[西野亮廣]<キンコン西野、クリスマスの夜に想う>「お笑い番組」はメジャーでも「お笑いライブ」はマイナーだ


西野亮廣[芸人(キングコング)]

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とにかく昨日よりも今日、今日よりも明日が面白い方がよくて、町から交通事故がなくなった方がいいし、世界から戦争がなくなった方がいいし、怒りのエネルギーはプラスに転換させた方がいいし、オシャレな方がいいし、サンタクロースは存在した方がいいし、クリスマスは子供だけじゃなくて大人もまとめてドキドキさせたい。

子供の頃から、そんなことばかり考えて毎日行動を起こし続けてきて今に至っている。

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たとえば今年の渋谷ハロウィン後の「ゴミ清掃活動」しかり、「それは、お笑い芸人の仕事じゃないだろ!」とチクチクと突っ込まれたりもするんだけど、今日よりも明日が面白くなるのならば、僕はもう職業名の壁なんてヒョイと飛び越える。

ただ、そこで出会った人達が、お笑いライブに来てくれたらなぁと「あわよくば」なことを考えている。

僕は小学2年の時に「お笑い芸人になりたい」と思って、途中、一度も寄り道をすることなく、そのまま本当に芸人になっちゃった。笑い声を聞くとモゾモゾして、これだけは小学2年の頃から、まるで飽きない。

だからいつも活動の真ん中には『お笑い』があった。これからの時代を考えて、明日も『お笑い』を続けていくには、芸人個人が一つのメディアになる必要がある。声をかければ人が集まり、イチイチの行動がニュースになり、いろんな人が自分を通して思いを発信するようになり…。

そうなるためには、ものすごく単純な話、実際に行動を起こし、「心中してくれるお客さん」を掴まえておく必要があって、やっぱり『ライブ』は必要だ。

今、僕はこの世界に頭の先までズブズブに浸かっているから『お笑いライブ』のことはもちろん把握しているけれど、この世界に入るまでは「お笑いといえばテレビ」で、寄席はまだしも、『お笑いライブ』に足を運んだことなんて一度もなかった。

『お笑い番組』はメジャーだけれど、『お笑いライブ』はマイナーだ。

この15年ぐらいは、きっとそれでも良かったんだけれど、スマホの普及により、テレビ番組を観る画面の面積が小さくなり、まもなくテレビは登場人物が減って、チームプレーが減って、メディアになっていない人からいなくなる。

テレビに依存した生き方をしている人が、逆にテレビから必要とされなくなるんじゃないかな。だから、僕らのようなお笑い芸人は『お笑いライブ』をメジャーにする必要がある。

あんまり見たくないんだよ。お笑いコンビの解散だとか、引退だとか。

『西野亮廣独演会』という単独のトークライブを、かれこれ10年以上続けている。東京公演は毎年2000人規模になり、来年は4000人。今年はニューヨーク公演もおこなった。

そんなことになる前夜、「独演会をDVDにしたいんだけど…」と吉本興業に言ったら、やたら難しい顔をされて(つまり、売れる見込みがなかったんだね)、「だったら自分で作るよ」と、流通に乗せないDVDを作ったら、そいつが売れて、その売り上げでニューヨーク公演をおこなった。

吉本興業は、勘は良くないかもしれないけれど、売れるモノには正直で(そこがイイトコロ!)、ついには、ものすごくピュアな瞳で「今年の独演会のDVDは、いつ発売します?」と訊いてきた。

ただ、残念だけど、僕は天の邪鬼で、理解されたいくせに理解されるものには興味がなくて、いつも事件を起こしたくて、グッズとしてのDVDはいいけれど、『お笑いライブ』を上に押し上げるほどの力はDVDにはないと思っていて、なにより、「つーか、登場人物が僕一人という『独演会』は、超スマホ対応じゃーん!さらには、音声だけでラジオ的に楽しめるじゃーん!」と思った。

何が言いたいかというと、6カメか7カメで撮って、編集場で編集して、お金をかけて作った今年の『西野亮廣独演会2015』の映像(1時間55分)を、まるごとYouTubeに無料でアップしちゃうことにした。

会社は怒るだろうね。DVDの売り上げから捻出するハズのカメラ代や編集代が飛ぶから。でも大丈夫。必ず他で回収できるから。回収できなかったら、僕が自腹で出す。

長期スパンで考えた時に、DVDをお笑いライブに足を運んでいる人に3000枚売ることよりも、『お笑いライブ』に興味がない人達に『お笑いライブ』の存在が見つかることの方が大切だ。
1時間55分の映像なもんで、YouTubeの再生回数なんて笑っちゃうほど見込めないんだけれど、それでも、お笑いライブに興味がない人に見つかった方がいい。

人が行動を起こす理由は「確認作業」でしかなくて、たとえば、どこかの離島に住んでいる人がライブを観に行こうと思ったら、船代、飛行機代、食費代、ライブのチケット代と、ものすごい大金を支払わないといけない。

東京に住んでいたって、中学生からしたら、ライブのチケット代(2000~3000円)は大金だ。
まだ得体の知れないモノに、そんな大金は支払えないよ。

だから、「お笑いライブって、こうですよ」と、まず見せてあげる必要がある。それで「生はどんなだろ?」という確認作業で、いつか『お笑いライブ』に足を運んでもらって、『お笑いライブ』が今よりもメジャーになって、学校でイジメに遭っていたり、職場に馴染めなかったり、おいてけぼりになったり、人生が嫌になったりしている人達の逃げ場所になればいい。

お笑いが好きです。なによりも。子供の頃からずっと。

だから、もっと盛り上がればいい。あと、「そんなこと、やっちゃっていいの?」を繰り返して、いつも質問でありたい。それだけ。

どうだ? キミは今日もドキドキしてるか?

メリークリスマスだぜ。

 

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西野亮廣

芸人吉本興業
西野亮廣(にしのあきひろ)お笑いタレント、俳優、絵本作家、漫才コンビ「キングコング」のツッコミ、ネタ作り担当。1980年、兵庫県出身。タレント活動と平行しつつ、2013年2月には、ニューヨークのトライベッカ「One Art Space」で初の海外絵本絵画展「Akihiro Nishino Solo Art Exhibition」を開催。同年11月には「TDW ART FAIR 2013」の「小川登美夫賞」「川崎健二賞」も受賞。著書に、「グッド・コマーシャル」「嫌われ西野、ニューヨークへ行く」「Dr.インクの星空キネマ」「ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス」「オルゴールワールド(原案:タモリ)」など。