<イギリスは観光客の4割がライブ目的?!>「LIVE!地方創生」で参院選に挑む伊藤ようすけ氏のスゴい若者政策


「LIVE!地方創生」というコンセプトで参院選に立候補している歌手・伊藤ようすけ氏。90年代からエンテータインメントの世界で活躍し、サラリーマン(山一証券、森永製菓)とアーティスト活動(シャインズ、東京プリン)を並行しながら、CM制作の分野でもさまざまな実績を残している。そんな伊藤氏が国政に挑む政策がユニークだ。

一言で書いてしまえば、「地方にライブやコンサートをどんどん誘致すれば、高い経済効果を上げることができる」というもの。

伊藤氏のエンタメ業界でのキャリアは高く評価されている一方で、それを「なぜ国政でやるのか? 政治がすべきことなのか?」と思った人は筆者に限らず多いはずだ。そこで、本稿では、「LIVE!地方創生」を旗印に国選に挑戦する伊藤ようすけ氏に直接聞いた。

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ーー なぜ、「LIVE!地方創生」を国政でする必要があるのでしょうか?

[伊藤ようすけ氏(以下、伊藤)]まず、面白いデータがあります。平成26年に人口が増加した都道府県は、上から東京都(人口増加率0.68%)、沖縄県(同0.40%)、埼玉県(同0.23%)、神奈川県(同0.19%)、愛知県(同0.17%)、千葉県(同0.08%)、福岡県(同0.03%)の7つしかありません(平成26年道府県別の人口増減率・総務省統計局)。しかも、このうち関東地方である東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県の4つは、「出生率」では、東京都がワースト1位、神奈川県と埼玉県がともにワースト6位、千葉県がワースト9位といったぐあいに、全てワースト10に入っています。(平成26年都道府県別にみた合計特殊出生率・厚生労働省)

ーー 人口が増えているベスト4に入る都道府県が、出生率ワースト10に入っているわけですね。

[伊藤]そうなんです。そしてこれは「若者の地元離れ」を意味しているんですよね。若者たちが地元を離れて東京に来るから、東京の人口は増える。でも、出産して増えているわけではないですから、日本の人口は増えていません。人口は国力に直結しますから、若者たちが地元にとどまって、子ども産み、人口が増やなければ、日本の未来は危機的です。もちろん、都会、特に東京にはいろいろな魅力があるので、地方の若者たちが地元を離れて都市部に行くことは仕方がありません。しかし、私は別の理由で地元(地方)を離れてしまう若者たちの存在に、大きな危惧を持っています。それは、「仕事がないから、地元を離れざるを得ない」という若者たちです。仕事があれば地元を離れる必要のない若者たちが、どんどん都市部に流出する。その結果、どんどん地方の活力はなくなりますし、人口も減ってゆきます。

ーー 仕事があれば、若者は地元を離れることはない、と?

[伊藤]もちろん、仕事だけではありませんが、仕事の有無は最大の要因のひとつでしょう。「東京に行かなくても、仕事もあるし、刺激もある」となれば、地元でかんばる若者は増えるはずです。

ーー なるほど。東京に行かなくても若者たちが「仕事と刺激」を得られる環境こそ、ライブやコンサートのようなエンタメ事業の地方誘致なわけですね。

[伊藤]コンサートやライブ・・・と聞くと、なんだか若者消費に特化した限定的なイメージがありますが、そうではありません。海外の例でいえば、イギリスを訪れる観光客の4割は音楽イベント(ライブ)が目的であるという説もあるぐらいです。

ーー 実際にそれによって日本でも経済効果、特に若者たちが地元を離れなくなるような魅力的な効果はでるのでしょうか?

[伊藤]例えば、ジャニーズアイドルである「嵐」が昨年2015年に宮城県で開催したコンサートの経済効果は4日間で93億円と言われています。6月に新潟で開催された「AKB総選挙」の経済効果も15億と報道されています。これはチケット代金だけではなく、それに付随した飲食店や宿泊施設なども含まれています。つまり、人気アーティストのコンサートは、単に、そのイベントだけの利益ではなく、それに連動して地元にも大きな経済効果をもたらすのです。もちろん、そこには雇用も生まれ、仕事も発生します。「嵐」の1組だけで93億円もの経済効果をもたらすわけですから、それを行政が支援して広げることができれば、開催地域となる地方にもたらす経済効果は計り知れません。

ーー 現在でも様々なアーティストがいろいろな場所でコンサートやライブをやっていると思いますが、それだけではダメなのでしょうか?

[伊藤]経済効果があるような大きなコンサートやライブがどういった地域で開催されているか知っていますか? 例えば、都市部でのコンサートに1回で何万人も集めるような大人気アーティストであっても、彼らのコンサートは、東京・大阪・名古屋・札幌・福岡の主要5都市圏でしか開かれません。それはなぜか、と言えば、開催しても「赤字」になってしまうからです。アーティストたちは、全国でコンサートを開き、ファンと直接の触れ合いたいと思っています。しかし、開催しても「赤字」になってしまうので、したくてもできないのです。

ーー 開催しても地方ではお客さんが来ないのですか?

[伊藤]いえ、もちろん人気アーティストであれば、開催すれば人は集まるでしょう。しかし、人気アーティストであれば、作るステージや企画も大規模でクオリティが高く、そこには大きなコストがかかります。その制作費を差し引くと、満席のお客さんが集まっても「赤字」になってしまうのです。

ーー それはなぜですか?

[伊藤]まず、制作費をペイできるほどの人を収容できる会場がありません。加えて、日本には厳しい「火災予防条例」がありますから、収容定員以上のお客さんを入れることもできませんので、「赤字」になってしまいます。その結果、地方では人気アーティストのコンサートやイベントは開かれづらいのです。これは、企業やアーティスト側の努力ではどうにもならない問題です。

ーー そういった問題に、政治はどのようにかかわるのでしょうか?

[伊藤]そこには幾つかのポイントがありますが、まず第一に、地方でも様々なコンサートやイベントなどが開催できるように、行政が補助金などを出して支援する、という方法です。

ーー 確かに良い案だとは思いますが、一方で、イベントを開催する企業への利益誘導になってしまうことにはなりませんか? イベント企業の利益になってしまうことに、税金を投入することに批判的な納税者は多いと思います。特に、伊藤さんの場合は、国内大手であるエイベックスの所属ですから、「エイベックスへの利益誘導じゃないか?」といった批判もありそうです。

[伊藤]そういった指摘を受けることも多いのですが、決してそうではありません。行政主催のコンサートを招致するとか、利益分を行政が支払う、という意味ではありませんので、イベント企業への利益誘導や利益還元はできない仕組みです。あくまでも、「地方へのライブ誘致補助金制度」のような形で、イベントを制作する上で、赤字になってしまう部分を補填する。アーティストたちが、「赤字確定」になっている地域でのコンサートを開きやすいようにすることが目的です。

ーー 「LIVE!地方創生」で示されているような試みは、やはり、政治の力がなくては難しい?

[伊藤]難しいですね。企業が赤字覚悟でも地方開催をすれば、もちろん、地元は潤います。なかなか都会に来れない地方のファンも喜びます。経済効果も高まるでしょう。しかし、開催する企業が赤字になってしまえば、元も子もありません。企業は赤字を被ってまで、地方のためにコンサートをしようとは思わないはずですから。

ーー 確かに、今さら高クオリティの大型コンサートができるようなホールや施設を乱造する「ハコモノ行政」はナンセンスですから、やはり、そこで発生する赤字分を、行政から支援する、ということが必要かもしれませんね。

[伊藤]それに加えて、もう一つ、行政が関わらなければならない問題があります。コンサートホールなどの施設に設けられた非常に厳しい「火災予防条例」です。日本では施設の安全管理が非常に厳しく定められています。もちろん、それは非常に重要なことですが、一部で、そのあまりの厳しさから、魅力的で、経済効果の高いイベント自体が開催できない・・・といった問題も発生しています。例えば、海外の人気アーティストで「○○年ぶりの来日公演」といった告知を目にします。これは見方を変えれば、「世界中を飛び回っている海外のアーティストが何年も日本にこなかった」ことを意味します。その理由は、やはり「火災予防条例」も要因の一つになっている場合があります。日本の「火災予防条例」では、彼らが志向しているコンサートの作り込みができない。十分なコンサートが作れない。だから日本には行かない、行けない、となるのです。多くの場合、アジア地域では、日本をすっとばして中国などで開催をしているわけです。

ーー なるほど、海外アーティストの来日や世界的なイベントも、やれなくなってしまうわけですね。日本が膨大な経済効果を取りこぼしているのは勿体無い!

[伊藤]現在、私が政策として掲げている「LIVE!地方創生」。この根幹は大きく2つです(1)地方へのライブ誘致補助金制度化、(2)火災予防条例の緩和、です。もちろん、それをいきなり全国区ですることはできませんが、まずは「ライブ特区設置」のような自治体を作ることから始めます。「若者が離れない地域」「高い経済効果を上げている地域」をモデル地区として実現させることができれば、それを全国に広げてゆきます。究極の「地方創生」プランであると思っていますが、それだけではなく、日本中でさまざまなアーティストのイベントを楽しめる、海外からのアーティストに会える「世界有数のエンタメ大国・日本」を目指して行きたいですね。

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ライブの地方誘致で若者の雇用を産み、経済効果を高めるという伊藤氏の政策。他の候補者たちとの差別化も明確で、実現性も高そうだ。ユニークで魅力的な政策だが、有権者には果たしてどのように映るのか?

限られた時間の中で、政策の魅力を具体的に、どこまで伝えられるか。どこまで理解してもらえるか。支持母体を持たない伊藤ようすけ氏の最大の課題だ。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。