泥沼経済を「いざなぎ超え」と吹聴する大本営NHK -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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次の総選挙で問われなければならない最重要テーマのひとつは経済政策である。「アベノミクス」などと表現すると、何も知らない人は素敵なものではないかなどと勘違いしてしまうが、「ナイトメア」のようなものだ。カタカナで表記すればきれいに聞こえるなどと考えるのが浅はかなのだ。

次の選挙では、主権者国民が政策を選択する。原発を稼動させるのか稼動させないのか。戦争法を容認するのか容認しないのか。消費税増税を許すのか消費税を減税し廃止するのか。これを主権者が選択する。明確な選択肢を主権者の前に明示して、主権者が自分たちの進路を決める。これが本当の議会制民主主義だ。

「政策選択選挙」を実現する。小選挙区だから、ひとつの政策パッケージを提案する政治勢力は、必ず立候補者を一人に絞る。多くの主権者の賛同を得れば、政権を樹立できることになる。政党の名前など基本的にはどうでもいい。大事なのは政策なのだから。

NHKが6月25日に日曜討論で経済政策をテーマにした。番組タイトルは、「“戦後3番目の景気回復”日本経済をどう見るか」だった。現在の景気回復局面は、政府発表の日付では、2012年11月に始動しており、今年の8月で57ヵ月の長さになる。1965年11月から1970年7月まで続いた景気拡大局面は拡大期間が56ヵ月。これを「いざなぎ景気」と称している。

これに対して、2002年1月から2008年2月まで続いたとされる景気回復期間が73ヵ月で、時間の長さでは、これが歴代1位とされる(「いざなみ景気」)。

NHKが言うところの「戦後3番目」とは、「いざなみ」、「いざなぎ」に次ぐ3番目の長さの景気回復だというもの。NHKの姿勢は「詐欺師の手口」と言うべきものである。

1966年から70年の実質経済成長率は9.8%、12.9%、13.4%、10.7%、10.9%である。1965年の生産水準=所得水準を100とすると、1970年の生産水準=所得水準は173になる。所得が73%増えた。これを「いざなぎ景気」と呼んでいる。

これに対して、「いざなみ景気」の2002年から2007年までの実質経済成長率は、0.1%、1.5%、2.2%、1.7%、1.4%、1.7%である。2001年の生産水準=所得水準を100とすると、2007年の生産水準=所得水準は109だ。1年長いのに9%しか増えていない。

2013年から2016年の実質経済成長率は2.0%、0.3%、1.1%、1.0%で、2012年の生産水準を100とすると2016年の生産水準は104でしかない。4年間で生産水準は4%しか増えていない。

こんなものを時間の長さだけで比べることが「詐欺」なのだ。上昇率は73対4ということだ。5年かけてエベレストに登頂したのと、5年かけて高尾山に登ったのを同じように扱っている。

NHKが「いざなぎ超え」と叫ぶのは、安倍政権の経済政策があたかもうまく行っているかのような「印象」を与えるためである。「印象操作」が大好きな安倍晋三氏の意向を「忖度」して、こんな「ど不況」を「いざなぎ超え」などとはやし立てるのは、本当に虫唾が走る。

しかも、この「景気回復」は事実が改竄されたものだ。2014年1月から2014年末まで、日本経済は「消費税増税不況」に突入している。この不況を認定していないから5年におよぶ「景気回復」などという「デタラメ」が生まれているのだ。

2014年の景気後退をなかったことにして景気回復期間を偽装する日本政府

2012年*1を不況と認定し2014年*2を不況と認定しない「景気偽装」

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。