生徒が教師を驚かせてこそ、ほんとうの教育[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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ぼくが最初に家庭教師をしたのはなんと高校生の時で(近所の小学生のお母さんがたのんでいらした)、それ以来、予備校や今の大学まで、いろいろな場所で教えてきたけれども、その経験から一つ言えることがある。

それは、教育とは、教師が完全情報を持っていて、その部分集合を伝え、時にはテストしてスコアリングする限り、あまりおもしろいことが起こらないということである。ほんとうに面白いことは、生徒側がサプライズするときに起こる。

いま注目されているアクティヴラーニングにしても、面接重視の入試にしても、あるいは志願のエッセイにしても、鍵になるのは、生徒が教師(ないしは評価者側)を驚かせることがある、ということにあるのではないか。

たとえば、ハーバードのサンデルさんの授業はネットで公開されているけれども、あの対話の中で、サンデルさんの予想を超えた、あるいはサンデルさん自身も気づいていなかったような点を学生が発言して、サンデルさんが感動しているような雰囲気の瞬間がある。

【参考】<実社会から乖離する司法>ろくでなし子「女性器データ」が有罪判決[茂木健一郎]

ハーバードやケンブリッジは入試で長時間のインタビューをするけれども、その時も、実は、志願者の発言から、評価者側が学んだり、「へえ、それは」と感嘆したり、そのような瞬間が必ずあるように思う。

今流行り始めた、スクラッチをつかったプログラミングでも、子どものつくってきたものが、教師の想定しているものを超えているときに、ほんとうに教育が成功しているように思う。考えてみたら、それは、人間と人間の関係の基本だと言えるだろう。

このように考えると、一般に、教師が正解の完全リストを持っていて、生徒の反応をそれと照合してスコアリングするようなタイプの教育が、いかにつまらないかということが見えてくる。

生徒が教師を驚かせてこそ、ほんとうの教育なのである。それは、教師にとっても同じことだろう。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。