東京都議選での自民党惨敗必至の情勢 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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小池百合子東京都知事が築地・豊洲問題についての方針を発表した。いったん豊洲に移転したうえで築地を再整備して、5年後に築地市場を再開するというものだ。

小池知事は「アウフヘーベン」というドイツ語を用いて、「 正・反・合」という「止揚」という考え方であることを強調した。

豊洲移転派は、「まずは豊洲にいったん移転」の方針を歓迎せざるを得ない。築地残留派は豊洲移転に反対の意思を示しながらも、5年後に築地市場再開の方針には基本的に歓迎の意思を示さざるを得ない。

小池流のしたたかな方針表明であると表現することができるだろう。ただし、細目は明確でないため、この方針が今後、換骨奪胎されぬよう、監視を強める必要がある。

築地を再整備する場合、移転しない場合には営業を継続しながら工事を行わなければならないという困難がある。一時的な移転であれば、この問題をクリアできる。

豊洲に移転して、5年後に市場機能を築地に再移転する場合には、豊洲の空白をどう埋めるかという問題が生じる。また、築地から豊洲、豊洲から築地への移転に伴う費用負担をどうするかなど、解決するべき課題は多い。

しかし、豊洲に完全に移転してしまう場合には、豊洲市場が今後、巨大な赤字を計上することが予想されている。巨大な赤字の継続は東京都民のふたんになるわけで、築地を再整備して、赤字の出ない市場運営が可能になるなら、長期的に見れば、こちらを選択することが賢明である。

そして、何よりも、食文化の中心拠点としての築地ブランドを維持することが何よりも重要である。

* 食文化の拠点としての築地
* 仲卸および小売りの拠点としての築地

を、「築地ブランド」を維持するかたちで再生できれば、極めて望ましい。

東京都議会の議席構成が自民党と公明・都民ファーストという二大与党勢力によって占拠されてしまうことは問題であり、望ましくないが、都議会構成の問題と築地・豊洲問題は切り離して考えることが必要であろう。

豊洲移転派の最大の狙いは築地再開発利権である。この利権を確保するために、豊洲移転の恒久化を図る策謀が、今後展開される可能性が高い。

小池知事が築地再整備の方針を示すなら、5年後の築地市場再開を確約し、築地市場用地を売却せずに、東京都が再開発して築地市場を整備しつつ再利用することを確約する必要がある。

小池都知事が示した豊洲移転と築地再整備、そして、築地への再移転方針については、「月刊FACTA」2017年7月号に、「築地・豊洲に小池「隠し玉」」が詳報している。内部情報が提供されたものであると見られる。

記事は小池提案を提示した側の視点から書かれており、その点を割り引く必要はあるが、現状を踏まえて、現状のなかでのベストな方策を考案したという意味で、傾聴に値する内容が含まれている。

豊洲移転の最大の問題は、豊洲市場が抱えることになる、

「卸売市場の先細りと恒常的な赤字累積という経済的欠陥」

である。FACTA記事は、

「仲卸を『中抜き』して卸7社の寡占を維持する豊洲は『卸ファースト』であって『都民ファースト』ではない。」

と指摘する。築地市場の活力は、小売りと仲卸を軸とした、観光客が来訪する「マルシェ」の機能にある。豊洲に移転してしまえば、この「マルシェ」の機能は消滅してしまうことになる。

築地に「マルシェ」の機能を再構築して、食文化の発信拠点として再整備する一方、豊洲を巨大物流拠点として再整備する。

脱フロン対応の豊洲の物流拠点としての利用価値は極めて高いと見られている。小池都知事の新提案には耳を傾けるべき内容が多く盛り込まれている。当然のことながら、築地市場の小売り、仲卸業者が豊洲移転、築地再移転に伴う経済的負担に耐えられるような万全の支援体制を敷くことも忘れてはならない。

小池都知事の新提案により、旧態依然、利権ファーストの守旧体質満載の自民党東京都連は都議選で都民の厳しい審判を下されることになるのではないか。
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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。