<徹底的な真相解明を>加計疑惑を安倍完勝とする完全なる誤判断 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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2015年6月5日に開かれた「国家戦略特区ワーキンググループヒアリング」で、座長の八田達夫氏は次のように発言している。

八田座長「私は獣医学部の新設はそれなりの意味があると思うのですが、今治ということの理由づけは何なのでしょうか。もし愛媛や四国の各県が、このような国際的な感染症対策をしたいし、専門家が欲しいということであれば、大体1人当たり860万円のお金を、何らかの形で全国の獣医学部卒業生を募るときに出せば、それで済むはずで、こんなにいろいろとコストをかけて手間をかけてやるよりは、そこで人材を整えたほうがよほどいいのではないかと言う意見があると思うのですけれども、それに対しては、どうでしょうか。」

これが、その月に開かれた2015年6月29日開催の「第14回国家戦略特別区域諮問会議」では次のように変わる。

八田議員「獣医師養成系大学は、40年以上新設されていないのですが、今、エボラその他いろいろな獣に由来した病気が伝播しています。したがって、こういう研究者をつくるということは非常に大切なので、獣医大を新しく新設することを検討することになりました。」

安倍首相は本年7月25日の参院予算委員会で、

「特区の運営は、議事をすべて公開するオープンな形で議論している」

と答弁しているが、上記の2015年6月5日のWGにおける今治市による提案のヒアリング内容については、本年3月まで議事要旨が公開されていなかった。政府は本年3月6日に議事要旨を公開したが、WGに出席していた加計学園幹部については、公開された議事要旨に名前も発言も記載されていないことが判明した。

東京新聞が関係者への取材でこの事実を明らかにした。このことについて、WG座長の八田達夫氏が昨日、8月6日にコメントを発表した。コメント内容について、東京新聞は以下のように伝えている。

(東京新聞)「八田氏はコメントで『今治市が独自の判断で加計学園関係者三人を同席させていた』と説明。『通常、説明補助者名を議事要旨に記載していない。特区の制度趣旨にかなう運営だった』としている。

八田氏のコメントによると、議事要旨は当初、愛媛県と今治市が議会対策や反対派・競合相手との関係から非公開を要望。いったんは非公開にすることとしたが、今年一月に特区による獣医学部新設が決定した後、経過をできる限りオープンにしようと、今年三月六日に議事要旨を公開したという。要旨公開の三日前には、国会で加計学園の問題が取り上げられていた。

加計学園と競合していた京都産業大は京都府との共同提案者で、昨年十月のWGヒアリングの議事要旨には出席者の名前や発言が記載されている。」

2015年6月5日のWG議事要旨が公開されたのは本年3月6日である。獣医学部新設が決定されたのは本年の1月20日。WGの議事要旨が公開されたのは、国会で加計疑惑が取り上げられた3日後であり、獣医学部新設が決定されたから議事要旨を公開したとの説明は時間的にズレがある。

国会で問題が取り上げられて、慌てて議事要旨を公開したのではないかと推察される。また、WGに加計学園幹部が出席していたにもかかわらず、会議出席者として記載されておらず、発言要旨も掲載されていない。

安倍首相が国会で答弁した「特区の運営は、議事をすべて公開するオープンな形で議論している」と矛盾していると言って良いだろう。

本日、8月7日に民進党の調査チームが開いた会合で、内閣府の塩見英之参事官は、2015年6月に行われたヒアリングの速記録を「破棄した」と述べた。

朝日新聞報道によると、

「塩見氏は、業者に委託した『速記録』をもとに議事要旨を作成したとし、『議事要旨を作れば用済みになるので、元の速記録は破棄した』と語った。『(説明)補助者の発言は(議事要旨に)掲載しない。掲載しないという時点でなかったことになる』とも述べた。」

加戸守行元愛媛県知事は、10年来、今治市は「加計ありきでやってきた」と明言している。

今治市による獣医学部新設計画が加計学園による新学部新設を前提としてきたことは明らかであり、安倍首相が、国家戦略特区が取り扱ってきた獣医学部新設問題が加計学園事案であることを知らなかったとする主張は通用しない。

今治市の獣医学部新設問題が急進展したのは2016年8月から11月にかけてである。2016年9月9日に開かれた「第23回国家戦略特別区域諮問会議」で、八田達夫氏が次のように発言した。

「例えば、獣医学部の新設は、人畜共通の病気が問題になっていることから見て極めて重要ですが、岩盤が立ちはだかっています。その他にも、クールジャパンの『外国人材』の受け入れとか、『シェアリングエコノミー』へのさらなる拡大など、厚い壁で守られているものばかりです。強力に解決を推進したいと思います。今回の内閣改造により、山本大臣が、「国家戦略特区」と「規制改革」の双方を一体的に担当されることになりました。また、先日発表された規制改革推進会議の委員に、特区ワーキンググループの八代・原両委員が任命されました。こうした新体制によって、岩盤規制改革が格段に進むことを期待したいと思います。」

この後、9月21日に今治市分科会が開催され、八田氏が積極意見を述べる。そして、10月4日に開かれた「第24回国家戦略特別区域諮問会議」で、議題ではなかった獣医学部新設問題を八田氏がわざわざ取り上げて、

「獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないか」

と発言し、これを山本幸三担当相が引き取るかたちで、

「実現に向けて速やかに検討を進めてまいりたい」

とまとめた。そして、11月9日の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」で八田委員賛成意見を述べて、これを受けるかたちで山本幸三担当相が、

「資料3につきまして、本諮問会議のとりまとめとしたいと思います」

と述べて政府決定とされたのである。

国家戦略特区諮問会議による加計学園の獣医学部新設認可に関しては、八田氏が表の側での主人公である。その裏側で、安倍晋三氏、竹中平蔵氏、山本幸三氏、加戸守行氏がつながっていることが容易に推察される。為政者の政治権力私物化問題は最重要の政治問題である。

徹底的な真相解明が求められている。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。