<始まりはTikTok>話題のニューフェイス、リル・ナズ・X

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藤井夏子[音楽ライター]

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新鋭ラッパー、リル・ナズ・Xの「Old Town Road ft. Billy Ray Cyrus」が米ビルボートソングチャートにおいて18週連続1位を記録し、先週のチャートでの歴代最長記録となる17週を更新した。

リル・ナズ・Xは米アトランタ出身のラッパーで、今作がデビュー作になる。「Old Town Road」は2018年12月に自主リリースという形で発表され、TikTokで話題となった。これをきっかけに大手レコード会社であるコロンビアレコードと契約をするという、これこそ現代のシンデレラストーリーと言えるのではないか。

この曲はヒップホップとカントリーを掛け合わせた今までに無いスタイルの曲だったためか、ビルボードがこの曲を「現代のカントリーミュージックの要素を十分に取り入れていない」として、カントリーのチャートから外す事態までになってしまった。

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リル・ナズ・Xはこの一件を逆に利用し、カントリー界のレジェンドとも言える、Billy Ray Cyrus(ビリー・レイ・サイラス)をフィーチャリングしリミックス版を発表。このリミックス版がたちまち全米、そして今や世界中の注目の的となっている。ちなみにビリーはMiley Cyrus(マイリー・サイラス)の父としても知られている。

この曲は黒人文化を代表するヒップホップと南部の白人というイメージを持つカントリーという正反対とも思える2つのジャンルの融合という点での新しさと、ミュージックビデオ(今作ではミュージックムービーと自称している)に見られるアフリカンアメリカンである彼自身がカウボーイスタイルを身にまとい、馬に乗るというインパクト抜群のビジュアルイメージが融合し、ミームになっている。

これらが今日まで至る大ヒットにつながっていると考えられるのではないだろうか。良い意味で常識を壊していくという点で彼は秀でているのかもしれない。今年6月にはEP「7」をリリースしさらに勢いを増すリル・ナズ・X。今後の活躍に期待したい。

 

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