<テレビ番組は誰のものか>テレビ番組は視聴者のもの?それとも・・・?


保科省吾[エッセイスト]

 

ライブドアのフジテレビ買収騒動のころ、アメリカで日本の都市銀行の頭取を務めた経歴を持つ経済アナリストと論争になったことがある。

「会社はだれのものか」

その問いにS氏は「完全に株主のものである、会社は株主の利益が最大限になるように努力しなければならない」と答えた。経済の専門家ではないどころか、経済には疎い僕が論争を挑むような相手ではない。でもその時、筆者は、S氏の断定的な口調に無性に腹が立ってしまい、思わず反論した。

「会社は社員のものでもあるのではないか」

もちろん、S氏は一顧だにしなかった。

「それは、資本主義を知らない人が言うことだ」

「だから、日本の会社は世界の孤児なんだ」

「ジャパンスタンダードは通用しない」

翻って、私は、時々見る日本のテレビ番組のことを考えた。アメリカABCの契約プロデューサーである、Mr.Dは、時々私に言う。

「日本のテレビ番組の企画は世界で一番進んでいる。アメリカはほとんどがテレビショウで、企画でアメリカから学ぶべきものは、もう何もない」

本当にそうか、と私は思う。積極的に見たい番組は一つもないからだ。なぜ、一つも見たい番組がないのだろう。経済アナリストのS氏に発した問いを思い出した。それをテレビに援用すればこうなる。

「テレビ番組はだれのものか」

テレビの制作者である友人のO氏は常々こう言っている。

「テレビ番組は視聴者のものである。製作者は視聴者のことだけを考えて娯楽や情報を届けている」

そういえば「みなさまのNHK」とも言う。と私は考える。しかし、突然ひらめいた。今のテレビ番組が面白くないのは

「番組は作っている俺の、私の、ものだ」という迫力が感じられないからなのではないか。

ところでS氏だが、堀江氏や村上氏が逮捕されて以来、「会社は株主のものだ」と言わなくなった。このあいだテレビに出ていたS氏は「会社は社員のものである側面もありますよねえ」と言っていた。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。