<大手メディアの軟弱報道>オスプレイ事故が浮き上がらせた対米従属の構図

政治経済

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]
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沖縄で12月13日夜に起きた垂直離着陸機オスプレイの県内で初の墜落事故は、大惨事の恐怖と同居する県民の怒りとともに、日米安保条約の下で沖縄に君臨する在沖米軍幹部の居丈高な言動と、日本政府の卑屈な対米従属の姿勢をあらためて浮き上がらせた。
<沖縄の地元紙は欠陥機の撤収と海兵隊の全面撤退を要求>
沖縄の地元紙・琉球新報は15日付の社説で「この危険で不気味な灰色の機体が飛ぶ限り、どこに落ちてもおかしくない。県民の命と尊厳を守り、犠牲者を出さないためになすべきことが一層鮮明になった」と指摘。
オスプレイの撤収のほか、欠陥機を運用する在沖米海兵隊の全面撤退と辺野古新基地の建設断念などを強く求めている。
<「住民の被害がないことに感謝すべき」と米軍幹部らが暴言>
今回、とくに県民ら憤りを買ったのが、15日に安慶田光男副知事の抗議を受けた在沖海兵隊トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官が「操縦士は住宅、住民に被害を与えなかった。県民に感謝されるべきだ。表彰ものだ」などと暴言を吐き、抗議されること自体に不快感を示すなど、沖縄を見下す「植民地意識丸出し」(安慶田副知事)の態度を露わにしたことだ。
【参考】北海道警察の「マスコミ言論封じ」とそれに「手打ち」したNHK
さらに、この暴言を追認するかのように、若宮健嗣防衛副大臣が「何とか浅瀬に着水できた。(事故は)不幸中の幸い」と、県民の神経を逆なでする発言をしている。しかし、何と事故当日、別のオスプレイも普天間基地で胴体着陸する事故を起こしていた。
<在京各紙は「墜落」でなく政府に合わせ「不時着」の言葉を使用>
さて在京各紙は、オスプレイの事故をどう報じたのか。私が読んだ限り、安倍晋三政権寄りの読売や産経には、米軍幹部らの暴言に対する批判的な論調は見られず、沖縄県民の怒りもほとんど伝わってこない。
ただ、大々的に展開した東京や朝日などを含め各紙とも、事を穏便に済ませたい政府の発表に合わせて「不時着」の言葉を使い、沖縄2紙のように「墜落」をはっきり見出しにとった新聞はない。政府の顔色を窺う大手メディアの腰が引けた報道姿勢の表れだとしたら、何をか言わんやである。
<日米同盟の根幹には切り込まず>
一方、日米地位協定により日本側は今回も事故の捜査から外されたが、全国紙は総じて事故の表面をいじるだけで、日米同盟根のあり方を問う骨太の記事を私は目にしていない。
 
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