<夏休みに潜む危険>芸能人もいたパーティーでレイプ、被害届も出せない卑劣な手口


橘ジュン[NPO法人BONDプロジェクト・代表/ルポライター]

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2009年に、10代・20代の生きづらさを抱える女の子を支えるNPO法人「BONDプロジェクト」を設立し、虐待、家出、貧困など様々な困難を一人で抱えてしまう女の子に寄りそう「聴く、伝える、繋ぐ」を活動に取り組んでいる。おかげさまで多くのメディアにも取り上げられ、私たちの活動への理解、輪は確実に広がっている。

それでも、「まさかウチの娘に限って・・・」「この人たちはちゃんとしている」といった甘い意識から、若い女の子たちが取り返しのつかない被害にあう事件は後を絶たない。

例えば、2003年に起きた早稲田大学の学生サークル「スーパーフリー」による組織的な輪姦事件は、一流大学と言われる大学の学生を中心にした極悪な性犯罪として記憶に新しい。

「一流大学だから。有名大学だから大丈夫な筈。賢くて、責任があって、きちんとした人物である筈・・・」

「スーフリ事件」から15年近くたった現在でも、こんな幻想は蔓延している。昨年だけでも5月に東京大学、10月に慶應大学、11月には千葉大学でレイプ事件が次々と発覚している。もちろん、表面化していないだけで、同じような事件は日々、展開されているのだろう。

ひとりの女の子が、勇気を持って告白してくれた。

地方から東京へ上京してきたA子さん(仮名)は友達の知り合いの家で行われるというパーティに誘われ、参加した。会場には有名な芸能人や芸人さんもいた。憧れのキラキラした世界に気持ちが舞い上がり浮き足立っているA子さんに周りがお酒を勧めてくる。

「お酒は強くない」と言っても、執拗に強要してくる。友達も楽しそうにしてるし、あまり断って場をシラけさせるのも・・・と、断りきれずにお酒を飲んだA子さんは、やがて完全に酔っ払ってしまう。そしていつの間にかその家の持ち主の男性と2人だけにされており、気づいたら性行為をされていた。

今にして思えば、これは最初から仕組まれていたのだ。お酒を飲ませ、周りの人間をだんだん、他の場所へ移動させ、ターゲットと2人きりになったところで性行為に及ぶ。A子さんはそのターゲットに選ばれてしまった、というわけだ。初めから「獲物」だったのだ。

下心を持つ男性の怖さを知らないA子さんはその場のノリと流れに完全に呑み込まれ、逃げられない状況に嵌ってしまった。「こんなつもりじゃなかったのに・・・」A子さんは愕然とした。

しかし、事件はこれだけでは終わらない。男性のワナは更に巧妙だった。性行為のあと、その男性はA子さんに言った。「付き合おう」と。そう言われてしまうと、「無理やりだったけど、これが始まりになるのかな・・・?」と、A子さんにとってその性行為を「性被害」と受け止められなくなってしまった。

もちろん、それっきり男性から連絡はなかった。強姦を和姦と思わせるための手口だったのだ。結局、泣き寝入りのA子さんには「性被害」を受けた心の傷だけが残った。

A子さんは遊び人風のギャルでもなければ、いい加減な子でもない。素直で周りを気遣うことのできる、真面目な女の子だ。そういう純粋で優しい女の子ほどターゲットとして狙われてしまう。

今回の事件に巻き込まれる経緯にも、ちっとも悪い点はない。キラキラした雰囲気に誘われて、不用意にパーティに参加してしまったという「油断」があった以外には。

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このような事件は、決して他人事ではない。これからの夏休み、お祭りや海水浴、旅行やショッピングなど、開放的な気分で出かけてしまう機会は多い。楽しい思い出作りの一方で、そこには「まさかウチの娘に限って・・・」な事件の種に溢れている。

あなたの娘さんがこのような事件のターゲットにならないために、次の「4つの知恵」を教えておきたい。

(1)違和感を感じたら、とにかく一度、席を立つ。その時、「ちょっと親に電話してくる」と宣言するのを忘れずに。
(2)雰囲気に押されそうになったら、まず、外の空気に当たり、冷静になる。(実際に親や信頼できる人と少し電話で話すのもよい)近くでウーロン茶などを購入してから席に戻る。
(3)席に着く時には、「また1時間後に親に電話しなくちゃ〜」と宣言する。購入したウーロン茶を使い「ウーロンハイにして飲んでる」などと言い、お酒を飲まない状況を自分で作る。

まず何より、断りづらい時は、一旦その場から離れることだ。ノリや流れに呑み込まれることを中断させ、本来の冷静さを取り戻すことができる。「この女の子のバックには親がちゃんといて大切に見守られてる子なんだな」と常に親の影をちらつかせ、想像させることも効果的な抑制方法だ。そしてお酒にも飲まれないこと。

地方から出てきた女の子には、特に伝えたい。知っていれば危険が見えるようになる。都会での生活で叶えたかった夢や目標へその純粋さと優しさを持ったまま真っ直ぐに進んでほしいと願う。全ての女の子が自分を守りながら、今を精一杯楽しんでほしいと願う。

そのような思いから、本年7月から、都会で暮らす若い女性たちを狙う様々な危険から身を守る会「G.G.A(ガールズガードアソシエーション)を立ち上げた。各界の専門家を集めた組織づくりも進めているので、ぜひ、お気軽に連絡をして頂きたい。(詳細は、公式サイトをご覧ください。http://gga.tokyo/lp/

「自分にも落ち度があったから・・・」と、性被害にあっても泣き寝入りをし、自分を責め、自分を呪い、苦しむ女の子たちをなくしたい。

これが私たちの活動の基本だ。

 

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橘ジュン

橘ジュン(たちばな・じゅん)NPO法人BONDプロジェクト代表、ルポライター。2006年、パートナーのカメラマンKENと共に、街頭の女の子の声を伝えるフリーマガジンVOICESを創刊。これまで少女たちを中心に3,000人以上に声をかけ、聞いて、伝えつづけてきた。2009年、10代20代の生きづらさを抱える女の子を支えるNPO法人BONDプロジェクトを設立。虐待、家出、貧困など様々な困難を一人で抱えてしまう女の子に寄りそう「聴く、伝える、繋ぐ」を活動中。その日、行き場所のない今、困っている目の前の女の子のために街のパトロールや自主的に保護の活動も行なう。「動く相談窓口」として、出会いを求め、全国各地を飛び回っている。TV、新聞などメディアでも多数活動を紹介されている。著書に『漂流少女 ~夜の街に居場所を求めて~』(太郎次郎社エディタス)、『VOlCES~キミの声を伝える~』(グラフ社)、『最下層女子高生~無関心社会の罪~』(小学館新書)がある。