<森友問題>誰も言わない谷査恵子FAXミステリー


両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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ボヤのうちに火を消しておかないからとんでもないことになりました。まさかと思っていた安倍さんのお宅にまで延焼しています。テレビ的に考えると、森友問題がこれほど大きく広がっていったひとつのメルクマールは2月27日(月)でした。

2月8日に朝日新聞が報じて以降、一般紙では朝日、毎日、テレビニュースではテレ朝系と TBS系が時折伝えていたものの、ほかの一般紙およびテレビ各局が伝えた情報量は多くはありませんでした。とりわけ各局の生ワイド番組はもっぱら金正男氏暗殺事件や小池都知事がらみばかりで森友問題には関心を示しませんでした。

それが一転して、「ひるおび!」「ゴゴスマ」「ミヤネ屋」などをはじめ、生ワイド番組がほぼ一斉に森友問題を報じ始めたのが2月27日(月)でした。

そろってアクセルを踏んだのは、その前週24日(金)の国会で、すでに「関係していたら首相も議員も辞める」と驚きの過剰答弁をしていた安倍総理が、今度は昭恵夫人の名誉校長辞任を明らかにし、加えて籠池氏を「しつこい人」と言い放ったことと無関係ではないでしょう。この日、生ワイド番組が出揃ったことで、もはや森友問題はボヤではなく火災になりました。

これ以降、日替わりで新ネタが掘り出され、稲田朋美防衛相や安倍昭恵夫人さらに鴻池祥肇氏、菅野完氏という印象の強いキャラクターが次々と登場することで世間の注目が高まり、生ワイド番組はますます多くの時間を森友問題に割くことになります。

この間、政府・自民党の鎮火作戦はことごとく失敗、とうとう無理やり証人喚問を提案して籠池氏を呼びつけ、人格否定作戦を敢行しましたが、これまた見事なほどの自爆に終わったようです。証人喚問後も自民党はテレビで籠池氏の人格否定を続けています。

【参考】<批判は思想の違い?>安倍昭恵夫人のズレた感性と軽率さ

しかしおそらくこの作戦は逆効果です。世間はすでに籠池氏の言動の一部に疑問符がつくことは充分承知しています。それをいまさら言い立てるのは手詰まり感の表れであり、政府、自民党がよってたかって籠池氏個人の人格攻撃をするのは見苦しいという印象を与えかねません。

政府、自民党という日本最高の組織が適切な対応策を打ち出せず、いまもナニワのオッサンの言動に振り回されているのは、ある意味滑稽でもありますが、国家の危機管理対応能力が心配にもなってきます。

日替わりで新事実が出てくるので、この問題について書くのは不安なのですが、3月28日時点で、どうにも腑に落ちないことを書いておきます。政府が否定する昭恵夫人の関与について、もしかすると重大かもしれませんし、とるに足りないことなのかもしれません。谷査恵子さんという、当時の昭恵夫人付きが籠池氏の依頼にこたえて送ったFAXに関する件です。

証人喚問での質問側の発言、籠池氏の証言、喚問で示された文書、昭恵夫人のFacebook記述、公に示されたこれだけに基づいてFAX問題の経過を書きます。

(1) 籠池氏証言:一昨年10月、お願いがあって昭恵夫人に電話し、留守電に残した。

(2)昭恵夫人FB:留守電が入っていたことは記憶。

「籠池さんから何度か短いメッセージをいただいた記憶はありますが、土地の契約に関して、10年かどうかといった具体的な内容については、まったくお聞きしていません。」

(3)籠池氏証言:明恵氏に留守電を残した後に谷査恵子氏から連絡があった。

「すぐに地元秘書の谷さんに連絡をかけられて、谷さん曰く「急いでいらっしゃるようなので」ということで私の方へ谷さんから連絡があった。」

(4)自民党葉梨氏提示:籠池側から谷査恵子氏への手紙宛名面

*葉梨氏はこれが籠池氏から谷査恵子氏への「依頼の手紙」で、文面も所持と発言

(5)籠池氏証言:谷査恵子氏から FAXをもらう前に電話で同内容の回答があった記憶

(6)自民党葉梨氏提示:11月15日、谷査恵子氏から籠池氏へ回答したFAX。

*FAXの冒頭に「先日は(略)資料を頂戴し、誠にありがとうございました。」の一文

(7) 昭恵夫人FB  秘書からの報告は記憶

「籠池さん側から、秘書に対して書面でお問い合わせいただいた件については、それについて回答する旨、当該秘書から報告をもらったことは覚えています。」

 以上の経過から昭恵夫人はまったく関わっていないと自民党が主張するストーリーは・・・ 

*籠池氏が昭恵夫人に電話し、留守電にメッセージを残した。昭恵夫人はこれを無視した。

*昭恵夫人から連絡がないのにしびれを切らした籠池氏は昭恵夫人を介さずに直接に谷査恵子氏に(葉梨氏が示した)手紙で依頼した。

*これを受け取った夫人付き谷査恵子氏は昭恵夫人に相談せず、個人の判断で国交省に問合せ、自分で回答文を書き、昭恵夫人に報告の上、あくまで私的に籠池氏に回答した。

*よってすべては夫人付き谷査恵子氏の個人活動で、昭恵夫人は一切かかわっていない。

このストーリーは籠池氏の証言をウソと否定しない限り、(3)と矛盾します。さらに、(6)の「先日は(略)資料を頂戴し、」という文言との整合性にも疑問が生じます。

これに加えて、喚問で葉梨氏が示した「依頼の手紙」にも、今のところどなたも指摘していない疑問があります。

自民党ストーリーによれば、昭恵夫人は留守電の内容を谷さんに伝えていません。これは、昭恵夫人は留守電を無視したのだから関わっていない、という主張の前提です。よって谷さんは何も事情を知らないまま籠池氏からの「依頼の手紙」を受け取ったことになります。もしそうなら、この「依頼の手紙」は実に奇妙な内容です。 

【参考】民主主義を否定する稲田防衛大臣?籠池理事長の証人喚問を急げ

この「依頼の手紙」は証人喚問で自民党の葉梨議員が宛名面を見せつつ、文面も持っていると言ったもので、葉梨氏はその後のテレビ出演では宛名面だけでなく2枚の文面もチラ見させています。いつもチラ見だけなのは籠池氏からの私信だからといった理由なのかもしれませんが、文面はわかりません。

ところが日テレがこれを入手してニュースで伝えました。紙は2枚、いずれも横書きです。画面から読み取れた限り、1枚目の書き出し3行は

「小学校敷地の件について

小学校用地として豊中市〇〇〇の国有地・・・

売買予約は定期借地といて契約、国土交通省~」

2枚目書き出し2行は

「安倍総理が掲げている政策を促進する為に

国有財産(土地)の賃借料を引き下げる~」

このように箇条書きだけが書かれています。2枚のいずれにも、挨拶や、お手数ですがよろしく、といった頭書き、もしくは事情を説明する文言は何ひとつありません。これを何も知らない谷査恵子さんにいきなり送っても戸惑うだけですから、挨拶なり事情を説明する「もう一枚」があったと考えるのが自然です。

この「もう一枚」に書かれた文言を見れば、この手紙が谷査恵子氏にいきなりお願いした手紙なのか、あるいは事前に谷さんが昭恵夫人から聞いている留守電の件なのか、明らかになる可能性が非常に高いはずです。しかし、今もって「もう一枚」は示されず、与野党、マスコミを含めて、誰もこれを指摘しないのはなぜなのか、気になります。

 ただ、いきなり箇条書きだけの手紙が来ても不思議でない状況も考えられます。あらかじめ電話などで、谷・籠池間で箇条書で送るという話ができている場合です。そう考えると6)にある、「先日は(略)資料を頂戴し、誠にありがとうございました。」という文言が理解できます。この場合なら、(4)で葉梨氏が示した「依頼の手紙」は、籠池氏と谷さんの間で了解された「資料」を送付した時のものと考えれば辻褄が合います。

以上の要素を含めて、(1)~(7)で示されたことをできるだけ信用して取り込めば、自ずと以下のようなストーリーになります。

*お願いごとのあった籠池氏は昭恵夫人に電話し、ごく大まかな依頼を留守電に残します。昭恵夫人は籠池氏には返電せず、この件を谷査恵子氏に下ろします。

*これを受けて谷査恵子氏はすぐに籠池氏に連絡を入れ、問合せ内容の資料の送付を求めます。

*籠池氏側は葉梨氏が示した封書で箇条書き資料を送ります。

*谷査恵子氏はこの資料に従って各所に問合せして回答を得、昭恵夫人に報告の上、籠池氏に電話で報告、さらに念のためにFAXも送付します。

このストーリーの方が、(3)の籠池氏証言、(4)の箇条書きだけの文面、(6)の「資料を頂き~」という冒頭文、を無視した自民党ストーリーより合理的ではないでしょうか。もちろん事実はわかりません。もしかしたら明日にも手紙の「もう1枚」が公表され、事実が明らかになるのかもしれません。

すべては公務員・谷査恵子氏が個人として為した籠池氏への「丁寧な対応」であって、昭恵夫人はまったく関与していないというのが自民党側の主張ですが、事実により、この無理筋ロジックが崩れたら、安倍政権は深刻な危機に陥りかねません。

森友問題、興味は尽きません。

 

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両角敏明

両角敏明(もろずみ・としあき)テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけてきた。