菅義偉官房長官は日本国憲法を知らないのか? -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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菅義偉官房長官が9月20日の記者会見で、

「解散は総理の専権事項です。憲法で保障されてます。それに尽きます」

と述べた。菅義偉官房長官は日本国憲法をよく知らないのではないか。日本国憲法は衆院解散について、二つの条文を置いている。

ひとつは第七条。

第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二  国会を召集すること。
三  衆議院を解散すること。
四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七  栄典を授与すること。
八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九  外国の大使及び公使を接受すること。
十  儀式を行ふこと。

もうひとつは第六十九条だ。

第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

六十九条は正当な解散であるが、解散をもたらす原動力は国会の内閣不信任決議案可決である。

第七条の解散は、「天皇の国事行為」であり、この条文のどこにも、「首相の専権事項」などという記述はない。衆議院の解散が首相の専権事項であることを憲法が保障しているという事実は存在しないのである。

天皇の国事行為として列挙されている行為のひとつに「衆議院を解散すること」が掲げられているが、同様に掲げられているものに「国会を召集すること」がある。

国会の召集については、第五十二条、五十三条、五十四条に明文の規定があり、この規定に基づく国会召集に際して、天皇が物理的な行動として「国会召集」という国事を担うことが定められているのである。

解散について憲法が規定しているのは第六十九条だけであり、第六十九条の規定に基づいて解散が行われるときに、天皇は物理的な行動として「衆議院の解散」という国事を担うだけなのである。

衆議院の任期は4年であり、解散が行われたときにだけ、その前に任期が終了する。解散の規定は第六十九条にのみ定められており、憲法第七条の規定を用いて内閣が解散を決定するというのは憲法の体系上、無理があると言うべきである。

天皇の国事行為の規定を根拠に、内閣が憲法に規定のない解散を決定して、天皇に国事行為としての解散を行わしめることは、「天皇の政治利用」そのものである。

少なくとも、衆議院の解散が「首相の専権事項」であり、「憲法が保障している」という事実は存在しない。

この問題は、憲法学者の間でも見解が分かれる問題である。政治権力に迎合する者は「7条解散」を正当化するが、憲法を客観的に正確に理解する学者は、首相の解散権を認めていない。

菅官房長官が言うような「憲法が首相の専権事項としての解散権を保障している」という事実は存在しない。

他方、日本国憲法第五十三条は、

「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」

と定めている。

9月28日に召集されると見られる臨時国会は野党が要求したものであり、この国会を召集しておきながら、その冒頭で衆議院を解散するというのは、これも明白な憲法違反である。

さらに、自民党幹事長の二階俊博氏は森友・加計疑惑を「小さな問題」だと発言した。「安倍政治を許さない!」と考える主権者国民を馬鹿にし切っている。

安倍首相が7月1日に秋葉原駅頭の主権者国民を「こんな人たち」と蔑んで指をさしたのと同じ図式が広がっている。

暴走する安倍政権、傲慢さが膨れ上がっている安倍政治に、主権者国民は厳しい鉄槌を下さなければならない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。