分ではない。メインはとんねるずとゲストとのトークであり、食べ物の好き嫌い云々はトークを広げるための一つの材料でしかない。

ところが、このトークというのが基本的にはおもしろくないのである。

まず、ゲストは基本的に「告知」のある役者である。石橋貴明がスポーツ好きなためか、スポーツ選手もよく出てくる。そして役者というのは、芸人と違って「おもしろい話」のプロではない。

スポーツ選手に至っては、「話」のプロですらない。もちろん、たまに口のうまいスポーツ選手や話のおもしろい役者もいるし、芸人がゲストに出てくることもあるのだが、そのような回は基本的に例外であって、大部分の回ではゲストに任せているだけだとあまりおもしろい話が出てこない。

単に「告知のためだけ」に出てきた役者や、テレビをおもしろくするというプロ根性がないスポーツ選手は、自分でおもしろい話を事前に考えてくることもしないのである。

そこをなんとかするのは「芸人」とんねるずの役目なのだが、とんねるずには以前も指摘した通り「一線越え」以上の芸がないため(http://mediagong.jp/?p=10585)、この役目は果たせていない。

明石家さんまや、島田紳助や、松本人志の様な話芸がとんねるずにないため、とんねるずに任せてもなんとかなっていないのである。話芸がないならないなりにその点を自覚して、ゲストのおもしろい話を引き出すために事前に綿密な取材をするという手もあると思うが、とんねるずがそのような努力をしている形跡はない。

せいぜい、ゲストが事前に書いているアンケートにざっと目を通しているぐらいだろう。この手のアンケートを事前に書かせて本番のトークの材料にするというのはトーク番組ではよく行われている手法であるが、逆に言うとそれ以上の取材はしないという手抜きの材料になっているのである。

話芸もないのにそれを補うような努力もせず、漫然とスタジオに来て、漫然と本番を迎え、漫然と収録を終えているのである。おもしろくなるはずがないだろう。

無論、毎回役者やスポーツ選手といったバラエティにはあまり出てこないゲストを呼ぶことになるため、そのゲストのファンは見るかもしれない(そもそも筆者には「その人自体のファンだから、話がおもしろくなくても聞いていられる」という感覚が分からないが)。

ただ、毎回ゲストが違えばそのファンの数も層も違うので、ただゲストを呼ぶだけで一定の視聴率が確保できるわけでもない。

なぜか一時期「みなさん」では食わず嫌いばかりを放映しており、今も結構な頻度で放映されている。おもしろくないこの企画の息がこんなに長いのは不可思議な限りだが、「告知」のための装置として生き残らされているだけかもしれない。

今回だけで言えば、ゲストにマツコという「おもしろい話」ができる人がいたため、なんとか見ていられる映像にはなっていた。ただもう一方のゲストの篠原涼子にはおもしろい話は期待できないし、とんねるずも特に面白さの向上に貢献してはいなかったため、マツコが孤軍奮闘していた印象である。

さっさとこの不良債権の様な企画は切るべきだろう。

もう一方の男気ジャンケン(http://mediagong.jp/?p=8973)についても、以前記した通り、筆者にはどこがおもしろいのかがさっぱり分からない。

この企画は、出演者が男気ジャンケンというゲームを行い、ジャンケンで「勝った人」(負けた人ではない)が高額の商品を自腹で買わなければいけないというゲームである。

見所は、高額の負担をしなければならなくなった出演者のリアクションと、それを避けるための醜い争いから生まれるおもしろさである。コンセプトとしては、ぐるナイの「ゴチ」や、めちゃイケの「矢部浩之の持ってけ100万円」に近い。あるいは、同じ番組の「買う」シリーズでもいい。

ただ、「勝った人」が自腹を切るというルールからも分かる通り、ゲームの参加者はみな「自腹を切りたがっている」という設定で行動しなければならない。そのような男気を見せるという意味で「男気ジャンケン」という企画になっているのである。

しかし、払いたい人がお金を払っただけであれば、ゴチのようなおもしろみは生まれない。払いたくないお金を苦しそうに払うからこそ、おもしろくなるのである。

お金を払いたがっているという設定の下でこの苦しさを出すには、相当に玄妙で難しい芝居が必要になる(ただこれがきちんとできれば、ゴチや買うシリーズよりもおもしろいものができる可能性がある)が、ジャンケンで買って自腹を切ることになった出演者にそういう微妙な芝居を見せた人は筆者の知る限りいない。

みな一様に「勝ってお金を払える」ことに喜ぶ芝居を見せているだけである。出演者も多過ぎてうるさいので、そのような複雑玄妙な芝居をゆっくりと見せている余裕もないというのが正直なところである。

企画のコンセプト自体が、おもしろさを殺しているのである。

出演者があまり嫌そうなリアクションを見せない結果、「本当に自腹を切っているのか」という疑いまで生じさせるという二次的な問題も出る。ゴチや買うシリーズみたいな自腹系の企画ではこの手の疑惑が常について回るのだが、男気ジャンケンではそれが強くなってしまっているのである。

代わりに番組は別の種類のおもしろさを出している。ひとつが、「太鼓が鳴ったら出演者は男気を見せなければならず、弱気な発言をしてはいけなくなる」というルールである。

ゲームの参加者が買わされるものは大抵一人には多過ぎる量なので、みな当初は難色を示すのだが、太鼓が鳴った途端に「欲しい」とか「買いたい」とかいう芝居をすることになる。当初の発言がフリとなって、それがいきなり180度変わるギャップが面白さを生み出しているのだが、男気ジャンケンをやるたびにこのくだりを放映するので、筆者は飽きている。

もう一つは、ここ何回かの男気ジャンケンでやるようになったドキュメンタリーコントである。スペシャルの男気ジャンケンでは、最後に番組のお金で宴会をやるのが恒例になっているだが、スタッフのポカで番組がお金を出すという話が通っていなかったことが明らかになり、結局参加者でまた宴会代を誰が払うかの男気ジャンケンをすることになるのである。

これは確実に台本通りの流れであり、「スタッフがポカをしてしまった結果タレントが迷惑を被る」というコントをドキュメンタリー風にやっているものである。

ただ、「めちゃイケ」や「ガキの使い」ほどドキュメンタリーコントのノウハウが蓄積していないのか、全てがヘタクソである(もともと「みなさん」は「仮面ノリダー」のような純粋な台本通りのコントをやる番組だったということもあると思うが)。加えてこのドキュメンタリーコント自体ももう何回かやっているので展開が読めてしまう。

今回の男気ジャンケンも、上記の問題が全て出ていた。おもしろさは「太鼓」と最後のドキュメンタリーコントにほとんど頼っているが、既に複数回やっていることなので全く新鮮味はない。出演者が多過ぎであり、しゃべるプロではないスポーツ選手なども複数混じっているので、収録もなかなか収拾がつかない。

今回はスポーツ選手の他にアパホテルの社長が参加していたのであるが、出演者が多過ぎる結果埋没してしまった印象である。こういうキワモノはきちんとイジればヘタな芸人よりおもしろくなる可能性を秘めているのだが、出演者が多過ぎる結果現場でもイジるのが難しくなり(人がたくさんいるとガヤも入れにくくなる)、オンエアにおける露出も密度が低くなってしまう。

結果、全体的には散漫な印象しか受けない。ギャラだけ増やしてわざわざ番組をつまらなくしているのだから、救いようのない話である。

この企画も続いているのが不可思議である。作り手に良心があるならさっさとやめるべきだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。