<三中企画を餌に視聴者を引っ張る?>三中元克をクビにした「めちゃイケ」の「卑しい手口」


高橋維新[弁護士]

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2016年2月27日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!(めちゃイケ)」4時間スペシャル。メインは、素人からプロの芸人になった三中元克がめちゃイケに居続けられるかどうかを視聴者の投票で決めるという生放送企画である。

ただ、この三中企画は番組の最後の最後に位置しており、前半は違う企画も放映していた。

以下、一つ一つ見ていく。

<オカ柳徹子>

黒柳徹子に扮した岡村が、秋田県の「岡村」という集落に(おそらく)仕込みなしのアポなしで突撃し、そこで偶然出会った素人と絡む企画である。このコンセプトは、完全に「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK)と一緒であり、特に目新しさはない。

この企画では仕込みなしで素人と絡むことになるため、きちんと撮れ高を確保するにはできるだけたくさんのおもしろい素人と出逢う必要がある。この素人のおもしろさを引き出すのは、ロケに出向いたタレントの役目である。鶴瓶は、この能力が異常に高い。

理由を察するに、まずハゲとブサイクのフラで固められた見た目が、全体的な「話しかけやすい雰囲気」を醸し出しており、素人でも絡みやすいからだろう。そのうえきちんとツッコミができるため、素人のおもしろいところが出ればいちいち拾うことができる。

この「話しかけやすさ」と「ツッコミ」が素人との絡みでは非常に重要である。他のタレントだと、例えばさんまはどちらも申し分ないが、とんねるずは普段の傍若無人な芸風から素人では話しかけにくいうえに、ツッコミも程度がきつすぎるために素人相手にやると視聴者を引かせてしまうことになるため、向いていない。

今回の岡村はどうか。岡村も、鶴瓶と同じようなストレートなフラを持っているため、視聴者からすると話しかけやすいのは確かである。また、ツッコミも一定水準の能力を持っている。そのため、鶴瓶と同じような役回りをできることはできる。

ただやはりボケのイメージが強いため、岡村が素人のボケにツッコんでも少し寒さが残る。特に今回はわざわざ紅白の派手な衣装を着て黒柳徹子に扮し、フラを上乗せしていたため、見た目からしてボケている岡村に素人のボケが重なると少し画が散り気味になっていた。ゆえに岡村の恰好については、もうちょっと考える必要があるだろう。

あと、鶴瓶はどちらかというと絡む相手の年齢層が高いのだが、今回、岡村が絡んでいる人は若い人が多目だった。2人のファンの年齢層の違いに起因するものであろうが、若い素人はどうしても前に出てこようとするため、映像が痛々しくなりがちである。

素人の良さは「天然ボケ」であり、テレビで目立とうとしてちょける10代・20代よりは、カメラを意識せずに年の功の特権で好き勝手なことを言うジジババの方が圧倒的におもしろい。そういう意味では、やっぱり鶴瓶の方が向いている企画である。

<矢部オファー>

矢部に色々な仕事をさせる年始の恒例企画。今回は、「BUDDY」というスポーツ教育に力を入れている幼稚園に先生として参加していた。

矢部オファーは、一昔前のバラエティによくあった、芸能人に異種の職業を体験させるドキュメンタリーである。これがエンターテインメントたりうるのは、畑違いの分野に首を突っ込んでいるのに、その状態で何らかの結果を出せば、それが視聴者の感動を生むからである。

そのオチの前段階には、慣れない異分野で指導役の人から怒られる芸能人を見せられることになるだけに、感動のカタルシスも大きくなるのである。

つまり、「めちゃイケ」が志向する笑いのエンターテインメントではない。めちゃイケで、続けてはいけない企画である。

現に、毎回矢部オファーで笑えるのは、オカレモンが出てきてミニコントをするシーンだけなのである。オカレモンが頑張っている矢部を邪魔したり揶揄したりして、それに対して矢部が怒って喧嘩をすることで、笑いになるのである。

まあ、今回の矢部オファーもここで書いている内容から一歩も外に出なかったので、特に追加で書くことはない。

<三中企画>

前半は、三中が相方と芸人として活動し、今回の生放送に至るまでの道を隠し撮りの映像でまとめたVTRだった。前回の放映で頭出しされた内容である。

VTRでは、三中が色々な芸能事務所のオーディションを相方と受けに行く。「めちゃイケ」は、事務所の協力を得て全てのオーディションにカメラを入れる。

相方にも協力してもらって、解散を持ちかけるというドッキリを仕掛けてみる。その翌日には「タイミングよく(=おそらく仕込みで)」ある芸能事務所(人力舎)から「三中一人とだけ契約したい」というオファーが来る。

要は、ただの三中に対するドッキリなのである。相方と解散の話をした翌日に人力舎から一人契約のオファーが来るところなどは話ができ過ぎている。ドッキリなので、三中の素人・天然という良さは十二分に出ており、VTR単体では及第点をあげられる出来になっていた。

あるオーディションでたまたま一緒になった別の芸人が、相方からの解散話の際に登場するというような念入りな伏線の張り方も、往年の「めちゃイケ」ドッキリの水準に達していたと言ってよい。加えて、前回の放送で「だらしない」という印象を徹底的に植え付けられた三中の一生懸命なところにフィーチャーしており、名誉を挽回する作りにはなっていたので、気持ち悪さは一定程度減退していた。

さて生投票の結果、三中は結局不合格で「めちゃイケ」を卒業することになった。今回のオンエアでも散々指摘されていたが、三中はアドリブでおもしろいことは全く言えていないし、ネタでのパフォーマンスも褒められたものではない。

根本的な問題として演技力が低いので、例えば今回のネタだと「いけしゃあしゃあとバレバレの嘘をつく」というボケは全然伝わってこなかった。三中はやっぱり芸人には向いていないので、本人は早くそのことに気が付いた方がいい。

だから、今回の不合格という結論には筆者は異論はない。唯一、三中がアンタッチャブルの柴田と即興で絡んだくだりは大変おもしろかったので、いじられキャラの天然芸人なら生き残る道はあるかもしれないが、そのキャラは今回の三中のように目立とうとしたら終わりである。

「めちゃイケ」は、この結果を望んでいたのだろうか。筆者は望んでいたと思っている。もう使いでのなくなった三中を追い出すためにやったのが今回の企画であるとすら思っている。

三中の芸人としてのパフォーマンスが低いことは、普段近くで接しているめちゃイケのスタッフはよく分かっていたはずである。その三中が付け焼刃でネタを作っても、視聴者に受け入れられるものはできないだろうというのが番組の見通しだったと思う。

なんなら、あの相方ですら番組の仕込みで用意されたのではないかと筆者は思っている。現に、相方は番組のドッキリに1回協力しているのである。相方がなぜ三中とコンビを組むことになったのかの経緯が一切語られない点が、この憶測を強くしている。

今回のオンエアがされる前の視聴者の予想では、結局出来レースで三中が残ってお涙頂戴の感動オチだろうというものもあった。

確かに、不合格という結果に、ゲストで来ていた鈴木奈々は素に見える驚き方をしていた。最後に出てきた横断幕にも「おめでとう」としか書かれていなかった。不合格になったことが宣明されただけで、オチも一切なかった。

このへんに着目すれば番組側は三中を残したかったと言えるかもしれないが、まあ、真相は闇の中である。ただ、不合格になった場合のオチが用意されていなかったのはいただけない。それは、どちらの結論にもなり得ることを予測したうえで、何か準備しておくべきだったろう。

<総評>

今回の結果次第では3月打ち切りという声もある中での放映だったが、少なくとも三中企画は一定の結果を出したように思う。ただ、その前の2本の企画はそれほど新鮮味も面白味もなかった。

そのため全体としては番組の最後に位置づけた三中企画を餌に視聴者を引っ張る構成になっていた。古いテレビの嫌らしい手法である。このやり方を茶化してこそ「めちゃイケ」なので、わざわざこのレベルに堕すのはいただけない。

三中企画も、三中が残るかいなくなるかの生放送で視聴者を釣るという内容であって、一回しか使えないカンフル剤である。今回数字が良くても「めちゃイケ」は綱渡りを続けることになるだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。