<「なんでも鑑定団」の危機>島田紳助「石坂さんなしではあの番組の成功はなかった」


両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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1994年、同僚から「テレ東でけっこうおもしろい番組やってますよ」と声をかけられ、初めて『開運!なんでも鑑定団』を視ました。

テレビマンとしてお恥ずかしい話ですが、この番組を見て、ほんとうに羨ましく思いました。骨董という各局がゴールデンでは目もくれなかったものを素材にして抜群に新鮮で面白い番組を、一制作会社が単独で制作しゴールデンタイム枠で見事に当てていたからです。

多くの番組制作会社にとって、ゴールデンタイムに単独制作のレギュラー番組を当てることは非常に実現が難しい成果です。

それも長期継続性が見込まれる場合はなおさらです。これは制作会社の経営安定に大きく寄与することにもなります。当時、制作会社の部長職であった筆者も当然こういう企画を追い求めていたわけで、『開運!なんでも鑑定団』というすばらしい成功例を率直に羨ましく感じていました。

番組もうまく作られていました。当時はすでにTBSの『さんまのからくりTV』以外に素人を登場させる高視聴率番組はほとんどなくなっていたと思いますが、『開運!なんでも鑑定団』は素人を中心にしつつ「お金」「クイズ」「ゲーム」「スリル」といった要素がミックスされ、さらに司会の島田紳助によって全体が「笑い」でくるまれるという実に視やすいゴールデン向きの番組として仕上がっていました。

しかし、筆者には一点だけ不満というか不安がありました。

当時のテレビ東京はまだ現在ほどの視聴率や存在感がなく、他局に比べて番組にはわずかに安っぽさや胡散臭さが拭えませんでした。

『開運!なんでも鑑定団』も、今でこそ中島誠之助さんをはじめ鑑定士の方々は視聴者から高い信頼を得ていますが、当時は中島さんにしてからが知名度は低く口髭のキザなおじさんにすぎませんでしたし、他の鑑定士の方々も「お宝」の鑑定がどこまで権威や信頼性のあるものなのか直ちには信用できないような気分が残っていました。

そしてこの番組がお宝を鑑定することを楽しく視せる番組なのか、お宝をネタに素人いじりで数字を取ろうとする番組なのか、若干のアヤシサを感じていたのです。

しかし、もし番組のねらいが後者であれば絶対に不必要な人がキャスティングされていました。それが石坂浩二さんです。

芸能界有数の知識人であり趣味人である大御所・石坂浩二さんが出演していることで、番組のもっとも重要な土台である「鑑定」の信用が裏打ちされ、この番組が単なる「シロウトいじり」の安っぽい番組ではなく、信頼に足りる番組であるというイメージを自然と視聴者に浸透させていったように感じます。

それこそが『開運!なんでも鑑定団』を成功に導いたのだと思います。

これを裏付けるような島田紳助さんのコメントが2月1日の日本テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』で紹介されていました。

「僕から確実に言えることは、石坂さんなしではあの番組の成功はなかったということ。僕だけでは単なるバラエティーで終わっていたと思います。石坂さんには番組に品位と格をつけていただきました。今でも本当に感謝しています」

そしてこの番組が長年放送されたことでテレビ東京というテレビ局全体の信頼性アップにも大きく貢献したことは間違いないでしょう。

今回の降板騒ぎは、プロデューサーとの軋轢により、この2年間石坂さんの発言が意図的な編集ですべてカットされていたことが原因と言われています。

これをテレビ東京は否定していますが、筆者の経験からもそんなことがあり得るだろうかという疑問が拭えません。

筆者は2回ほどですが石坂さんと番組でご一緒したことがあります。発言は明解でテレビのツボを心得た方です。石坂浩二さんは話のわからない方ではありません。さらにお宝の類いには興味も知識も充分にお持ちですから、収録した中にひとつとして使えるフレーズがなかったなどということは考えられません。

一方で編集はプロデューサーではなくディレクターが担当しますので、あり得ないほどの権力を持ったプロデューサーからディレクターに対して「使えるところがあっても石坂さんの発言はすべてカットしろ」という指示でもない限り2年間も全面カット状態が続くとは考えられません。

しかも、それは「極めて異常な指示」です。

百歩譲ってこうした「極めて異常な指示」があったと仮定しても、番組に表れているこれほどの不自然さは局の上層部、編成や営業、代理店やスポンサーサイドからもなんらかの指摘があるはずで、なぜこれほど異常なことを長い間続けることが出来たのかは謎と言うしかありません。

結局のところ、石坂浩二さんは降板することが明らかになりました。不死鳥のような『開運!なんでも鑑定団』もいよいよ曲がり角にさしかかったようです。

長く好評だった番組は多くの場合、番組の若返りとか視聴者ターゲットを若者にも拡げる、などという理屈で方向転換をはかるのですが、これがなかなか難しく失敗することが少なくありません。案の定この番組も同じようなことを言っています。

石坂さんの代わりは「ジャストミート!」の福澤朗さんだそうです。石坂さんには昔から「番組の重し」であって、司会をしていたという印象はありません。

福沢さんに「番組の重し」は務まりませんから、これは交代ではなく、今田耕司さん単独司会の番組に福沢さんが加わって男二人でしゃべり倒すような番組に変わるような予感がします。名物アシスタントの吉田真由子さんも降板します。

こうして若者にも受け入れられるようにリニューアルするということですが、福沢さんというキャスティングはどうなのでしょうか。これで曲がり角をうまく曲がれますかどうか。

一方で、石坂さんはBSジャパンで新番組『開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン(仮)』に出演されるようです。石坂さんの貢献度を考えればこの程度の番組をテレビ東京が用意するのは当然でしょう。

この番組がどういう番組になるのかわかりませんが、ご本家『開運!なんでも鑑定団』の方はなんだか雰囲気が変わってしまいそうですから、こちらの新番組の方に期待したいような気がしています。

 

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両角敏明

両角敏明(もろずみ・としあき)テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけてきた。