<HOGO NAMENNA>「生活保護なめんなジャンパー」の背後に潜む実態を報じよ


保科省吾[コラムニスト]

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神奈川県小田原市で平成19年以降、生活保護受給者の自立支援を担当する市職員ら64人が、英語で「不正受給はクズだ」などと背面にプリントされたジャンパーを自費で作り、勤務中に着ていたことが報じられている。

左胸部分には「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と読めるエンブレムも付いており、一部の職員は着用して受給者宅を訪れていた。小田原市はこのジャンパーの使用を禁止し、担当部長ら7人を厳重注意処分とした。

市によると、19年7月、生活保護の受給資格を失った男が職員2人を切り付けた事件を機に作られた。職員らは28人が現職。ジャンパーの背面には「私たちは正義だ。不正が発覚したときは追及する」などと英語で書かれていた。係長だった職員は「仕事がきつく、士気を高めたかった。受給者向けのメッセージではない」と釈明している。(夕刊フジより要約引用)

この行為は決して許されるべきものではない。短絡的で誤解を招く、その後の影響を考えない行動は決定的な想像力不足である。ジャンパー背面の英文を全文見てみる。

We are “the justice” and must be justice,so we have to work for odawara. Finding injustice of them,we chase them and Punish injustice to accomplish the proper execution. If they try to deceive us for gaining a profit by injustice, “WE DARE TO SAY,THEY ARE DREGS!”

以下拙訳。

<我々は正義である。そして正義であらねばならない。我々は小田原市の為にこそ働かなければならない。不正受給を見つけ、追いかけ、罰する。適正な給付を達成する。もし不正受給を得る為に我々を騙そうと者がいるのなら、『あえて言おう、「不正受給者はカスである」』>

ところで、この背面の英語表記は前半部分は特に問題があるとは思えない。問題があるのは「THEY ARE DREGS!」の部分である。DREGSはカス、滓、澱などの意味であり、drink to the dregs(一滴も残さず飲む)、the dregs of society (社会のくず)などの表現がある。

【参考】<フジ記者が暴力団関係者に名義貸し>接待に恩義を感じさせるヤクザの技術

最後の一文を見て「あえて言おう。カスであると」とプリントされている「ガンダムTシャツ」を来ている若者を思い出した。このセリフはTVアニメ『機動戦士ガンダム』において、ジオン軍総帥ギレン・ザビが演説中に言ったセリフなのである。

おそらく小田原のジャンパー制作者はそれ知っていてこの文言をプリントしたのである。ただし元来の『機動戦士ガンダム』の英訳スーパーでは、「I say now that so weak a force…」となっている。

いずれにせよ、当該ジャンパーで、それをDREGSと表現してしまったところは、弁解の余地はない。実際に10年間、問題にならなかったからといって、英語で書いてあるから分からないだろうという言い訳も通用しない。

それにしても、本来の生活保護受給者をも圧迫する、不正受給者はどれくらいいるのだろうか。厚生労働省は、平成23年度に生活保護費全体に占める、不正受給金額の割合を0.5%と公表したが、これは金額ベースであって実態を反映しない。

同じ平成23年の不正受給件数は3万5568件で、全生活保護受給世帯数に占める不正受給件数の割合は2.4%(平成23年度)となる。データが読めるデータリテラシーも必要だが、こういった不正受給をなくすには、担当者への不正受給事例の取材が不可欠である。

敢えて、例は述べないが、生活保護の担当職員が、どんな怖い目にあったのか、どんな悪どい手法を使われたのか、その事例を公開すること、その取材をメディアが行うことが必要なのである。

発表報道を追いかけるだけでは、ジャーナリストではないだろう。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。