<続・生きてやろうじゃないの!>東日本大震災と被災者家族の記録(8)「生きてやろうじゃないの!」が生んだ思わぬ運命の波紋

社会・メディア

武澤忠[日本テレビ・チーフディレクター]
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その後も筆者はカメラを回し続けた。母は次第に生きる気力を取り戻し、日に日に力強くなっていった。
でも本当は母は、必死に「元気になる自分」を演じていたのかもしれない。息子である僕に、心配をかけないように。
そして本「生きてやろうじゃないの!」の出版により、思わぬ出会いが生まれる。「生きてやろうじゃないの!」を読んだ静岡の中学1年生が書いてくれた読書感想文が青少年読書感想文コンクールで賞をとり、その表彰式に母も招待されたのだ。
そこで感想文を書いてくれた13歳の少女と出会い、今でも学校ぐるみの付き合いが続いている。
そして母の言葉に感動したという福島県いわき市在住の歌手・箱崎幸子さんが「お母さんが書いた言葉を是非歌にしたい」と作詞を依頼。本当にCDとして完成し(「生きてやろうじゃないの」作詞・武澤順子 歌・箱崎幸子 キングレコード)、地元いわき市でそのお披露目コンサートが行われ、母も招待された。
夫の死。
震災の被害。
家の解体。
・・・様々な日々の中で母が綴った言葉は、被災地の人々にどう響くのか。心配しながらカメラを回したが、客席のなかで涙を浮かべながら聴いている人々の姿に、ほっと胸をなでおろした。
客席にいた女性が、インタビューにこう答えてくれた。

「生きてやろうじゃないの!って言葉・・・聞けばそうか、って思うのに、なんでその言葉が自分の頭の中に思い浮かばなかったかなあ、ってことを感じました。素晴らしい言葉ですよね」

(※本記事は全10回の連続掲載です)
 
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