<「生」で体感する臨場感>舞台女優・及川奈央が語る舞台の魅力


清水綾一[放送作家/ライター]

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映画やテレビ、ドラマとは違った魅力を持つ舞台の芝居。熱心なファンでないとなかなか観る機会はないかもしれない。しかし、エンターテイメントが多様化し、飽和している今日だからこそ、舞台に馴染みの薄い層にこそ、新鮮な面白さがある。

大森ヒロシ氏(劇団東京ヴォードヴィルショー)は「今、金を払ってみる『笑いの舞台』こそ面白い(http://mediagong.jp/?p=15642)」と語る。すべてが「フリー(無料)」で見れてしまうネット時代の今だからこそ、観劇料をとって笑いを提供する舞台の演者たちは皆、「楽しませる責任感」を強くもっているのだろう。

そんな大森氏が主催する大森カンパニーによるプロデュース公演『更地ベスト~SAKURA~』(3/29~4/3・下北沢シアター711)に出演する女優・及川奈央さんに舞台の魅力について聞いた。

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(以下、インタビュー)

 テレビや映画などで活動する及川さんですが、「年に一度は舞台に出演する」とご自身で決めていると伺いました。そこまで及川さんを引きつける「舞台の魅力」とはなんでしょうか?

及川奈央(以下、及川)「舞台の魅力。それは映像とは違い『生で』お客様の反応を味わえるということです。笑い声が直接体に響いてくると心の底から嬉しく震えます。お客様ばかりではなく共演する役者さんひとりひとりの呼吸、表情、感情の動き、汗や涙の一粒までも、目の前ですぐそばで体感できます。芝居の人物が、そこに『存在』しているのです。」

 お客さんと出演者の両方から「生(ライブ)」でリアクションを体感できることは、他の媒体ではなかなか経験できないことですよね。

及川「生だからこその緊張感、そして臨場感がある。お客様ひとりひとりの感情が動き、劇場の空気感がどんどん変わっていく。それを感じられるのは舞台女優の何よりの特権です。」

 舞台の稽古といえば、厳しいイメージですが、今回出演する『更地ベスト~SAKURA~』でははいかがでしたか?

及川「稽古は楽しいけれど緊張の連続でもあります。役と向き合い、ときに共演者と話し会い、ときに演出家とぶつかりながら、創り上げていく過程がどんなに大変で苦しくても、それは、お客様の笑い声や涙や拍手に、何よりもの幸せを感じられるための助走なのです。」

 舞台の芝居を見たことがない人は多いと思いますが、そういう方たちへ、ぜひメッセージを。

及川「千秋楽、すべてを終えた後の達成感は、舞台ならでは。それも舞台の醍醐味。だからこそこの醍醐味を多くのお客様にも一緒に味わって欲しいのです。」

(以上、インタビュー)

及川さんのコメントからは、実際に行った人にしか味わえない緊張感・臨場感こそが舞台の最大で魅力であり、醍醐味であることが伝わってくる。もちろん、テレビやDVDのような映像でも、舞台を観れる機会はある。しかし、セリフや内容が同じでも、実際の舞台で体感できる臨場感は画面を通してでは決して伝わらないこともまた事実だ。

テレビや映画が普及するまでは、芝居はもとより、落語や演芸など、すべての娯楽は寄席や舞台の上にあった。テレビや映画などよりも、ましてやインターネットよりもはるかに長い時間をかけて作り上げられてきた「舞台の娯楽」には、現在のメディアにはない完成された表現、魅力は少なくないだろう。

「なんだか最近、面白いことが少なくて・・・」と感じている人であれば、ぜひ一度、劇場に足を運んではみてはどうだろうか。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。