テレ朝「ホリケンふれあい旅 にんげんっていいな」にみる堀内健のプロ根性と強烈な個性


高橋維新[弁護士]

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2015年12月17日にテレビ朝日で放映された「ホリケンふれあい旅 にんげんっていいな」を見た。筆者は今回が初見だが、番組自体はもう5回目ということであった。

もとは、「アメトーーク」で堀内健(ネプチューン)にフィーチャーした回に端を発するスピンオフ企画であり、放送枠も、スタジオも「アメトーーク」のものを拝借している。

内容としては、堀内健ことホリケンを地方の観光地のロケに行かせて泳がし、そのVTRをスタジオの面々が見るというものになっている。スタジオでのトークはおまけ程度の分量しかなく、メインになっているのはロケでのホリケンの暴走模様である。

ホリケンは、ロケでも普段の芸風の通りに暴れる。所構わず歌い踊り、飛び跳ね、ダジャレを言ったりする。現場にいる素人に抱きつき、キスをし、湯水に落とそうとする。他の観光客や店員みたいな素人に自分のギャグをフったり、ミニコントをけしかけたりする。

このホリケンのムチャクチャな芸風は、ビートたけしやとんねるずの「一線越え」に近いものである(http://mediagong.jp/?p=10585)。

「観光地でのロケ企画」であるため、凡百のタレントであれば、番組が決めた段取りの通りに観光地を回り、番組が決めた物を食べ、番組が決めたイベントに参加して、当たり障りのない感想を言って終わりである。

ところがホリケンは、まずこの段取りを守らない。物を食べるべきところで前述のように飛んだり跳ねたりを繰り返す。釣りをすべきところで通りがかりの素人を水に落とそうとする。陶芸をやるべきところで先生にキスをする。

とにかく、「一観光客」として大人しくしていることはない。

この芸風の長所と短所は以前にとんねるずについて書いた記事で触れた通りである。やっていることは無茶苦茶であるため、現場にいた素人やテレビを見ている視聴者を引かせる危険性は常にある。

また、延々と空回りしているホリケンを見せられると、どうしても「スベっているな」という印象も拭えない(そういう意味ではこの企画のホリケンはスベリ芸的でもある)。

今回オンエアされていたのは、基本的にホリケンの無茶苦茶に付き合っていた優しい人ばかりであったが、裏にはホリケンのことを邪険に思って無視・白眼視した膨大な数の素人がいたと推察する。

そんな映像を流しても殺伐とするだけなので、当然カットである。

この「視聴者を引かせてしまう」「スベっているように見える」という難点にはどう対処するか。一つのやり方は、きちんと「ツッコミ」というフォローを入れることである。

「本来笑いを取るべき場面でスベっている・見ている人を引かせる」というのも立派なズレである。ただ、このようなズレがあるのに視聴者がホリケンを見て(笑わずに)面食らってしまうのは、ホリケンがもたらしているズレの程度が大きく、何がどうズレているかが一瞬分からなくなるからである。

観光地でのロケ企画を想定してテレビを見始めた視聴者は、ホリケンが他のタレントと全く違う振る舞いに終始しているのを目の当たりにして、いったん思考が停止してしまう。これを通常の状態に復帰させるのがツッコミの役割である。

ツッコミは、ホリケンに「ちゃんとやれ」とか「お客さんに抱き着くな」とか「静かにしなさい」などという言葉をかけてホリケンのどこがどうおかしいかを指摘し、視聴者にホリケンのどこがどうおかしいかを説明するのである。

ロケに随行してもいいし、スタジオでVTRを見ている面々に言わせてもいい。

ただ今回ロケに出向いているのはホリケン一人であり、VTRを見ている面々もあまりツッコミを入れていなかった(入れていたのかもしれないがオンンエアでは使われていなかった)ので、基本的には一人で暴れ続けるホリケンと、それに戸惑いつつも付き合う素人たちという映像が延々と続いていた。

これは、笑いの分類としては、「分かりにくいボケが十分なフリもツッコミもないまま放置されている」「シュール」に当たると考える。スタッフがシュールな笑いを意図して作り上げていたのであれば、その狙いはピタリとハマっているが、そうでないとすればもっと分かりやすくツッコミを入れるなどの工夫が必要であると感じた。

シュールな笑いは、一般の方には理解されにくいものであるが、業界人には好きな人が多いし(現にスタジオで見ている芸人たちはホリケンがツッコまれずに暴れているだけでも笑っている)、シュールな笑いの方を好む好事家もいる。

ただ今回この企画がもう5回目であることを考えると、ホリケンのこの振る舞いも一般の方にある程度受容されているのかもしれない。この辺は単純に好みの問題になるので、これ以上云々はしない。

それにしても、前述の通りオンエアの背後には、ホリケンのことを無視あるいは白眼視して邪険に取り扱った膨大な数の素人がいると思われる。ホリケンにビートたけしやとんねるずほどのネームバリューがないことを考えれば、尚更である。

そのような扱いを受けつつも、ずっとマンキンで暴れ続けられるホリケンのプロ根性は流石である。ただ、今回のオンエアやこれまでのホリケンのテレビでの振る舞いを考えると、あれがホリケンの素である可能性の方が高いと筆者は考えている。

そうであれば、ホリケンは素の状態でテレビに出ているだけということになるので、別に褒めるようなことではない。

そういう素を持ってそれをテレビでずっと続けられるのは芸人としての強烈な個性であるため、うらやましくはあるが。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。