<3回目でも問題山積>「ENGEIグランドスラム」は「芸人が自分で考えたネタを垂れ流す」だけの番組


高橋維新[弁護士]

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2015年9月26日にフジテレビで「ENGEIグランドスラム」が放送された。番組自体は、もう3回目の放映になる。前2回も筆者は感想を記事にしているが、そこで指摘した問題点はまたほとんど直っていなかったので、しつこいようだが改めて記しておく。

  • ナインティナインがネタをやっていない
  • ナインティナインが芸人とあまり絡んでおらず、合間合間のコメントもほとんど使われていないので、司会としている意味がない
  • 観客が入っている(ので収録の終了時間を配慮する必要があり、ナインティナインと長いこと絡ませることができない)
  • ネタについて番組やスタッフが事前に口を出してブラッシュアップしている形跡がない
  • 芸人のネタ部分はほとんど編集されておらず、垂れ流しになっている

以前は既出ネタの使い回しが多いという問題もあったが、今回筆者が過去に見たことあるのはフットボールアワーのネタぐらいだったので、その問題は解消されたと言っていいだろう。

ただ、上に列挙したようなこの番組が「芸人が自分で考えたネタを垂れ流す」だけの番組であるという大本の問題点はほとんど解消されていない。

出場者が実力派の芸人で固められているので、垂れ流しでもある程度のおもしろさは出るのだが、筆者はそれで満足してはいけないと思っている。

芸人が考えたネタも、スタッフが口を出してブラッシュアップできる。司会のナイナイも含めてせっかくたくさんの芸人が出ているのだから、(きちんと内容を考えたうえで)芸人同士を絡ませれば、ネタ以外のおもしろさも出せる。

今回はテツがネタ中に岡村とアドリブで絡み、また(恐らくはスタッフの発案と考えられる)今くるよと中川家のコラボが行われていたので、前2回よりは若干の改善があったが、まだまだ大部分が「ネタの垂れ流し」であるという側面は変わっていない。

なぜだろうか。

おそらく、芸人のネタに口を出したりコラボレーションの中身を考えていたりすると、スタッフとナイナイの手間が増えるからである。要はスタッフとナイナイが手を抜いているからただの垂れ流し番組にしかなっていないのである。

まあ、番組を作る際のコスパというものは常に考える必要があるので、「スタッフがそこまで労力をかける余裕がないから、芸人のネタを撮って出しで放映する番組にする」というのは一つの決断である。

今回この「垂れ流し」の形でもう3回目の放映が行われてしまったので、それ以上に労力はかけないという決断をしたということなのだろうが、今回の放送でもナイナイや芸人同士のコラボレーションという「垂れ流し以上のおもしろさ」の萌芽は見てとれたので、ここを広げる形で番組を練っていってほしいというのが筆者の意見である。

それでは、出演者の寸評をしてみたい。

【ますだおかだ】

前回と同じく、全体的にしょうもない。単発のボケを積み重ねただけであって、ボケ同士の相互の関連性がないため、ネタに深みがない。そうなると、単発のボケが好みでないと、受け付けなくなってしまう。そして、筆者は好みではない。

【キャイ~ン】

もしかしたらキャイ~ンの漫才をちゃんと見るのは初めてかもしれない。

ネタ作りは天野が担当しているので、天野が考えたボケをウドに言わせているのだが、一つ一つがしょうもないのでウドの魅力がスポイルされているというのが正直な感想である。

ウドの強みはその天然っぷりにあるので、わざわざ「普通の人」である天野が考えたしょうもないボケに付き合わせる必要はないと思う。つまり、もうテレビで漫才をやってもらわなくてもいい。

【ロバート】

書道家のネタだったが、「うなぎ」や「おてもと」をそれっぽく書けるようにたくさん練習したんだろうなというのがうかがえた。その甲斐はあったと言っていいだろう。

【ナイツ】

単発のボケを積み重ねただけでボケ同士の相互の関連性がないというのはますだおかだと同じ。ただこっちは単発のボケが筆者の好みに合うため、少なくとも筆者は見ていられる。ただ好みに合わないと筆者がますだおかだを見たときみたいな感想になるだろう。

【COWCOW】

前回とは趣向を変えて音ネタをやっていたが、クオリティ的には二度とやらない方がいいレベル。なんか一部カットされていた感じもした。

【流れ星】

ちゅうえいのギャグは、なんかもう一つ捻りが足りないというのが筆者の正直な感想である。

あまりうまく言語化できないが、「ちゅうえい」を裏声で言うとか、「聖徳太子バント」とか、「王蟲」のギャグとか、変顔もそうなのだが、自称おもしろい大学生や体育会系が思いつくようなレベルなのである。「普通」から一回しか曲げていない。

プロならここからもう一回曲げて欲しい。素人がもう一回曲げると、普通の人だと分からないような題材になってしまうのだが、プロなら「『自称おもしろい大学生』には発想できないけどみんなに分かってもらえる題材」を考え付くはずである。

「聖徳太子」だと一回しか曲げていない。もう一回曲げると、小野妹子とか蘇我入鹿とかが出てくるはずである(流石に高向玄理や物部稲目までいくと曲げすぎだが)。「ドラえもん」や「サザエさん」は普通である。自称おもしろい大学生は、一回曲げて「コロ助」や「中島くん」ぐらいまでなら出てくる。プロであれば、もう一回曲げて、「パーマン」や「伊佐坂先生」までいって欲しいのである

【麒麟】

うーん、困ったなこれは。

全体的には特に文句をつけるところがないが、それでもおもしろくないので、結局個々のボケのクオリティの問題に帰着してしまう。

【バカリズム】

「ルールがやたら複雑なカードゲーム」を取り扱ったコントである。

そのカードゲームのルール説明にゲーム特有の専門用語が山のように出てくるのだが、そこで使っている「それっぽい語」のチョイスが少しアレである。「ゼウス」とか「ナルキッソス」とかギリシア神話由来のものがベースになっていたが、「ギャラクシークラッシュ」みたいに全然関係ないものも混じっており、必死にかき集めた感じがして痛々しかった。もう少し、語の統一性などに美意識が欲しい。

カードゲーム自体が用語の統一性に美意識のない安っぽいものだという設定なのかもしれないが、それはボケとしては伝わってこなかった。

【テツandトモ】

(おそらく)アドリブで岡村と絡めたのは営業慣れの結果だろう。他の芸人もこういう芸を見習ってほしい。

【フットボールアワー】

前述の通り見たことあるネタ。可もなく不可もなく。

【チュートリアル】

徳井の女装はすごく様になるのでいいのだが、このネタに限らず、(日本人が扮する)片言の外国人をボケキャラにしてしまうと少しバカにし過ぎている感じがして不安になってしまう。筆者だけだろうか。

【アンジャッシュ】

アンジャッシュらしいネタ。そしてこれこそが全てのボケがかっちりと有機的に絡み合ったコントである。わざわざ台本を作るからには、単発のボケを積み重ねるだけじゃなくて、ここまでの完成度を目指してほしい。

【トレンディエンジェル】

ハゲのフラを押し過ぎというのは前回指摘した通り(http://mediagong.jp/?p=10728)。ハゲが飽きられたらどうするつもりなんだろうか。筆者はもう飽きているのだが。

【インパルス】

板倉らしいインテリジェンスが散りばめられたネタ。

ただ板倉の説明が早口過ぎて中身が聞き取りにくかった。客には自分がなんと言っているかをきちんと聞き取ってもらわないと、「(聞き取れたけど)何言ってるか全然分からない」という堤下のツッコミに客が感情移入できないはずである。

ボケの絶対数が少ないが、これで勝負できるのは一つ一つのボケに自信があるからだろう。実際おもしろかったのでいいのだが。

そして、おもしろいネタとして成立しているのは、板倉のボケを受けての堤下の怒りや戸惑いの芝居が巧いからである。板倉の芝居のヘタさを補って余りある巧さが堤下にはある。矢部が言うように板倉が本当に堤下を小馬鹿にしているとしたら、もっと感謝した方がいいと思う。

【スピードワゴン】

小澤の変人っぷりをもっと前に出していいと思う。

【レイザーラモン】

「格闘技とプロレスの違い」というネタ自体は非常におもしろいので、飽きられるまでは続ければいいのではないだろうか。

【どぶろっく】

森が女の子に対する普通のラブソングを歌う横で、江口が同じメロディに乗せて自分の性的な欲望を赤裸々に歌にするというネタ。

ただ一応ゴールデンと言うこともあったのか、江口の歌っている内容が最初の内は控え目だったので、あまりボケとして際立っていないとともに、嘘くさかった。

男の本音をそのままストレートに伝えれば「ヤラせてください」になるはずなので、最初からそれでいいと思う。「リコーダー」とか「尻」とか言われてもあまりピンと来ない。深夜枠ならそれでいけたはずである。

【東京03】

文句なし。アンジャッシュと同程度の完成度である。台本を作るならこれぐらいを目指してほしい。

【ハライチ】

最近見た笑点では違うタイプの漫才もやっていたが、今回やっていたのはハライチがM-1に出たときと同じ「岩井がフって、澤部がノリつつツッコむ」という昔からのスタイルである。

散々指摘されていることであるが、この漫才では澤部の仕事の比重が大きく、岩井の役目は台詞を覚えることができる人なら誰でもできる。

それ以前に実力派の芸人なら岩井役も澤部役もアドリブでできるはずである。そして、アドリブでやった方が、見る方のハードルも下がる上にハプニングも起きうるのでおもしろいはずである。

あと、岩井は最後の方の「毛穴からユッケ」をカンではダメである。

【ロザン】

麒麟と同じでいいだろう。

英語の発音をもう少しネイティブっぽくした方がそれっぽくなる気がするのだが、そうすると聞き取りにくくなるのかしら。

【千鳥】

麒麟やロザンと同じでいいだろう。頑張れ。

【日本エレキテル連合】

今回のコントはおもしろいと思う。これで売れるかどうかは筆者には分からないが。

【爆笑問題】

前回からやっている通り時事ネタを一つ一つ田中がフリ、太田がボケるというスタイル。一つのボケが終わると次のボケや話題に移るという(ますだおかだやナイツみたいな)ぶつ切り漫才である。

この程度にしか台本を練らないのであれば、爆笑問題が普段テレビに出ている時のように完全アドリブでやった方が、視聴者も油断しているし、確実におもしろくなるだろう。

【今くるよ・中川家】

今くるよと、中川家のコラボレーション。今いくよ役は中川家の剛が勤めていた。なんというかあまりかっちりとした台本がなく、そこまで入念に打ち合わせや練習をしていない印象を受けたが、そういう状態でも客や司会をイジったりして笑いを生み出せていたのは、上方の実力が出た証拠である。

ただ、くるよに扮する礼二がしゃべりすぎで、剛も礼二の方ばっかり見ていたので、本物のくるよが埋没していた。あまり深く考えずに単純にこの3人の足し算にしてしまったから生じた問題点であると思われるが、解決するとしたら礼二を切るか本物のくるよを切るかのどちらかである。本物のくるよを切ったらただの中川家なので、一度礼二がいない状態での漫才を見てみたい。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。