<テレビは「騙し」のメディアである>視覚も聴覚も触覚も味覚も嗅覚も、全て騙す。

保科省吾[コラムニスト]

 
テレビとは、「騙し」のメディアである。テレビは私たち人間のどこを騙しているというのか。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。人間には五感がある。このうちテレビはものを伝えるのに視覚と聴覚しか使わない。
例えば、テレビショッピング。高級感あふれる毛布に美人タレントが顔を埋める。笑顔、音楽。「柔らかそうな毛布だなあ」触ってもいないのに、触覚は無視してみる人を騙す。
高校野球で振り切った金属バットが硬球をたたく。カキーンという音さえする。触覚は無視してみる人を騙す。ワインクーラーにはいった大量の氷。シズル感、味覚は無視して人を騙す。
中華鍋で野菜を炒めるジャージャーという音。投げ入れられる真っ赤な鷹の爪。味覚も嗅覚も無視して人を騙す。
ブラジルの至宝、ネイマールの背中に膝蹴りを食らわせた、コロンビアのDFフアン・スニガ。音さえ聞こえなかったのに、聞いた気もした。痛覚も騙された。
ことほど左様に、テレビは容易に人を「騙す」。だから見るほうは騙されてはいけないし、作るほうは、「騙し」につながらないよう、細心の注意が必要なのである。
 
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